私の日常

第1話 恋愛体質

 お姫様になりたい。

 きっと誰でも思うことで、私も御多分にその例に漏れていない。いい年してそんなことを本気で思っているわけじゃなくて、憧れという意味でそう思う。

 

 ピンクが好き。女の子だから。フリフリが好き。女の子だから。可愛いものが好き。女の子だから。というのを体現した部屋に私は居る。

 部屋の真ん中にはコタツを出している。もちろんコタツの布団カバーはピンク色だ。この一人暮らしの部屋にはちょっと似つかわしくない大きさで、私一人の幅ではだいぶ布団が余っている。

 

 無駄にそんなものを買ったわけでなく、二人並んでコタツとか良いよねと買った訳なんだけれど、その相手はもう居ない。


「この部屋目がピンクで痛くなるんやが、どうにかならんか?」


「は? じゃあ出ていけば?」


 うん。女の子らしくない。けど文句を言われる筋合いなど無い。好きでそうしていることを否定するような人間と一緒に居て楽しいわけないので未練など無い。

 些細な口論がきっかけだったけれど、というか信じられない。可愛いよねとか、ピンク良いと思うよとか最初言ってたのに、ホントは思ってなかったってことでしょ。


 その喧嘩をした後にコタツが家に届いた訳なんだけど、返品するのも癪だったので、休日を使って一人で組み立てた。失恋のダメージがそりゃ無いわけじゃないけれど、ちょっと大きめのコタツも寝っ転がるのに丁度いいと思って、有効利用と洒落込んでふて寝して忘れるだけだ。


『タララ、ララーラタララ』

 

 そう思った矢先、私のアイフォンがなった。メールの着信だったけれどなにか嫌な予感を感じつつメールを開く。元カレからだったけど、長ったらしいメールは流し読みして短く返信した。


『あなたとはもう終わりました、さようなら』


 これでまた何かかえってきたら本当に面倒くさいやつだから考えないといけないけど、たぶん大丈夫だろう。

 恋愛は始めるよりも、終わらせるほうがエネルギーを使う。自然消滅なら手っ取り早いけれど、お互い冷めていたらという場合しか無い。

 すぱっと手を引いてくれると思うけど、人を見る目は多少あるつもりだからそうなると思う。そうじゃなかったら私の見る目が無かっただけのことで、元カレが私の中でさらに嫌なヤツになるだけのことだ。


 いつも恋愛してるよねと、友達からよく言われるけれどたまたまそうなっているだけのことで誰でもいいわけじゃあない。

 お試しとか、妥協とかもちろん無いわけじゃないけれど。

 

 せっかく手にしたアイフォンなので、ついでに眺めていると、他にも新着メールが有った。最近よく遊んでいるゲームサイトからのあいさつされましたという新着メールだった。


「なにこいつダサっ、でもちょっと面白いかも」


 あいさつされてた相手のプロフを見て、私はつい独り言を呟いていた。

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