第11話 パーティ編成は重要
俺はぐっすり眠って香織の作った美味しい朝食を食べ、学校に向かう香織を送り出した。
そのあと、アナザー・ソサエティ・オンラインにログインする。
ログインしたら、昨日カオリに預けておいた装備が俺のキャラクター宛に送られてきた。
おそらく昨日夕食後にメンテナンスしてくれたのだろう。
本当によくできた妹だ。
カオリがメンテナンスしてくれた装備を身につけ、俺は今日も迷宮要塞へと向かった。
転移して迷宮要塞へと着くと、そこには多くのプレイヤーがいた。
昨日より増えているように見えるのは入れるようになったというのが多くのプレイヤーに周知された結果だろう。
俺が辺りを見回していると、俺のほうにひとりの女性プレイヤーが近づいてくる。
サオリだ。
だいぶ疲れているように見える。
もしかして寝てないのか?
「おはよう、ケーマ。ちゃんときたのね」
「おはよう、サオリ。約束したからな。首尾はどうだ」
サオリは仮設テントの方をちらりと見た。
解放軍の前線基地として大体いつもテントが張られている。
そのテントは情報の集積や何かあった場合の対処などが行われるらしい。
正直邪魔なのだが、マップの公開やアイテムやモンスターの情報開示など、有益な情報の発信もしてくれるので、憎みきれない部分もある。
さすが昔は政治家だった人間も所属しているだけあって、そういうバランス感覚はすごい。
「マッピングは進んでるわ。今はマッパーは足りてるから護衛の高レベルプレイヤーが欲しいと思っていたところよ」
それは予想外だった。
迷宮要塞って言うくらいだから迷路みたいになっていて、マッピングは難航していると思っていたのだ。
このゲームのはマップ機能が付いている。よくゲームにある現在地を中心にしたあれだ。
しかし、迷宮系のフィールドではマップ機能がオフになってしまう。
そのため、マッピング技能を持ったプレイヤーを中心にマッピングを行う必要があり、大変なのだ。
まぁ、それ用のスキルがあるので自力でやるよりは全然楽なんだが。
「そっか。迷宮要塞とかいう名前だから、中が迷路みたいになってるのかと」
「なってるわよ。ただ、一定間隔で部屋があって、直進、右折、左折しかないの。曲がるのもきっちり90度で曲がってるみたいだし、スキルがなくてもマッピングできるわ。まあ、楽ではないけど」
「うへー」
迷宮の中は空間が歪んでいる。
つまり、どれだけの大きさがあるかわからないのだ。
そんなところでひたすら右に行ったり左に行ったりとしらみつぶしに探す必要があるってことだ。
俺なら一時間で飽きる。
俺が嫌そうな顔をしていると、サオリはバツが悪そうな顔をした。
「私はこれから学校だから、ここでログアウトするわ。頑張ってね」
「おぉ。行ってらっしゃい」
サオリは俺と同じくらいの年齢だから、学校にも通っているだろう。
αⅢが世界を乗っ取って、既存の社会形態が維持できなくなったので、高校に通う人は減ってしまった。
高校に通っている時間があればゲームをしてレベルを上げている方が有意義だからだ。
サオリは数少ないいまだに学校に通っているだろう学生らしい。
「あなたは行かないの?」
「俺は通信制の学校だから、登校日は月数回だ。妹はもう行ったよ」
かくゆう俺は通信制の学校に通っている。
高校は出ておいた方がいいって親に言われたのだ。
時間的の余裕も出るし、今の時代、移動はお金がかかるので、それだったら通信制でいいかと思い、通うのは通信制の学校にしたが。
通信制は課題をやって単位を取ればいいだけなので、自分の時間が取りやすいのだ。
「そう。私もそっちのほうがよかったかしら?」
「レベリングする時間があるんだからいいんじゃないかな?」
サオリのレベルは俺と同じ現行の最高レベルになっている。
というか、大体の前線攻略プレイヤーは最高レベルだ。
金稼ぎをしていればレベルが上がるから、高レベルプレイヤーは豊かな生活を送るために金稼ぎをしていると勝手にレベルが上がってしまうのだ。
「というか、解放軍ので通信の学校とか問題ないのか?」
「そういう人もいるわよ?」
解放軍は「リアルこそ至高」って感じだから、学校とか絶対に通わなければいけないのかと思っていたが、そうでもないらしい。
まあ、そこまでガチガチにしてしまうと、前線組のプレイヤーを囲っておけないか。
「そうなのか。まあ、編入にも時間がかかるし今日は学校に行くしかないだろ」
「それもそうね。行ってくるわ」
「おう。行ってらっしゃい」
俺は転移していくサオリを手を振って見送った。
サオリが完全にみえなくなったので、俺は仮設テントの方を向き直った。
「さて、俺も頑張りますか」
生活のため、遊ぶため、今日も頑張ってゲームをするか。
***
仮設テントの前には多くのプレイヤーがたむろしていた。
ここで情報をもらって、パーティを組んでから迷宮要塞に行くプレイヤーが多いのだろう。俺もそのつもりで来ている。
どうしてもパーティが組めないと、解放軍のパーティに強制的にいれられる。
それを断ると小さな嫌がらせをされたりするらしい。
「誰かパーティに入れてくれそうな人はいるかな?」
「あ!ケーマにゃ!」
「おぉ。!いいところに来たのでござる!」
俺は声をかけられて振り向いた。
そこには、小柄な猫耳を生やした少女とザ侍といった雰囲気の着流し長身の男性がたっていた。
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