3月12日

愚か者にも日はのぼるとはよく言ったもので朝日がまぶしかった。

 一夜限りの仲間たちに別れをつげ自宅に帰るルートを探した。仙石線を見ると行けそうな気がしたので線路をあるくことにした

 おばあさんとお孫さんだろうか、とぼとぼと歩いていた。何か食べましたか?とたずねるとまだ何も食べていないようなのでポケットの煎餅をわけてあげた

 やがて多賀城駅についた。駅でパンクを直し一息ついてから走り出した

 砂押川のあたりはまだ水が引いていないので堤防をいくことにした。残念なことに堤防は途中で決壊していたため撤退をよぎなくされた

 ここであきらめてどこかの避難所に行けば良かったのだが何故か帰巣本能がはたらいて冷たい水の中に突撃した。体が震えだしたが頑張って歩いていた

 どこかの奥さんが陸地から声をかけてきた

旦那さんと息子さんが帰ってこないので駅までむかえに行きたいけれどここいけますか?と言うので、いずれ水が引けば帰ってくるから無理せず自宅待機がよろしいと助言した。自分は真逆の行動をしていたのですが、、、

 腰のあたりまで水に浸かったがだいぶ自宅にちかずいた。100メートル先に自衛隊のボートが見えた。逃げ遅れた人を救助しているようでした

 胸まで水に浸かったあたりでようやく自宅が見えた。賃貸平屋の我が家は2メートルほど浸水していた。僕は絶望し近くの車によじ登って寝転んだ。体の震えがいよいよ止まらず死を意識した

 しばらく寝転がっていたら大丈夫ですかーと声がした。目をあけるとそこに先ほどみた自衛隊のボートがあった。そして無事収容された。

 このあたりから意識が低下してきたためあまり記憶がないのだがボートから車両に積み替えられ多賀城駐屯地に運ばれたようでした

 


 











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