第20話 デート??

「あの、こんなところに呼んでごめんね」

「んーん。ところでどうしたの」

「えーと、千明君は.....彼女とかぁ..いるのかなぁ」

「えっ」

「やっぱり...いるよね」

「や...いない...けど...」

「そっかぁ、うん。今ね、千明君が大変なのは知ってる。だから、春休み明けで良いので、これの返事を下さい。じゃぁ」

「あ、あのー」


▫▫▫ちーちゃん▫▫▫千明▫▫千明!▫▫


「やーっと起きた」

「あれ、お、お姉ちゃん? えっ、あ、部屋?」

「なーに寝ぼけてんの。起きなさい。千秋ちゃんと約束してるんでしょ」

 夢かぁ。あれ、あの娘は確か、昨日の。夢?なのかぁ?

「ほーら。あ さ ご は ん!」

「うん」

「じゃ、行ってるからね」

 そうだよ。今日は千秋ちゃんと買い物に行く約束だった。

 まだ、8時30分だ。よかったぁ。

 朝食を済ませ、自室に戻ると姉がいた。

「ねーねー。どこ行くの?お姉ちゃんも行きたいなー」

「ダーメ」

「何でよー。あー!デートでしょう。デートなんだ」

「違うよ!買い物だって」

「でも、二人っきりで行くんでしょ。デートじゃん」

「ちがいます」

「じゃ、良いじゃない。連れてって!」

「ダメです」

 あーめんどい。あなたの入学祝いを買いに行くんだってのに。

「ケチ!いじわる!いーもん」

 やっと諦めたか。

「おかーさん。ちーちゃん。デートだって」

 あの姉は!何を!しかし、連れてはいけないので我慢。

 秋ちゃんが迎えに来たら、また面倒になりそうだから少し早いがもう出よう。

 ▫▫ピンポーン

「早いね。どうしたの」

「や、姉が五月蝿くて逃げてきた。大丈夫?」

「うん。もう少しだけど大丈夫だよ。中で待ってて」

「ありかとう。おじゃまします」

 リビングに行くと千秋の両親がテレビをみていた。

「おはよう」

「おはようございます」

「どこでデートするんだい。駅まで送ろうか」

「いえ、デートではありません。買い物です」

 ここもかぁ....。

「そうか。じゃぁ、ついでにデートでもしてきたらどうだ」

「あははぁ...」

 それはともかく、どこに行く予定なのだろう。

「おまたせー。あ、お父さん。駅までお願い」

「おう」

 駅までは、車で10分もかからなかった。

「ありがとうございました」

「じゃぁ、お迎えも宜しくね。電話するから」

 地下鉄の駅か。商業施設があるわけでもなく、静かなものだ。

 ホームに着くと、ちょうど電車が行ってしまった。次の電車は15分後であった。

「ところで、どこに行くの?」

「ん。東京駅」

 東京駅は新幹線の利用だけで、素通りしていたのであまり店舗を知らない。何かあったっけ。

「駅の近くに何かあるの?」

「近くじゃなくて、駅ナカ?になるのかなぁ。いろいろなキャラクターの店舗が集合した階が在るんだ。あと、デパートも隣接してるしね。面白いよ」

「へー。そうなんだ。面白そうだね」

「あ、電車来たよ」

 土曜日だがかなり混んでる。乗れるのか?

 ドアが開いたが、誰も降りて来ない。後ろから圧されるようにして詰め込まれた。

「大丈夫?」

「せん君も大丈夫?」

 向かい合わせ状態で押し込まれ、吊革や手すりがなくても倒れない程混雑している。

「あっ」

「ごめん。身動きが取れない」

 琴音や姉程ではないが、柔らかい。車内の熱気のせいだろうか、千秋が真っ赤になっている。電車が揺れる度に、苦しい程押し付けられる。少し千秋の息づかいが荒くなっている。

「秋ちゃん。大丈夫」

「う...うん。だ...大丈夫...だよ」

 次の駅。反対側のドアが開く。何人か降り、ドア側に押されて行き、ドアと自分の間に千秋が挟まれるような体勢となった。千秋が圧迫されないように、腕をドアに突っ張るようにするが、このか細い腕では難しい。

 カーブに差し掛かったのか、遠心力で押し掛かってきた。ドアに突っ張っていた腕が曲がり、抱きつく格好になってしまった。

「ん......」

「ごめん。大丈夫?」

「ちょっと...だめ..かも」

「わかった。頑張って押し返してみる」

「そう...じゃないの...」

「えっ、なに」

「........」

 頑張って押し返してみるが、やっぱり難しい。もう、腕も限界だ。と、次の駅に着いた。幸い、結構な人数が降りていった。

「ふぅー。危なかったぁ。もう、腕に力が入らないや」

「ありがとね。でも...ぃぃょ」

「えっ、なに?」

「ううん。何でもない」

 余裕ができたのか、外の景色が入ってきた。

「まだ、桜の花が結構残ってるね」

「うん。きれいね」

 大きな河川敷に沢山の桜の木が並んでいる。葉桜の方が多いが、家族連れがシートを敷いてお花見?をしている。

「....よく来たよね....」

「えっ、せん君?」

「あれ、僕、何か言った?」

「うん。あそこには、皆でよく行ったよね。思い出したの?」

「いや、無意識みたい」

「そう....」

 乗り継ぎを一回。東京駅に着いた。


 

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