スタンド能力の絶対性とレジスタンスとしての「賭け」

 川尻早人がスタンド能力を絶対視しているとすれば、彼がスタンド使いの吉良吉影に対し画策した作戦の数々はスタンド能力という「絶対的な」力への抵抗として位置づけることができよう。吉良吉影の能力は、自分にはどうすることもできない「絶対的な」ものとして自身の前に立ちはだかっている。だからこそ彼はスタンドを持つ東方仗助らを引き入れる必要があった。しかし彼らが自分を見つけてくれるとは限らない。それまでは自力で吉良吉影に抵抗するしかない。彼はスタンド使いを出し抜くような、スタンドを持たざる者としての思い切ったことをする必要性に迫られていた。

 「思い切ったこと」、それは俄然「賭け」の様相を帯びる。彼にとって、彼の立てた策は全て「思い切ったこと」であり、常に死と隣り合わせの危険なものだった。もし仮に彼がスタンド能力を持っていたら、スタンドを持たない者としての思い切りは必要ではなかっただろう。彼の抵抗はすべて「思い切ったこと」であり、成功を担保できない「賭け」だったのである。彼が自らの行為を「賭け」と認識したのは、それがスタンド能力の絶対性に抵抗するものであったと考えていたからではなかろうか*。




*この指摘は川尻早人がスタンド能力の絶対性を覆そうとしたという意味ではない。彼は吉良吉影を東方仗助らに発見させた後もスタンド能力を信頼している。前頁注参照。

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