最高速で生きた人々に捧ぐ

九情承太郎

コービー・ブライアント Kobe Bryant

コービー・ブライアント

2020年 1月26日 41歳没

元NBA選手 ロサンゼルス・レイカーズ所属

 優勝5回 得点王2回 年間最多得点4回 NBAオールディフェンシブチーム1st選出9回 オールスターゲーム出場18回 オールスターゲームMVP4回 スラムダンクコンテスト優勝1回 第90回アカデミー短編アニメ賞受賞



 初めてコービーの名前を聞いたのは、NBAの先発出場最年少記録を塗り替えたというニュースで。

 その時は「へえ」としか思わなかったけれど、神戸牛の美味さに感動した勢いで両親が名付けたという「コービー」の名前は覚えた。


 次に記憶に残ったのは、1997―98年シーズンのプレイオフで、ユタ・ジャズ相手に大失敗をやらかした試合。

 残り一分で4点リードしていたのに、矢継ぎ早にシュートを撃ったうえに連続で外し、逆転負けをして戦犯に。

 テレビで観戦しながら「ボールをキープして時間を稼げよ!? 若いなあ〜」と呆れていました。

 それでも、本気で悔しがる姿から滲み出る激しい闘争心が、マイケル・ジョーダンと重なって見えた。


 実際、彼の成績はマイケル・ジョーダンに近いハイスペックを示すようになり、オールスターゲームの常連になり、人気実力共にマイケル・ジョーダンの領域に達していた。

 中でも俺は、彼の闘争心に満ちた闘う姿が好きです。

 その闘争心を表すエピソードには、事欠かない。



 残り時間五分を切って大差で勝っている試合で、大ベテランであるジョン・サリーが寛いでベンチで記念撮影に興じていると、年齢が半分のコービーが怠慢を咎める説教を始めたり。

 普通しないよ、元バッド・ボーイズで歴戦の大先輩であるジョン・サリーを相手に。しかもルーキーが。ジョン・サリーが怒らずに笑顔で謝る人格者だから問題なかったけど。



 ブレイザーズとの対戦(1999〜2000シーズン)で、サボニスにブロックされてダンクを阻まれた時も、凄まじいリベンジを果たした。

 他の選手なら、ダブルクラッチやフェイントを駆使して躱しながら、サボニスが守るゴールにシュートを入れようとするだろう。もしくは、無理に攻めずにパスする。絶頂期は旧ソ連チームの代表として、米国チームを破った名センターである。サボニスとの勝負を避けても、恥にはならない。

 だが、コービーは再びサボニスの上からダンクを狙った。

 今度もサボニスがブロックで阻もうとするが、コービーは空中で体を大きく海老反り状に逸らしてブロックの手を躱し、ダンクを決めた。

 あれがテレビ観戦で目撃したNo. 1ダンクであり、その記録は全く塗り替えられていない。

 余談だが、『進撃の巨人』アニメ版の立体機動装置の動きは、コービーがダンクする時の動きを参照したのではないかと思っている。



 2000〜01シーズンのアレン・アイバーソンとの勝負も、忘れられない。

 ファイナルで試合が1勝1敗で終わろうとする間際に、笑顔で挑発するアイバーソンと、真っ向から怒鳴り返しているコービーの映像が。

 何を言っているのか、すぐに想像出来た。


アレン「この後はフィラデルフィアで俺達が三連勝して、優勝する。ロサンゼルスには戻って来られないぜ(意訳)」

コービー「いいや! レイカーズの方が逆に三連勝して、フィラデルフィアで優勝してやる!(意訳)」


 何を言っているのか、何をするつもりか、顔と気迫で伝わった。解説者が解説する前に、理解した。

 そして本当に、レイカーズは敵地フィラデルフィアで三連勝して優勝を決めた。

 アイバーソンが余計な挑発をしなければ、ひょっとしたら6戦か7戦も有り得たかもしれない。



 81得点を記録した日(2006年 1月26日トロント・ラプターズ戦)も、覚えている。

 ネットでテキスト実況を見始めたら、既に62得点を挙げていたので気絶しそうになった。

 その後もハイペースで得点は上がり続け、テキスト入力するスタッフも混乱しているのか、最終得点は一時83〜82得点を記録し、数分後に81得点で落ち着いた。

 俺もスタッツを計算してみたが、興奮したせいか何度も83〜82得点を計上してしまった(笑)



 引退したコービーが、アカデミー賞授賞式に顔を出した時には、何が起きたのか全く理解出来なかった。

 しかも、短編アニメ賞を受賞してしまうし。

 引退後も、話題には欠きそうもない人だった。



 訃報の大一報は、妹からのLINEで知った。

 同姓同名の人の話題であろうと期待したが、ツイッターのニュース欄にハッキリと「ヘリの事故で死亡」と書かれていた。

 墜落時の映像まで出回っていた。

 デビューから引退まで、尋常でなく偉大なゲームを数多く見せてくれた選手が、本当に消えてしまった。

 彼のエピソードを幾つも思い返しながら涙ぐみ、この気持ちをエッセイの形で残しておこうと決めた。

 


 さようなら、コービー。

 君の突然の退場が、残念です。

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