15話.初詣。

 初詣に行く前に千花と私の家で会うことにした。

 「先輩はやっぱり着物が似合う。」

 「そう…かな。」

 個人的には私の着物姿をあまり好きではない。

 「うん。あたしが見たどの人より似合うしきれいよ。」

 恥ずかしすぎる。

 「私、昔使っていた着物ならもう一つあるけど良ければ千花もどう?」

 私的には私の着物姿より千花の着物姿が気になる。

 「本当に?それでいいの?」

 「うん。大丈夫。私が使ってたものでいいなら。」

 高校の時に着てたものだけれどきっと千花に似合うはずだ。

 「ありがとう。来てみるよ。着物着るの夢だったんだ。」

 千花は少し恥ずかし気なほほえみを満面に見せながら子供のようにはしゃいだ。ここまで喜んでくれるとは思ってなかった。私も嬉しくなった。


 千花に着物を着させてから近くの神社に行くことにした。実をいうと着物を着た千花があまりにも可愛いから外に出したくはなかったのだが初詣に行く約束だったからしかたがない。私だけが千花を独占したい。

 「千花、久しぶり。着物に合うね。」

 「あ、りん。久しぶり。」

 あの女は確か、そう千花の大学の友達だ。

 「花沢先輩も久しぶりですね。」

 「ええ、そうだね。」

 思わず冷たくいってしまった。

 「じゃあ、私はこれで。たくみたちが待ってるんで。」

 「巧たちも来てたんだ。うん、また学校で。」

 そう言いながら千花は学校の友達に手を振った。そしてその千花を私は後ろで抱いた。

 「いきなりどうしたの、先輩。」

 千花は私に目を向けながら言った。

 「ただ、抱きしめたかっただけ。」

 いや違う。これは嫉妬、そして執着。でも千花には言わなかった。

 「先輩って案外可愛いところあるよね。」

 そう言った千花は少し笑ってから私の頬に唇を当てた。

 「もちろんあたしも先輩に抱かれるのは好きなんだけれど、ここ、かなり人多いよ?」

 「大丈夫。」

 私は千花の耳元に囁いた。

 「家に帰ったらあたしがたくさん抱いてあげるから。」

 そう言いながら千花は私の手から離れた。そして私の頬を撫でてくれた。その千花の手は柔らかく暖かった。

 「もうすぐ12時よ。早く行こう、先輩。」



 先輩が嫉妬するとは知らなかった。先輩だからそういうのはないのかと思っていたのだけれど、今日もちょっと意外なところが見れた。付き合うと互いの知らないところが見られるのかな。

 嫉妬する先輩の手を握った。先輩の手は冷たかったが、それでも放したくはなかった。先輩をあっためてあげたかった。

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