承
ボクは、お母さんが魔法を使っていたことを思い出す。
魔法の知識を思い返していると、納得がいかない点が多かった。
魔法は、体内にある魔力(マナ)と空気上にある四大精霊の残りカスの力との応えによって、おこる現象。
遥昔、人間は使えなかったが、未来では突然変異で使えるようになる。
だとしたらお母さんは人間ではない?
人間と関わりたがる種族は一つしかないけど、まさかな……。
お母さんが、使っていたのは結界などを作る無属性魔法。
無属性魔法――四大属性の精霊の力ではなく、体内にある魔力を使う魔法。
基本的に無属性魔法は人間以外の人類は使える。
だから、ボクは首を捻っていた。
色々なことを思い出していると、魔力(マナ)が減っていることに気付く。
その時、フーゴさんらしき人が言っていたことを思い出す。
『ここに戻ってくるときは、君が心の中からやり直したいと思ったときだけだ。ただし代償もある。それは、君の魔力を消費してしまうことだ。だから、あまり居すぎると魔力がなくなって戻れなくなってしまうよ』
すぐにボクは戻りたいと思った。
すると、お母さんと出会う前の時間帯に戻っていた。
辺りを見渡してボクは、お母さんが来た方向を思い出して走った。
そこには何かを探している彼女の姿がいた。
「あ! お母さん!」
お母さんが、ボクを見つけると安堵の溜め息をついた。
ボクの手を引っ張ってお母さんが買い物に連れていこうとした。
「今日こそはあなたのお洋服を買いましょうね。時間もないことだしもう離れないでよ? 家に帰ったら説教だからあとで覚えておいて」
最後の言葉はこっそりと言ってアレオは危険を感じた。
あれ?
昔だとボクの服はもっといっぱいあったはずなのにな。
どうしてないんだ?
過去を振り返っても、ボクは思い出せずにそのまま考えていた。
思い出す間もなく、お母さんの手に引っ張られながらあの服屋に着いてしまった。
アレオが思い出した言葉を言い出す店員さん。
ボクはすぐに辺りを見渡すと、そこにはすでに人払いの結界が貼ってあった。
結界を貼りなおそうとしたら、ボクは店員さんに捕まり採寸をさせられた。
その終わりかけのとき、ボクは店員さんに申し訳なさそうに言明した。
「すいません、お母さんとお金の話をしないといけないので、ちょっと外に出てもいいですか?」
「その歳でお金のことを考えているの? 偉いわね。だけど大丈夫よ。もうお金は貰っているの。代金の分だけ二着ほど作ってくれと言われているの」
これは何を言っても無駄な気がしてきたボクは、頭を切り替えて言い換えた。
「お母さんとお話しがしたいことができたので、少しお店の外に出ていいですか?」
「うん。いいわよ。さぁ、行っておいで」
ボクは心の底から感謝していると、お母さんが他の店員さんと何かを話している。
お母さんの手を引っ張ってボクは店の外に出た。
外に出て見ると、ほとんど人はいなかった。
人払いの結界が強力な証拠だ。
こんな強力な無属性魔法が使える人種は一つしかない。
だとしたら、ボクはあの種族と人間のハーフということか。
ボクはお母さんを隅に追いやって問いかけた。
「お母さん、どうして人払いの結界を貼ったの?」
質問の意味を考えていたのかお母さんはしばらく黙り込んだ。
突然、笑って逆に問い掛けられた。
「いきなりどうしたの、アレオ? 私が紙芝居で出てくる魔法使いだと思っているの? 仮に使えたとしても、そんな証拠がどこにあるの?」
時間がないと思いボクは、得意の炎魔法を指に集中させてお母さんに見せた。
瞬間――。
色んな感情を含んだ顔になったお母さん。
と思ったら、すぐに元の優しい顔に戻って溜め息をついた。
「いつから魔法が使えるようになったの?」
魔法は控えるべきだと思っていたので、ボクは炎を消した。
お母さんは諦めがついたかのようにもう一度問いかけた。
「いつから魔法が使えるようになったの、アレオ?」
その問いに答えようと思ったら、鶏の騒ぎ声が聞こえてきた。
魔力探知を使ってみると、上空から強い魔力反応があった。
急いで逃かさないと、またお母さんが殺される。
ボクはその場で一番強い防御結界を貼った。
次の瞬間、ボクが貼った防御結界と魔族の攻撃が激突した。
ボクの魔力は子供になった影響かあまり残っていない。
なので、ボクはお母さんに向けて叫んだ。
「お母さん! 逃げて!」
「え? え? どういうこと?」
お母さんが混乱していると、ボクは必死に顔でジェスチャーする。
その時、ボクの記憶が少しだけ蘇った。
それは曖昧で何がどうなっているのか分からなかった。
街の残骸の中にボクが中心となっているクレーターができていた。
そんな景色が見えてしまった。
ボク結界が攻撃魔法に押し勝とうしたとき、ボクの背中に矢が刺さった。
魔力探知を使ってみると、そこには一人の人間がいた。
後ろを見てみると、そこには服屋の店員さんの一人がボウガンで矢を番えている音がした。
人間にも魔族の手下がいたのか。
ちくしょう、もっと警戒しとくべきだった。
さらに矢がボクの体に刺さり、ここでボクの意識が完全に削がれてしまい、拮抗していた結界が押し負けてしまった。
再び、ボクたちは死んでしまった。
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