第12話 ロールプレイしちゃいけないんですか!?ロールプレイングゲームなんですよ!

 猫耳を生やした少女はケーマを見つけると一直線に走ってきてケーマへと抱きついた。柔らかい。


「にゃーケーマ?まだパーティ組んでにゃいよにゃ?」

「あぁ。今きたところだからな」


 彼女はタマ子だ。

 シーフ系の技能を多く取っており、俺とは比較的相性がいい。

 それに、実は近くに住んでおり、リアルでも知り合いだったりする。学校も同じ通信制の学校だし。


「では、拙者たちとパーティを組むでござる!」

「もちろん良いですよ」


 そう言いながら近づいてきた侍風の男性は善次郎さん。

 あったことはないが、このアナザー・ソサエティ・オンラインを始める前にやっていたゲームで知り合って、このゲームでもなんどもパーティを組んでいる。

 ちなみに、前のゲームではネカマをしており、ござる口調ではなかった。


 二人は俺からパーティ結成の了承を得ると、振り返って騎士風の男性に向かって話しかけた。


「そういうことだから、私たちはこの三人でダンジョンに潜るにゃ」

「申し訳ござらんが、別のメンバーをパーティに誘ってくだされ」


 騎士風の男性は苦々しそうに舌打ちをしてさっていく。

 その背中には解放軍のエンブレムの入ったマントをしていたので、彼は解放軍所属のプレイヤーだったんだろう。

 タマ子と善次郎さんについて行こうとしていたのかな?


「じゃ、早速ダンジョンに潜るにゃ!」

「そうでござるな!時間は有限でござる!」

「あ、あぁ」


 俺はタマ子と善次郎さんに引きずられるようにしてダンジョンに入っていった。


 ***


 ダンジョンに入ってしばらく進んだあと、タマ子と善次郎さんは大きく息を吐いた。


「にゃー。桂馬がいてよかったにゃ」

「そうでござるな。拙者も解放軍とはあまり折り合いが良くないので、一緒にパーティを組まずに済んでホッとしたのでござる」


 どうやら、あの解放軍のプレイヤーにしつこく言い寄られて困っていたらしい。

 解放軍のプレイヤーはちゃんとプレイをしないので、解放軍以外のプレイヤーからは嫌われている。

 騎士職なのに前に出ずに後ろで指示を出していたり、魔法使い職なのにMPがもったいないからと魔法を使わなかったりするのだ。


 ひどいやつだと、他のプレイヤーを経験値集めの道具のように扱ってくる。

 雰囲気からして、あの騎士もその手のタイプだろう。


「善次郎さんもですか?なんか意外です。ああいうのはうまくあしらいそうなのに」


 善次郎さんは結構な年齢で、リアルでは結婚して子供もいたはずだ。

 しつこいプレイヤーなんてあしらい慣れているかと思っていた。

 しかし、善次郎さんは苦々しそうな顔をして答えた。


「うむ。拙者、こういう話し方をしてるでござろう?そうすると、『ちゃんと喋れ』だの『育ちが悪い』だの言われることが多いのでござる」

「あー」


 解放軍などのプレイヤーではおうおうにしてあることだが、善次郎さんやタマ子のようにゲームを楽しんでいるプレイヤー、俗に言うエンジョイ勢を下に見る傾向があるのだ。

 そして、エンジョイ勢を下に見るようなプレイヤーは大体プレイ自体も下手なので、エンジョイ勢側もそういったプレイヤーを嫌っている。


 解放軍全てがそうではないのだが、そう言ったプレイヤーのせいでエンジョイ勢と解放軍は仲が悪いと言う構図が出来上がっていた。


 そして、喋り方から分かるように、この二人はエンジョイ勢だ。


「そうにゃ。どんな喋り方でもこっちの勝手にゃ!」

「まあ、解放軍だからな。仕方ない部分はあると思うけど」


 俺はタマ子をなだめながらダンジョンを進んだ。

 こういう時、いつもはなだめ役に回ってくれる善次郎さんが一緒に起こっているので少しやりにくい。

 俺だってどっちかというとエンジョイ勢寄りなのだ。


「まあ、彼らの気持ちがわからぬわけではないのでござる。だが、ネットにリアルを求めないで欲しいのでござる」


 そんな話をしながらダンジョンを進んでいると、タマ子が耳をピンと立てて立ち止まった。


「ちょっと止まって欲しいにゃ」


 そして、次の部屋の手前で俺と善次郎さんを制するように手をかざし、部屋の中をゆっくりと覗き込んだ。

 俺もタマ子の後ろから部屋を覗き込むと、ゴーレムのようなモンスターが部屋の中央に立っていた。


「エリアボスか?」


 大体この手の迷宮にはエリアボスが存在する。

 というか、今人海戦術で探しているのが、そのエリアボスだ。エリアボスはそのエリアに一体いて、そいつを倒さなければ次のエリアには進めない仕様になっている。

 基本的な流れとして、そのエリアボスを倒していき、最後にこのダンジョンのボスを倒してダンジョンクリアとなる。


「にゃー。ガーディアンっぽいにゃ。というか、今鑑定してみたら名前が宝箱ガーディアン2398だったからほぼ間違いないにゃ」

「お、おぉ!宝箱があるのでござるか!?」


 エリアボスとは別にガーティアンというタイプのモンスターも存在する。

 これは宝箱や重要なアイテムを守るために設置されており、今回は宝箱ガーディアンと名前についているから宝箱を守っているのだろう。

 ガーディアンの付いている宝箱は有用なアイテムが出やすいので当たりだ。


「そうっぽいにゃ。行ってみるかにゃ?」

「このメンツならなんとかなるだろ」


 タマ子と善次郎さんとはたまにパーティを組むことがあるので、戦闘は問題なくできる。

 ゴーレム系のモンスターなら作戦会議をする必要もないだろう。二人からも反論は出なかった。


 そのあと、俺たちは武器や装備に問題がないことを確認する。

 確認を終えて俺が善次郎さんとタマ子をみると、二人もすでに準備が終わっていたようでコクリとうなづいた。


「では行くでござる!」

「わかったにゃ」


 俺たちは善次郎さんを先頭に宝物ガーディアンのいる部屋へと飛び込んでいく。


 こうして、宝物ガーディアン2389との戦闘が始まった。

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