第21話 デート?? (2)

 研修医の頃地方バイトでよく利用した東京駅。勤務後の移動で、基本20時以降だったので店舗を殆ど利用したことがなかった。勿論、学会会場への移動にも利用したが、車内での飲食が苦手だったので、同じくであった。

「さて、どこに行くのかな」

「えーとね。コスプレを趣味にしてるけど、キャラクターその物にも興味が有るのであれば!1番街。無いのなら、デパートかな。どっちが良いと思う?」

「んー。どうだろう。取り敢えず、僕が知らない1番街に行ってみたいかな」

「うん。じゃぁ、行こ」

改札を出て、地下一階。

「すごいね!」

「でしょ。たまにお父さんと来るんだ」

「へー。で、何をお目当てに」

 人混みを掻き分け着いた店舗は、30㎡前後の小さなスペースに、ところ狭しと世界的に有名なウサギのグッツが並んでいた。

「あー。部屋にあった大きなのもここで買ったの?」

「うん。ほら、ここにあるの」

 こんな表情をみてしまったら、父親はいちころだろう。買ってしまう。

「あ、この靴下」

「そうだよ。いま履いてるよ」

 夢中で店内を歩く千秋。

「あ、これ。新しいのだ。可愛いー。ねえねえ、どう思う」

 デザインとしては確かに可愛い。しかし、少し子供っぽいかな。

「あー、確かに可愛いけどねぇ...」

「あ、ごめん。そうだよね。お姉さんのを買いに来てたんだよね」

「や、良いんだよ。まだ時間はたっぷりあるしさ」

「いや。今日はやめときます。買いたくなってしまうので」

 取り敢えず、通路に出て作戦会議。

「せん君は、何が良いと思う?」

「そうだね...。アニメ、ゲーム問わずコスってるし、部屋に特定のキャラクターもみたことがないんだよね」

「そうだよね。みたことないよねぇ」

「じゃあさ、ひとまわりして、面白そうなのがあったらそれにしようよ」

「うん。そうしよっか」

 端から順に各店舗をまわることにした。

「あれは何だろう?」

「あー、あれ。私も最近すっごく気になってたんだ。特にとかげとネコが可愛いーの」

「へー。すみ▫▫ねぇ」

「キャラクター毎の設定が面白いんだよ」

 スマホで詳細を見せてくれた。なんとも言えぬ設定だが、キャラクターとしては確かに可愛らしい。しかし、夢中になっている千秋の方が、可愛く見えて仕方がない。

「ん?どうしたの」

「んーん。何でもない」

 そのあとも店舗をまわったが、ひとつに絞れなかったので、何種類かのキャラクターハンカチ詰め合わせをつくることにした。

 少し遅いお昼を食べ、帰宅した。

「お姉さんいるかな」

「居ると思うよ。朝、ひまだー、つれてけーって騒いでたし」

「かわいい」

「そうかなー」

「ふふ」

 案の定、少しふて腐れ、リビングでテレビを観ていた。

「一緒に渡そうか」

「あー、うん」

「お姉さん」

「んー」

「遅くなったけど、これ入学祝いです」

「えっ、なに。これを買いに行ってたの」

「はい」

「うー、ありがとー。ちーちゃんごめんねー」

「いいよ」

 結果、姉も最近気になっていたキャラクターであったらしく、気に入ってもらえ、ほっとした。

 

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