第5話 ランチタイム
矢間さんとの打ち合わせも終わり一安心。
途中、大きな失敗もしたような気もするけど、矢間さんの優しさに救われた。
あのままタバコの匂いを嗅いでいたら、吐いていたかもしれないし・・・。
(でもなんで今日に限って、あんなにもタバコが駄目だったんだろうか・・・。)
いつもであれば軽く流せたはずなのに、今日は異様に感じてしまった。
体調でもおかしいのかもしれないな。
そんなことをついつい思いながらも、次の打ち合わせへ向かう。
とその前に・・・。
グ~
お腹の音が鳴り響く。
辺りを見回すが、誰も気付いていないので良かった。
みんな一様に俺になんて目もくれず、歩道を歩いている。
「少し早めだけどランチにするか」
腹が減っては戦は始まらないとはよく言ったもので、
お腹が空いていては仕事や打ち合わせもろくにできないだろう。
とりあえず、ご飯でも食べに行こうか。
そうと決まれば・・・。
俺は良さそうな店がないか、辺りを見回す。
定食屋に少し高めのパスタやさん、喫茶店などが立ち並んでいた。
当然、一人暮しをしている俺は食費も基本的に切り詰めている。
そのため、いつもは定食屋に入り、
一番安い定食をご飯大もりで注文することが多い。
今日も定食屋へ行こう。
そう思いながら、歩を進めていた。
そのはずだった。
「いらっしゃいませ~!!おひとり様ですかぁ~??」
「は、はい」
なのに俺が入っていったお店はそのどれでもなく、
まさかのファミレスだった。
自分でも自分の行動に驚いてしまう。
どうして俺はファミレスになんて来てしまったのだろう。
「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのベルでお呼びくださいね♪♪」
店員さんに席まで案内された俺は目の前に置かれたメニューを手に取る。
ずらっと並ぶその数に驚く。
数年ぶりにファミレスに入った俺は悩む。
元々家族で来ることを予期しているこういう店に一人で来るというのは
なんだか気が引けていた。
だから、お昼は定食屋に行き、夜には落ち着けるバーに行ったり
居酒屋に行って食事を済ませている。
だからといって、そんなにも外食ばかりするわけにもいかず、
自炊の日が大半だが・・・。
偶然とはいえ、こうして滅多に来ないファミレスに来てしまった。
だったらまあ、普段食べないようなものを食べたって罰は当たらないだろう。
メニューにじっくりと目を通す。
どれもこれも美味しそうで、涎が零れ落ちてしまいそうなほどだ。
「よし、これにしよう。」
俺は店員さんに言われていたようにベルを押す。
待つこと1分も満たずに、店員さんはパタパタとやってくる。
「ご注文はお決まりでしょうか??」
店員さんは電子機器を取り出すと、打ち込む準備を固めた。
「え~と、それじゃあ、この生ハムとモッツアレラチーズのサラダとガーリックトースト。それにカルボナーラにアイスコーヒーをお願いするよ。」
「かしこまりました。復唱いたします。生ハムとモッツアレラチーズのサラダ・
ガーリックトースト・カルボナーラ・アイスコーヒー。
以上でよろしいでしょうか?」
「はい、よろしくお願いします」
店員さんはそのまま料理人にオーダーを伝えるために歩いていった。
我ながらたくさん注文してしまったと思う。
それに多分、定食屋3日分くらいの出費をしてしまった。
あのメニューの魔力にはどうしても勝てなかった。
他にも色々と食べてみたいものはあったが、ここは我慢しよう。
数分と立たないうちに店員さんがサラダの盛り付けられた器を持ってきてくれた。
なんとも美味しそうな・・・。
口に生ハムとモッツアレラ。そしてレタスを纏めて口に入れる。
生ハムとモッツアレラのとろけ合った芳醇な味わいが口の中に広がる。
「お、美味しいな・・・。」
いつもの安い定食屋では味わえない味に舌鼓を打つ。
ここまでファミレスは進化したのか。
そう思えて仕方なくなるほどに・・・。
次に運び込まれてきたのはガーリックトーストとコーヒーの2つだった。
ここでもまた驚きがあった。
ガーリックトーストの美味しさだ。
サクサクのパンの食感に味わい深い香ばしい風味。
どんどんと口に入っていく。
そして・・・。ついに待ちに待ったカルボナーラが届いた。
仮初の今 あすか @yuki0418yuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。仮初の今の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます