第7話

「松島さん、松島さん」誰かが私の頬をたたく。

「なんだ?」寝ぼけている私を誰かが容赦なく叩く。

「痛いじゃないか!」あまりにもしつこく叩かれて私はつい大声を上げた。

「良かった、無事でしたか」白井だ。

「いつの間にか寝てしまったのか。すまない」しくじった。すっかり熟睡してしまったか。だが、次の見張りは白井ではなく坂本という若い営業の男だったはず。

「寝ていた? 何があったか覚えてないんですね?」白井は驚いた様子だった。なにかよからぬ事が起きたような気がした。私は起きあがって彼に尋ねた。

「どう言うことだ? 話が見えないんだが…」彼は目頭を押さえ、一息置いてから話を始めた。

彼曰く、いましがた、前回より小規模ながらもまた、例の閃光があり。リーが私を助けようとして犠牲になったというのだ。

「そうか、それは悪いことをしてしまった」思わず目頭を押さえた。このような状況になってから彼にはいろいろと世話になった。私はせめて彼の遺体が『遺体安置室』にいく前にお別れの言葉を言おうと白井に尋ねると返ってきた言葉に驚いた。

「それが、不思議なことに蒸発してしまったのです。あなたを此処に押し戻したすぐ後に」白井の言葉はにわかに信じられなかった。

「蒸発…」文字通りの意味ではなく、家でのような、どこかに去ってしまったという意味かと最初思った。だが次の言葉でそうではないと知った。

「ええ、すっと跡形もなく消えてしまって」彼は屋上出口の外を指さした。そこには何かが居た痕跡すらなかった。

「見間違いではないのか?」いくら何でもいきなり消えて無くなるはずはない。

「いえ。そうであればいいのですが、複数人は現場に居合わせてますから」彼によればその場に坂本、経理の佐々木、情シスの小川と小川の娘さんがいたとのことだ。まさか集団で私をからかっているのではないかと邪知したが、からかう理由がそもそも無いので真っ先にその考えは消した。

「蒸発と言ったが、燃えた訳では無いのか?」最初の閃光で光を直接浴びた人間が黒こげになったと言う話を思い出して、あまりにも強烈な熱線で炭になる前に蒸発したのかと考えた。だがその考えは彼の次の言葉で覆された。

「いえ、まるで昔の子供用特撮もののようにぱっと消えてしまったんです。まるで次のフレームから欠落したかのように」彼もまたこの状況が不可解だという様子で言った。

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