フーゴさんらしき人と話した場所に戻ると、すぐにボクは対策を考えて最初の街に戻った。


 再び、お母さんが来た場所に向かう。

 しばらく歩いていると、顔が真っ青な彼女がベンチに座っていた。


「どうしたの、お母さん? 大丈夫?」


 ボクを見たお母さんはニコッと笑い立ち上がる。


「だ、大丈夫よ、アレオ。ちょっと、眩暈がして休んでいただけよ。それより……今日は何回目か分かる?」

「え!? どういうこと?」


 お母さんが首を振って言い直した。


「ゴメンなさい、アレオ。ちょっと疲れが出たみたいだから気にしないで」

「あ、うん。それで、今日は何の買い物だっけ?」


 しばらく本当に疲れているのか、お母さんが答えなかった。

 ボクは心配になってもう一度、問いかけようとしたときに答えた。


「あなたの服を買いに行くのよ。他の服は誰かに破かれたでしょう?」

「あ、うん。そうだったね」


 お母さんが歩こうとしたら、足元がふらついて転びそうになる。

 ボクが支えようとしたら、彼女自身が立て直した。


「本当に大丈夫? ボクが取りに行こうか?」


 手で大丈夫だと伝えてきたお母さんは、ボクの手を繋いで服屋に連れていこうとした。

 しばらく歩いていると、ボクは質問をした。


「お母さん、どんな服を買うの?」


 お母さんの顔を覗き込んで聞いた。

 しばらく経っても返事はなかった。

 なので、ボクは叫んで聞いた。


「お母さん!」


 お母さんが驚いたかのように声を出す。


「は、はい!」

「本当に大丈夫? ボクが服を買いに行こうか?」


 再び、お母さんの顔を見てみたら更に真っ青になっていた。

 休める場所を探そうとしていたら彼女が謝ってきた。


「ゴメン、アレオ。悪いのだけど、あそこのオーダーメイドの服屋に行ってあなたのおっ洋服を買ってきてくれる? お金は渡してあるからそこは心配しないでね」


 頷くと、急いで服屋に入った。

 体の採寸をさせられて服を貰うと、急いでお母さんの元に戻ろうとした。


 その時はまだ、鶏の騒ぎ声は聞こえなかった。


 前と違って、お母さんが狙われる心配はないはず。

 だけど、何でだろう。

 なんでこんな胸騒ぎがするんだろう。


 念の為、服屋と街全体に薄い防御結界を貼っておいた。

 そんなことをしながらいると、お母さんの元についていた。


 誰かと何かを話していた。

 魔力探知を使ってみると、話している相手は魔族であった。


「お母さん、逃げて!」


 叫びながらボクは、炎魔法の上位にあたる灼熱魔法を無詠唱で放った。


「ドラゴン・ブレス」


 ドラゴン・ブレス――灼熱魔法の一番強い魔法、高位のドラゴンが吐くブレスと同等の威力を持っている。


 姿の見えない魔族はボクを見るなり、即座にその場から離脱した。

 灼熱魔法をボクの元に戻して消すと、お母さんの元に駆け寄った。


「大丈夫、お母さん?」


 ボクが心配しているのに、お母さんが攻撃してきた。

 お母さんの周りに魔法が発動する気配を感じて、ボクは危険を察知して逃げようとした。

 それでも、子供の体になっているので大きなダメージは受けてしまった。


 お母さんは怒った時より険しい顔になっている。

 ボクは殺気を感じて一歩引いた。

 その瞬間を逃さずにお母さんは氷魔法で攻撃してきた。


「あなたが私を同じ時間にループさせている元凶でしょう? 私の知っているアレオは魔法の才能があるけど、まだ使えないはずよ」


 ボクは必死に首を振った。

 氷魔法を必死に溶かし回復魔法を施しながら、叫び返した。


「違う! ボクはアレオだよ!」


 否定していると、お母さんが自分の後ろにいたことにボクが気付いた。

 後ろから胸に致命傷を負ってしまった。


「あなたを殺せば解放されるってさっきの人が言っていたの。だから、死んで!」


 宣言した通り、お母さんは殺しに来ている。

 いつ上から攻撃してくるか分からないので、急いでボクは説得しようとした。


「お母さん!」

「私は、あなたのお母さんじゃない!」


 何も考えられなくなり、棒立ちになってしまうボク。

 精神状態でボクの世界が崩壊し、何もかも壊そうと思った。


 すると、ボクの魔力が暴走して街はなくなったことを思い出す。

 街の中にいた街の人、魔族、最後にお母さんをボクが殺したことも。


 ボクは言葉になっていない言葉を発した。

 瞬間、ボクはお母さんに殺されたことも目の当たりにする。


 お母さんに殺されたの?

 嘘だ、嘘だ、嘘だ。


 刹那――。

 フーゴらしき人に言われたことを思い出した。


『君と同じ力を持っている成長する力“ライジング”は世界を維持している力。持つ者同士が戦うと、その地域だけどちらかの精神状態や魔力が暴走するなど面倒なことが起きてしまうから気を付けてね。結論から言うと、君と同じ力“ライジング”を持っている人を集めてくれ。全員で六人いるはずだ』


 それを思い出すと、ボクはある疑問を抱く。


 だとすると、ボクの本当の仲間はあの街の誰かってこと?

 だったらとっくに会った人?

 だとしても、ボクはもうやり直したくないよ。

 だけど、……。


 頭を抱えていると、フーゴさんらしき人に言われたことを続けて思い出す。


『君の場合は“他人のライジングを呼びさます力”を持っている。だからその力を使って他の人たちの力を呼び覚ましてくれ。仲間たちが君の望む未来を作ってくれるはずだ。だから、頑張ってくれ』


 ボクは手に力を入れて仲間のことを思った。

 決意のため叫んだ。


「あの街の中にボクの仲間がいるならやってやるよ。フーゴさんらしき人もいなくなった理由は知らないけど、ボクはボクのやり方で街もお母さんも救ってみせるよ!」


 やり直したいと思うと、最初の場所に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る