第23話
「──と言うわけで、このダンジョンの攻略は、すべて完了したってことでいいんだよな?」
意気揚々と、『己の部下となったラスボス』へと問いかける、大陸東部きっての召喚術士兼錬金術師である、僕ことアミール=アルハル。
しかしそれに対して、いかにも申し訳なさそうな表情を浮かべる、即席
『そのことですが、
……………………………………は?
「何だと⁉ くそおっ、最後の最後にきて、『ボスの二段構え』だったってわけか!」
『とはいえ、ご心配には及びません。こうして私が
そんな自称『偽ボス』の言葉を証明するように、いきなり壁の一部が轟音を立てながら開き始めた──かに見えた、
まさに、その刹那。
「さあて、それは、どうですかねえ?」
「「「「『うわっ⁉』」」」」
わずかに開いた隙間から、漆黒の闇に包まれた真のボス部屋より投げ込まれる、
「──いやこれって、『何か』とかじゃなく、『頭』そのものじゃん⁉」
そうそれは、男性型の魔物の、血まみれの生首、そのものであった。
『そ、そんな! これは間違い無く、真のラスボスの首ではありませんか⁉』
それを一目見て、驚愕の絶叫を上げる、偽のラスボス。
……ちなみに、どうして彼女にいまだボスとしての知識があるのかと言うと、何度も何度も言うように、『異世界転生』とは実のところは、本当に別の世界の人間が生まれ変わるわけ
そのように、一体誰に対してのものなのかも定かではない解説を、僕が脳内で行っているうちにも、
「ま、まさか、真のラスボスが、こんなにもあっさりと、やられてしまうなんて⁉」
「一体、何者の仕業なの⁉」
「──っ。静かに! 誰か来るぞ!」
今や大混乱となる、パーティメンバーたち。
……いや、さっきの何だか聞き覚えのある声といい、非常に嫌な予感がするんですけど。
「……
そのように、いかにも哀しげな声を漏らしながら現れたのは、とても強大なる真のラスボスを倒したとは思えない、見かけ十歳ほどの幼い少女であった。
──ほうら、思った通りじゃん!
「き、キヨ、どうしてお前が、ここに⁉」
「おやおや、
そういえば、そうでした!
「だって、仕方ないじゃん! せっかくダンジョンに初挑戦するというのに、この世界最強クラスのお前を連れてきたんじゃ、おもしろくも何とも無いじゃないか?」
「……いや、この世界最高クラスの錬金術師兼召喚術士にして、お尋ね者の
──正論です! ド正論です! あちらの世界の、インド大陸のすぐ近くの島です!
だって、男だったら一度くらい、ダンジョン攻略に挑んでみたいじゃないの? 一応僕も、異世界系Web小説の登場人物なんだしさあ。
『き、貴様、
「──あっ、
突然この場に現れると同時に、
「集合的無意識との緊急アクセスを申請。──主砲、発射」
『──ぶぼおっ⁉』
キヨの右腕がどでかい砲身へと
後に残るは、ボスキャラにふさわしく山のような、ドロップアイテムのみであった。
「──いやおまえ、僕たちが散々苦労していたボスキャラを二体共、あっさりと瞬殺するなよ⁉」
だから連れてきたくなかったんだよ、こいつときたら!
「馬鹿なこと言っていないで、さっさとアイテムを拾ってください。軍資金を確保次第、旅を続けますよ?」
「まあた、何を勝手なことを言っちゃってるの? これはパーティの全員にとっての、共有の戦利品でしょうが?」
「……まさか、異論のある方が、おられるとか?」
そう言って、パーティメンバーたちに向かって、鬼でも殺すような目つきで、ガンをつける幼女。
「「「いいえ、滅相もない! どうぞすべて、お持ちくださいっ!!!」」」
「欲の無い方ばかりですね、感心なことです。さあ、
「そりゃあ、ボスモンスターを立て続けに二体も倒したやつから恫喝されれば、誰だって遠慮するだろうよ⁉ 一体どうしてくれるんだ? せっかくこんなお尋ね者の僕に、やっと仲間が見つかったというのに!」
そのように怒鳴りつけた途端、ずずいっと顔を近づけてきて、密かにささやきかける、旧大日本帝国海軍一等駆逐艦
「……
──ひえええええええええええっ!
この駆逐艦娘、ヤンデレ化しおったあああああ⁉
しかも相手は、人間など及びもつかない、かつての軍艦の化身なのである。
もちろん抵抗なぞできようはずもなく、その時の僕はただ、為すがままに首根っこをつかまれて、引きずられていくしかなかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます