#イグノーベル賞将棋部門

5-1

 時折、不思議なネタが流行る。

 今日のそれは、「#イグノーベル賞将棋部門」だ。考えやすいからか、次々と投稿されているものの、なかなかヒット作が生まれない。

 美鉾も一所懸命考えていたようだが、見事に0リツイートを繰り返していた。イグノーベル賞に対する人々の理解の相違も、タグの方向性が定まらない原因になっているようだった。

 ……最近僕、ネタ将評論家みたいな思考している気がする。

 ちなみに福田さんは必ず1リツイート以上だ。姉弟子のおかげである。

 局面画像投稿機能がなくなって結構経つけれど、みんなそれなりに楽しんでいる。もちろん前に比べたら物足りなさはあるけれど、与えられた状況の中で最善手を探すのはプロ棋士もファンも同じなのだろう。

「美鉾、なんなんだ『マイデコレーション脇息』って」

「有名ですよ。女子高校生の大会で持ち込んだ人がいて」

「そこまでは知らん」

 考えすぎて、伝わりにくいものになる展開だ。まあ、時にはこういうこともあるだろう。

「あ、大変です!」

「どうした」

「第二回詰将棋大運動会に……」

「またやるのか」

「霞通ロコロが出るらしいです!」

「……は?!」

 詰将棋大運動会。様々な運動をしながら詰め将棋を解くというイベントである。第一回は大盛況のうちに終わった。ただ、最近動画サイトを運営する会社の業績が悪く、将棋番組を作る機会が減っていたので、第二回はないものと思っていた。

 今回の目玉は、「有名人チーム」が出場することだ。もちろん詰将棋の実力に関してはプロ棋士の方が有利なのだけれど、元アスリートなどが入ることによりそれなりに期待できるメンバー構成になっている。

 そんな中に、ロコロがいた。ついに将棋番組にも動画配信者が出る時代なのだ。なんでも、芸能人予選枠を勝ち抜いてきたらしい。

「将棋、続けてたのかね」

「ひょっとして、すごい実力者なんじゃないですか? ほんとうはアマ強豪とか」

「それなら今まで福田さんが気付かないってことあるかなあ」

 なんにしろ、これは注目せざるを得ない。


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