第3話 ゲームの招待メール
せっかく浮かせた晩飯代をタクシーに乗って使いたくはないので導き出される結論は、電車に乗るか歩いて帰るという以外の選択肢はない。
一駅、二駅くらい歩こうかと、最も金銭的に安上がりであろうものを選んで新御堂筋を背に歩き始めた。しかし果たして歩くのが安上がりなのかと考えてみると、何百円出せば済むことに、歩いた時間と労力が見合うかどうかは甚だ疑問ではある。
じゃあ電車に乗ればよろしいだろうということであるが、男子たるもの一度決めたことにうだうだと言って変えるようなことは好ましくない。
そんなポリシーを持って生きているのかと問われても、そういう時もあるとなんとも優柔不断な考えではなかろうか。自分がこうであると言う枠がそうであるからそうしているだけのことに過ぎないが、特にこの性格を変えたいとも思わない。
携帯をパカリと開いて画面を見た。大阪も大都会ではあるが、大通りから少し外れると人の行き来も少なくなり携帯を見ながらボーッと歩いていても人とぶつかることはない。東京は歩けば人に当たるような気持ちで居たが、人混みが嫌いな性分にしてみれば、まだ大阪のほうがマシなのかもしれない。
果たして住むのに適したところなのかと言うとよく分からないが、何年も住んでいたら勝手は少しは分かってくるし、大阪が地元の人間ほど愛着はなかろうが、多少の愛着も湧いてくるものなのだろう。このごみごみとした街なかも悪いものではないと思えてくる。起伏が多い道で上ったり下ったりと歩いているわけだが、携帯を開いたのはメールを見るためだった。
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件名:モバイルゲームのご招待のお知らせ
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先輩が去り際に送ってきたメールでなにやらポイントがつくとかつかないとかで登録してくれないかと頼まれた。いい年してなにやってんのと言いたくもなったけれどそこは一飯の礼もあるし「ハイわかりました」と答えておいた。
携帯の小さな画面に映し出された文字を見ながらどうしようかと思案する。今は無駄に歩いているわけだから、少し携帯をいじるくらいのことまあ良いかとURLにカーソルを合わせて決定ボタンを押した。
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