ママは何でも取り上げる

尾八原ジュージ

第1話 ママは何でも取り上げる

 ママが何かうるさいことを言いながら、あたしに向かって手を伸ばしてきた。

 またあたしの大事なものを取り上げるつもりなんだろう。

 あたしは拳をぎゅっと握った。お金も指輪も、みんなママに取られてしまった。だけど今度こそは渡さない。だってこれは、大好きなお姉ちゃんがつけていたピアスなんだから。

「ひなは私と同じ三月生まれだね」とお姉ちゃんは嬉しそうに言った。もちろん誕生石も同じ、アクアマリンだ。

 だからあたしは、お姉ちゃんがつけていたこの、水色の石が入ったピアスが大好きだ。もちろん、いつも優しいお姉ちゃんのことも。

 でも、お姉ちゃんはもうここにはいない。次に会えるのは一体いつなんだろう……。

 握りしめた手の中には、ピアスの硬い感触がある。これがお姉ちゃんとあたしを繋いでくれる糸のような気がする。これを持っていれば、またお姉ちゃんに会えるような……。

 でもママの力は強い。頑張ったけれど、あたしの手はとうとう開かれて、ピアスを取り上げられてしまった。大声をあげて泣いたけど、ママはピアスを自分のポケットに入れてしまった。

 ひどい。あたしとお姉ちゃんのピアスを、あんな風に簡単に取り上げてしまうなんて……。

 だけどどんなに泣いても、ママはピアスを返してくれなかった。


「ひなちゃんダメよ。赤ちゃんがピアスなんか持ってたら危ないでしょ? ママにちょうだいね。でも、ひなちゃんの叔母さんのピアス、こんなところに落ちてたのね。また遊びに来てくれるから、その時返そうね」

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ママは何でも取り上げる 尾八原ジュージ @zi-yon

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