結
ボクは叫びながらお母さんを探した。
その時、魔力が少ないときに起きる現象が起きた。
眩暈が起き、平衡感覚もはっきりしていない。
周りの人が心配の声を上げても走った。
お母さんと鉢合わせした場所に着くと、ボクは叫んだ。
「お母さん! どこ?」
反応がなかった。
ボクは魔力探知を使ってみると、裏通りにお母さんの反応ともう一人反応があった。
お母さんと魔族である。
すぐに向かうと、再び魔族に何かを呟かれた後だった。
その魔族を追おうと思ったが、その前にお母さんが立ちふさがった。
「退いて! アイツを追わないと!」
無理に走ろうとしたが、ボクは壁に寄りかかってしまう。
ボクは無理に炎魔法を放つが、お母さんが氷魔法で防御してしまう。
「アレオを返してくれる? そしたら退いてあげるわ」
「ハッ! 何を言っているの?」
ボクが息切れしながら叫ぶと、お母さんが逃げた人の方向を指差して言った。
「全部聞いたわ。魔族の長が復活しそうなこと、魔族がアレオの体を乗っ取っているってね」
ボクは首を振った。
その時、無情にもお母さんが氷の刃をボクに撃ってきた。
ボクは魔法を使わないでお母さんの元まで行こうとした。
路地が狭いので、攻撃範囲が狭まれている。
それでも、たとえ狭くかろうと無かろうと余力はほとんどない。
なので、次々とボクの体に氷の刃が突き刺さる。
体に刺さった氷を魔法で溶かして回復魔法もしながらボクは、何とかお母さんの元に着いた。
ボクはお母さんに抱きついた。
すると何故か、お母さんが攻撃するのを止めた。
ボクは真実を告げた。
「ゴメンね。ボクね、未来から来たの」
「え?」
お母さんが困惑する中、ボクが続けて告げる。
「それでね。……お母さんを守れなくて後悔したんだ」
ボクは涙を流しながらお母さんに抱きつき直す。
温もりに甘えていたかったが、最後にボクは謝った。
「お母さんが生きているだけで十分だよ。……ボクは死んだっていいよ。だから、この街だけは守らせて」
その言葉を言うのに、数秒
ほんの数秒だったのに、それだけの時間だけ長く感じた。
「アレオ。それは本当なの?」
お母さんがボクの体を支えて目と目が合うようにした。
ボクは今にも死にそうな感じで力なく頷いた。
「だったら、私と同じ同胞が言っていたことは?」
ボクはゆっくり言葉を並べた。
「それ……は、知らない」
その時、上空に大きな魔族の反応があったことをボクは気付く。
最後の力を振り絞って、魔法を使おうとした。
それに気付いたのかお母さんが叫んだ。
「止めて! あなたの魔力はほとんど感じられない。そんなになるまでどうして戦うのよ!」
ボクは未来で起こったことを思い出していた。
結果的に、復讐に囚われていたがなくなったことなど。
「人は支え合うために……あるのでしょう? だから、ボクは救えなかった……人を救いたいの」
お母さんの手の力が弱まるのを感じながら、ボクは魔法を使おうとした。
魔力欠乏で意識も朦朧として一度目は不発に終わった。
「お願いだからやめて!」
お母さんが必死に叫んでいても、ボクは意識を集中しなおして上にいる魔族の位置に炎の柱を立てた。
「フレイ……ム・タワー」
フレイム・タワー――炎の柱を立てる魔法。
街の中にいる魔族に放つと、ボクは魔力切れでその場に倒れた。
□■□
目が覚めると、そこはボクの家の中であった。
「あれ? どうしてここに?」
起き上がろうとしても、体が痛んで起き上がれなかった。
何故か、ボクの目から涙が出ていた。
ああ、もうお母さんに会えないのか。
でも、今度は街もお母さんも守れたからいいかな。
寝直そうとして横を見てみると、そこにはお母さんがいた。
看病してくれたのかタオルと赤い液体の水がある。
ボクが風邪を引いた時のように看病してくれたのかな?
懐かしいな。
魔力が前より戻っていたので、自己回復促進魔法を自分にかけてボクは再び眠りについた。
その時――。
「大丈夫だよね? アレオ、信じてあげられなくてゴメンね」
そんな寝言をお母さんが呟いていた。
安堵の溜め息をついてボクはお母さんの手を取った。
□■□
次にボクの意識が戻ると、体の調子は戻っていた。
お母さんに負わされた怪我は促進魔法で治っていた。
体を起き上がらせ、料理を作ろうとしたがお母さんに見つかってしまった。
「コラ! けが人は寝ていなさい!」
「だって! お母さんは料理できるの?」
「大丈夫よ。近所の人からもらってきたから安心しなさい!」
胸を張って宣言したお母さん。
中身を見てみると、そこには手間がかかったような干物やパンがある。
「ね? 安心でしょう?」
お母さんはご飯を満足に作れないので、ボクは安心して食べた。
「いただきます!」
ボクは食べながらお母さんに問いかけた。
「あの後、どうなったの?」
木の食器を置きながらお母さん。
首を傾げながら言明した。
「あなたのおかげで被害は出ていないわ。だけど……」
「うん? どうしたの?」
ある紙を見せながら問いかけた。
「その前にあなたが倒したのは魔族でいいわけ?」
ボクはゆっくりと首を縦に振ると、お母さんは溜め息をついた。
「この紙に書いてある通り、人間の政府が厳戒態勢を発令したの。後、他の種族と会議を起こすとも言っているの」
「つまり、街から出られなくなったの?」
お母さんが頷くと、ボクは大きな溜め息をついた。
ボクは舌打ちをして考えた。
「お母さん、 ボクは街から出て仲間を探さないといけないの。だから!」
「大体、事情は把握しているからいいけど具体的にはどうするわけ?」
「え!? どうして知っているの?」
お母さんが手を彼女の手に置いて言った。
「え~と、私も“ライジング”の力を持っているの」
「嘘?! お母さんが?」
ボクはその場に立ち上がった。
床に正座になりそのままお母さんに土下座で頼んだ。
「お願い! ボクの仲間になって!」
「はぁ。息子が危険な目に遭わせないように私もついていくわ。だけど、危険だと思ったら逃がすからそこら辺は承知しといて」
ボクは頭を抱えた。
面倒なことになったな。
だけどな、仲間がいないとルークは倒せないよな。
迷った結果、ボクはお母さんを仲間にすることにした。
「解ったよ。だけど、どんな力なの?」
「私の力は触れた相手の心を読むことができるみたいなの」
「使えなっ!」
本音が漏れると、ボクはしばらくお母さんに怒られた。
気分が晴れたのかお母さんが怒るのを止めると、ボクは心の中から思った。
本当に大丈夫かな?
もっと使える能力はないのかな?
ボクのも、あまり人のことは言えないけどな……。
「それで、どうする?」
お母さんが聞いてきた。
ボクは迷った挙句にはっきりと言った。
「人間の掟を破ることになるけど、外に出て探さない?」
しばらく考えているかのようにお母さんは黙った。
すると、お母さんが聞いてきた。
「え~と、魔族の長は強かったの?」
「うん。何か仕掛けがあるんだろうけど、剣の刃が全く通らなかった」
納得したように首を動かしてお母さんは、ボクに頼み事をしてきた。
「だったら、旅の支度をしてくれない? 私、そういう経験がないからさ」
「いいよ。だったら買ってきてほしいものがあるの」
などやりくりをしていると、旅の支度に三日の時間がかかってしまった。
お母さんと一緒にこっそり街から出た。
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