第2話

神々しく光る明かりが瞼を貫いて目を覚ましていく。

何度も瞬きをし視界を徐々に広げる、目を完全に開けたとき見えた景色は十年前の街並み、まだ高層ビルが立ち並んでない懐かしい街並み。


「ここが十年前、由奈さんが亡くなる十分前です」


後ろを振り返るとそこには『もどし屋』が立っていた。

『もどし屋』の体は薄れ今にも消えてしまいそうだ、何かに投影されているかのように。


「ここから優さんの仕事です。私はあくまでに過去に戻すだけです、直接の干渉は出来ません」

「…本当に過去を変えるつもりなんですか?」


予想外だった、もっと積極的に過去改変を促すと思っていたがそれは全くの逆だ。

むしろ過去を改変するのを止めようとしていたのだ。

だが俺の心はもう既に決まっていた。


「もう決めたことだ、俺は由奈を助ける」


「そうですか、それがどんな結果を招くとしても優さんは進むのですか……わかりました」


「ここはあくまで過去です、直接の干渉は避けてください。では……」


最後にもの苦しそうに言い終わると静かに『もどし屋』の体は透き通って消えて行った。

砂が風に巻き上げられるかのように静かに消えた。


助けると言ったがここからが問題だ、どうやって由奈助けるのか。

十分後に由奈は車に轢かれる。

助ける方法は無きにしも非ずだが。

どちらにもリスクを背負う。


・第三者に由奈助けてもらう


・俺自らが助ける


この二択に限られる。

他の方法は今からでは時間が無い、唯一の可能性はこの二つ。

第三者に助けてもらう、確かにありだがダメだ、もしここで第三者に頼み助けたら未来が変わってしまう。

他人の未来まで変えてしまったら取り返しのつかないことになる。

ダメだと言われたが直接干渉しない限り由奈を助けることができない。

ただそれより以前にやらなければいけないのは俺を突き飛ばし気絶させ由奈が死ぬ間接的原因になったあの男だ。

あいつが妹を突き飛ばさなかったら由奈は死ぬことはなかった。

第一目的はあの男を由奈に近づけさせないこと。

それさえやれば死なないはずだ。

もし近づけさせることが出来なかったら、手段だは一つ実力行使で止めるしかない。

深く考えているうちに時間は流れた、

残り五分のところまで。

時間が無くなった、あと数分で妹は死ぬ。


走った、考えが纏まってなくても突き進むしかなかった。

心の中ではまだ不安があった、もしここで妹を助け過去改変をしてまったとき、周りの影響はどうなるのか。

もしそれが原因に誰かが死ぬ事にならないかと。

ここまで来た以上止めれない、なんとしても俺は助けないといけない。

それがいまここに俺がいる意味なのだから。

無我夢中で走り角を曲がった先に記憶にある服装の男の子が前を歩いていた、そう俺だ。

まだこの後何が起こるか知らない馬鹿な子供。

すぐさまその場で止まり電柱の後ろに隠れる。

周りから見ればショタコンに間違われそうだがそんなの知ったこっちゃない。

俺の目的はただ一つあの男を止めることだ…

今や今かとあの男が来るのを待った。

電柱から覗き見ているのスカートを穿いた女の子がはしゃぎ兄に振り回している少女がいた。

目線の先には事故に会わなければ高校生になるはずたった由奈がいた。

目から涙が流れてくる、その涙は嬉しいという感情の涙ではなく。

今度こそ助けるという決意の涙。

着実に時間は進む、だが一向に男が現れない。

残り一分だと言うのに男はまだここにいないのだ、明らかにイレギュラーのことが目の前では起こっているとしった。

前からは妹を轢いた白いワンボックスカーが迫り来る、白線を超え今にも当たりそうなスピードで妹目掛け来る。

『直接の干渉は避ける』もどし屋の忠告を無視して俺は走った妹を助けるためがむしゃらで。

目の前で呆然と立っている過去の自分を押し倒し道を切り開き進む。

あと少しあと少し!


その時


七歳の僕は十七歳の俺の足にしがみついた、何をしているんだこの子は一瞬にして思考は止まる。

過去に起こってないことがいまここでは起きている。

だがもう止まらない、七歳の僕を振りのけ妹に手を伸ばす。

車との距離はもう10メートルはきっていた、いつ当たってもおかしくない。

それでも手を伸ばした、この一瞬を乗り越えればまた三人で遊べると信じて。


神は俺を見捨ててなかった…


由奈の手をとった、そして腕を力いっぱい引っ張った。自分の胸にしまうかのように思いっきり。

ヨーヨーのようにずっと悔やんでいた過去を帰ることが出来た、もう一度由奈をこの胸に抱くことが出来た。


これでまた三人で………


ふと男の子を見ると少年は…

泣き叫んでいた。







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