5-2

 どういうわけか、会場にいる。

 今日は、詰将棋大運動会当日。家でのんびり見る予定だったのだけれど、急遽現地に召集された。「各競技の結果を記録係風に記入していくのはどうだろうか」という話が出て、「それならばやっぱり加島君だろう」という話になったらしい。もう、プロ記録係としても生きていけるんじゃないだろうか。

 今回はグラウンドを借り切っての大掛かりな大会である。観客席も解放されていて、美鉾や福田さんも見に来ると言っていた。

 そう、ついに。距離があるとはいえ、福田さんとロコロが再会することになる。

 そんなポエ将動画配信者は、いつもよりも顔の露出した運動用のマスクで現れた。上着もタンクトップで、あらわになった腕はなかなかの筋肉がついている。本人曰く、「今日はバトル・ロコロです」とのことだが、意味はよくわからない。

 僕はステージの奥に座り、競技結果が出たらそれをタブレットに打ち込んでいく。誰も注目してないんじゃないかと思うけれど、生中継ではそこそこ僕についてのコメントがあるらしい。本当に皆、いろんなことを楽しむ。

 前回もあった竹馬詰将棋は、プロたちが圧勝した。この競技があると予想した棋士たちが、竹馬の練習をしてきたのだ。そうなると、詰将棋力で負けるはずもなく。ただ、有名人チームには竹馬名人がおり、スタートから10メートルまでは圧勝だった。そして、第1問目を解いている間にごぼう抜きされた。

「加島君、ちょっとちょっと」

 ディレクターが袖から手招きをしていた。

「なんでしょう」

「ちょっとさ、アクシデントがあって」

「アクシデント?」

「亀棚さん、さっきの競技でダウンしちゃったんだよ」

「えー! まだ一種目ですよ」

「それがさ、今朝まで飲んでたらしくて。『僕的にはもう6ラウンドなんだよなぁ~』なんて言っちゃって」

「あらら……」

「しばらく横になってるからさ。君、代わりに出てよ」

「……え?」

「リハーサルから出てるし、だいたいわかってるでしょ? 頼むよー」

「そんなだって、僕奨励会員ですし記録係ありますし」

「記録は誰でも付けられるからさー、頼むよー、ほら、ドラマ出たんでしょ? 場慣れしてるでしょ?」

「いやいや、そんなそんな」

「大丈夫。じゃ、この次の競技から頼むよ!」

 ……えらいことになってしまった。

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