あなたの《後悔》ここで見つけませんか?

琥珀

第1話

「なぁ聞いたか?もどし屋女の話…」


「聞いた聞いた!その女に自分が悔やんだ未練話を話すとその当時に戻してくれるっていう都市伝説だよな?」


「そうそう!俺も一度でいいからもどし屋にお願いして告白する前に戻りたいな~」


「バカwお前が告白する前に戻ってまた振られるだろwww」


「ちょ、それは言っちゃあかんw」


俺の街ではあるひとつの都市伝説が広まっている。

名前は『もどし屋』後悔・未練など自分が実際にあった後悔話や未練話をするとその当時に戻って一度だけ過去を改変できる。


一度改変した過去は二度と元に戻せない、それが吉と出るか凶と出るかわからない改変だったとしても。


そんな噂はこの一ヶ月の間にたちまち広がった、始まりは子供の間の都市伝説だったが、今では街全体で広がり至る所で噂話をしている。

迷信なのかどうかはわからない、だがここまで噂が広まるということは何人か実際にあったとしか考えられない。

俺はそんな噂を信じてはいない、確かに頷ける過去を変えれる、願ってもない事だ。

そんなことが出来ればもっといい人生を歩けるだろう。

下手したら億万長者にでもなれる。

だが過去を変えるというのは万物の理論にはむく行為だ。

決して俺も変えたい過去がないとは言えない、むしろ変えたい過去がある。


もしあのとき…


「ねぇねぇー聞いているの優?」


「…あぁごめん何?」


俺の肩を揺さぶる彼女、幼なじみの『若菜 結衣』こいつとの幼なじみ関係も十五年経つ、昔からの腐れ縁だ。


「だから……今日…」


「…あぁ……わかっている……」


二人して言葉を濁らせる、二人とも同じことを思っていたのだろう、結衣もそれを察してか深くは言わない。


今日一月二十四日は妹『仲村 由奈』の命日だ。


要件はこのあと二人でお墓参りに行く件だろう。

由奈が死んでから十年が経とうとしていた、俺と結衣が七歳、そして由奈が六歳のとき妹は交通事故にあった。

原因は車の前方不注意、一人突っ走って行く由奈を後ろからずっと見守っていた。

その直後妹は見知らぬ男に突き飛ばされ車に轢かれた。

由奈が轢かれる直前見知らぬ男性に強く押し倒された。

男が由奈を突き飛ばし車に轢かせた。

あいつが全て殺した。

目が覚め気がついた時には遅く妹は帰らぬ人になっていた。

その現場にいたのは俺と由奈二人だけ、結衣はというと、その前月から結衣は長期入院をしていた。

由奈が死んだ日、その日が結衣の手術の日だった。

結衣が入院して悲しんでいたのは他でもない由奈だった。

そんな妹を見て元気になって欲しくて言い出したのだ「遊ぼうと」と、俺が妹を殺した。

俺の余計な気遣いがなかったら由奈は今も生きていた。



「ねぇ…優……由奈ちゃんのお墓参り終わったら…は、はな……話があるんだけど」


終始震えた声で結衣は口を走らせる。

今までにこんなに動揺している結衣を見たのは由奈が死んでからの一ヶ月の間だけ。


「あぁわかった」


結衣は俺を待たず涙を流し走り去ってしまった。

何か様子がおかしいと察し、すぐさま追った。

呼び止めようと何度も名前を呼ぶがこっちを振り返る素振りもなくただ俺から逃げようとしていた。


そのとき俺を呼ぶ声がどこからともなく聞こえた。


「…仲村 優」


聞き覚えがある声、ずっと聞いていられる声、頭が真っ白になるかのような優しい声。

気がついた時には聞こえる方向にまっしぐらに突き進んでいた、

さながら野生本能で言うべき感覚で。


誰かはわからない。


声が聞こえる方に行くにつれてどんどん頭が真っ白に染まっていく、「行かないと行かないと」これだけが頭にあった。

我に返ったとき屋上に通じる階段の前に立っていた、ここから先は立ち入り禁止。

人がいることなんてありえない、だが声は屋上から聞こえる。

まだ俺を呼んでいる。

立ち入り禁止の階段を1歩ずつ登っていく、一段上がるごとに声はより大きくそして透き通っていく。

チェーンが掛かっているドアをこじ開けた。

そこに待っていたのは一人の黒髪ロングの女性、歳は同じに見える。


「こんにちは仲村 優さん…」


間違いない俺を呼んでいたのは彼女だ、声・トーン・アクセント 全て同じ。


「君は誰?」


見覚えがなかった、彼女と面識があるわけでもない。

今回が初対面だ、だが彼女は俺の名前を知っていた。


「私は君たちが言うところの『もどし屋』」


彼女は確かに言った『もどし屋』と自分がもどし屋だと、今目の前では信じられないことが起きている。

自分が信じていなかった噂の1つが前にいるのだ。

言葉を続ける、全て見通されているかのように。


「ねぇ君…変えたい過去はあるかい?」


「変えたい過去……」


これで答えたら俺は過去の行って改変出来る、だがそれは万物の理論に背く事だ、それだけは…


それに戻したい過去なんて…


「「俺には戻したい過去がない」か…本当に?」


「たとえば……妹が死ぬ未来を変えたいとか?」


全部読まれている、心に秘めている思いが今ここでは窓が割れそこから風(気持ち)が吹く。

見通されているんだ、彼女に嘘を言っても無駄。

変えたい過去、、、、

もし妹を助けることが出来れば…



ふと考えてはいけないことを考えた、秘めていた思いがさらに強くなる。

過去を改変する=誰かの存在を消す恐れもある。

でも抑えられない、目の前には『もどし屋』がいるのだ。

ここで変えたいと言えば妹は…

十年の思いが解き放された。


「俺が……変えたい過去は……妹が助かる未来!」


悪魔と誓をした。

ニッコリと笑う悪魔は俺に近づき抱きついた。鋭い目付きで首筋を撫でるかのように見つめる。

次の瞬間彼女は首筋に鋭い突起物が刺さる。噛みついたのだ。

歯が皮を貫通するとき、体は沸騰したかのように血が騒ぎ立てる、筋肉の繊維が1本ずつ機敏に反応する。

十七年間の記憶が魚のように流れる、生まれた時の記憶から今このときの記憶まで全てハッキリと思い出していく。

意識が飛んでいく、それと同時に由奈が死ぬ直後の記憶が鮮明に思い浮かんでいく、ほかの記憶は薄れ消えていく。

記憶と言うなの魚が流れる先にあるの暗闇が待ちかねている。


気がついた時には意識という黒い底に落ちていた。


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