第2話 まっしぐら

 猪みたいと女子からぬ評価を男友達から受けることは良くあることで、もう少し言い方があるでしょうよと感じた男は恋愛対象にはならない。


 それはお互い様であって、良い友人であることが良い距離感になっている。男と女に友情はないという人もいるけれど、私はそうは思わない。


 せめて竹を割ったような性格だねとか、配慮のあるセリフを言ってくれる人じゃないとピンとこないのだから、恋愛になるかそうじゃないかといえば、そうじゃない人にグループ分けされる。

 同性もそう。子供もそう。年上過ぎてもしう。

 じゃあピンとこない人逹と仲良くならないかといえば、仲良くなる。


 仲のいい男子は彼氏しかいないのよ、という女ならともかく、仲の良い恋人以外の人はそりゃ友人と呼ぶ以外に何があるのだろうか……。


 ――夢であるという意識がある。明晰夢というやつだろうか。 

 なぜか「阪急の駅から降りてすぐにそびえ立つビルの一階に私は居る」ということが分かった。だって夢の中だから。よく行くショップに私は居る。

 

 知らない服がピアノの鍵盤のように規則正しく並んでいる。私はそれをこじ開けるように一枚ずつ見ながらどんどん突き進んでいる。

 これ、ちがう。これもなんか。いや、これは良いかな? でもなんか。という具合に通路を突き進んでいた。


 ふと、これ良いわ! と感じた服があった。

 でもそれは確か、買ったは良いけど二、三回着ただけで、ある時知人からの評価が微妙だったことがきっかけで、タンスの奥にしまいこんでいたものだった。フェミニンぽく、チュール使いのフレアスカートで、色は黒だった。


「これ、買います」


 ショップ店員に言った。夢だから脈絡もなにもない。

 次の瞬間私はそのスカートを穿いていた。


「そのスカート良いですねー」


 誰ともなく話しかけられた。


「いやいや、でもこれちょっと微妙で……」


「そうなん? えーと思うけどな」


「うーん。そうかな?」


「気に入っとんやん?」


「気に入ってはいるんだけど、ちょっとね」


「なになに、良いスカートじゃない?」


「えっと、そうかな、そう言ってもらえると嬉しいけど」



 なぜかそのスカートめがけていろんな見ず知らずの人からの称賛を受けた。私の視線はもうそのスカートにしか行かない。

 褒められて悪い感じはしない。でも、こんな微妙なものを褒められても、なんとなくすっきりしない。次から次へと声を掛けられてなんだかどんどん気疲れしてきた。

 

 色んな人の中には知ってる人も知らない人も居たような居ないような、目まぐるしくて訳がわからない。するとさっき見た光景が浮かぶ。見慣れた画面が浮かんでくる。

 ああそうだ、これはモバイルゲームのあの変なアバターの人だ。なぜかわからないけどそう思った。


「それ、似合ってないっすよ」


「なんですって!」


 その瞬間私は目を覚ました。

 手元にあったアイフォンを見ると午前三時四十三分の表示がみえた。なんとも中途半端な時間ではないか。

 コタツの中でそのまま寝てしまったのか。出るのは……いいや。

 なんとも言い難い寝苦しさと気だるさを感じながら、動く気がしなかった。

 


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