愛薫る

シィータソルト

第1話

女「ねぇ、薫君」


男「何だよ、薫」


女「あたし達ってさ、同じ名前だよね」


男「? 今更どうした」


女「いつも呼び合ってて思ったんだけど、自分を呼んでるみたいで何かヤ」


男「でもよ、今までもこう呼び合ってきたじゃん」


女「いや、そうなんだけどネ……」


あたし、桜 薫。隣にいるのは神堂 薫。今は、部活が終わり皆が帰った部室で2人きりで過ごしています。


あたし達が出会ったのは高校入学してからこのサッカー部で。


あたしはマネージャーで、薫君はレギュラー選手です!


実は、薫同士、付き合ってます。あたしからの告白で。


――――


女『試合終了前に、ゴール決めて逆転したのすごくかっこよかったです。同じ薫であたしはただ応援しかできなかったけど。神堂君、チームのために動いて大活躍だったね』


男『……そんなことないよ。だって……』


女『だって?』


男『最後にたまたまシュート決まっただけだし。これ以外点数取ってないし。ただ、走ってただけ。それよりさ、桜さん。応援聞こえたよ。嬉しかった』


そう、サッカー部マネージャーって、とても人気で。


マネージャー志望が10人も募って。


目的はただ1つ。


3年のエースである音無 梟(おとなし ふく)先輩に近づくため。


音無先輩は音もたてずに相手(えもの)に近づき食らいつく梟のごとくボールを奪い取り、ゴールを決めてしまう。


また、ロングシュートを決めてしまうような力強さも持っているから、女子だけではなく、男子も興奮してしまうような試合を創り出してしまいます。


男子にもモテモテなので、男子部員もそんな先輩とサッカーがしたくてたくさん集まりました。


本題に戻りますが、そんな最強の先輩しか私を除いたみんなは眼中になく、みんなの声は、


『音無先輩、頑張ってくださーーーーい!!!!!』


のラブコールという名の応援。


だけど、私は何故か先輩よりも神堂君の方が輝いて見えて……


気づいたら、大声で神堂君頑張ってと応援してた。


みんなの声かき消しちゃうほどに。


女『あれは~、その~、神堂君、一生懸命ボール追いかけていたから……つ、つい! 熱くなっちゃったの!』


男『うん、そのおかげであんな奇跡、起こせたんだ。ありがとう。』


……こんな無邪気な笑顔で笑えるんだ。


いつもはポーカーフェイスだから、何考えているのだろうって、ずっと想ってた。


あの時も……はたまた、あの時も……って、あれ?


今まで意識してなかったけど、私、神堂君のこと……


女『好き、みたい……』


男『え……!?』


女『はわわわわ! 何でもない! なんでもない!』


男『俺も! 桜さんが…好きだ』


心の声の続きを実際に発してしまって告白したことに……


だけど、決まっちゃったみたい。私のゴールに神堂君の告白シュートが。


そして、<私の心>という点数取られちゃった。


――――


何てことがあり、付き合って3ヶ月です。えへへ、何だか恥ずいな。


だけど、まだ名前で呼び合って……手繋ぐって程度の……仲です。


ニックネームで呼び合うのってすごく憧れるけど……


薫って名前の愛称考えるの難しいな。単純だけど……


女「薫君。かお君って呼んで……いいかな?」


男「へー、何か可愛いなぁ。嬉しいよ。呼んで」


気に入ってもらえた。あたしも嬉しいな。


そしてもう1つ……


女「か・お・君♡」


かお君のほっぺを人差し指でつつく。そして、あたしは顔を近づけ……



男・女「……」


かお君にキスをしてみたけど、恥ずかしくてほっぺにしちゃった。


かお君無表情だけど、もしかして、嫌だったかな?


どうしよう、あたしだけ恥ずかしがっててバカみたい……


顔も真っ赤だろうな……


こんな顔見せられないよ……


なんて顔をそらしていたら、かお君があたしの肩を引き寄せて……


男「なぁ、期待してたこと……してもいい?」


と、あたしのほっぺを手で包み込んで……


かお君とキスしました。


かお君があたしの憧れを叶えてくれました。


今日でかお君との距離、心も唇も0センチになった気分です。


なんてね☆

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愛薫る シィータソルト @Shixi_taSolt

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