5-3

 急いで着替えて参加することになったのは、ソフトボール投げ詰将棋。ボールが遠くへ飛ぶほど問題が簡単になるルールだ。

「二日酔いの亀棚八段に代わり急遽参加することになったのは、加島衛三段です! 新人戦ベスト8で注目される期待の若手、先輩の代役を務められるでしょうか?!」

 まずは予選。そこでの成績優秀者が決勝に進めるらしい。

 ボールを投げるなんていつぶりだろうか。超インドア派、学校も行っていないのでスポーツからはかなり遠ざかっている。

「がんばれー」

「だれだー」

「あっ、記録係っぽい人ー」

 いろいろな声が飛んでくるが、どうも最初からいたことに気づかれていないらしい。場違い感に押しつぶされそうになる。

「どうにでもなれーっ」

 ボールを投げる。意外と自然にできた、気がする。

「記録は……24メートル! 平均的ですね。というわけで、問題は17手詰めです。準備はいいですかね。では、スタート!」

 大画面に問題が表示される。入玉形だ。今回の問題制作者は、羽藤はとう八段。15手から21手での傑作が多く、下手をすると超難問の可能性もある。

 途中、合駒問題になっていた。こういう時の羽藤先生は、意外な駒を正解にする傾向がある。

「よし」

 正解がわかったら、タブレットに入力する。間違っていたらやり直しなので、かなりの時間のロスになってしまう。だが、自信があった。

「おっと、加島三段、もうできたようです。そして……正解! 記録は38秒! これはかなりの好成績です」

 よかった、と思ったものの残念ながらトップではなかった。むちゃくちゃ遠くまで飛ばして、5手詰めになった人もいるのだ。ただし、その差は数秒。

 これ、意外といけるんじゃね?

 そして、決勝戦。残った選手の中に、ロコロがいた。運動神経があり、詰将棋もそこそこできて、詩人。僕の記憶に残らなかった人だけれど、かなりキャラが濃い。

 勝負である以上、やはり負けたくはない。

「さあ、いよいよ決勝戦です。ソフトボール投げ詰将棋界のトップに立つのは、だれでしょうか?!」

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