1-5

≪やるぞ、カシマ作戦!≫


 美鉾の部屋の壁に、謎の貼り紙が。

「なんだこれは」

「気合を入れるためです」

 説明になっていない。

「何のための気合?」

「この苦境を乗り越えるためです。ネタ将たちの踏ん張りにより、ファンの盛り上がりはなんと維持されています。でも、いつかは盛り下がる時が来ます。そして刃菜子さん……彼女が戻ってくるまで、ネタ将の灯を絶やしてはいけないのです!」

「お、おう」

「そのために私ができるのは、流れを読んでネタを膨らませていき、積極的にリツイートしていくこと。力をその点に集中させます」

「わかったようなわからんようなだが頑張れ。僕は何もしてやることはできないけれど……」

 妹には申し訳ないけれど、明日はついに新人戦の対局。僕にとって、とても大事な対局だ。それだけではない。もし勝ち上がっていけば、福田さんと対戦する可能性もある。

 自分の部屋に入り、パソコンに向かう。相手は、四段。三段リーグでも戦ったことがあるし、プロになっているので棋譜もたくさん見ることができる。

 当たり前だが、四段になった人は強い。前回初めて次点を取ったものの、僕はプロになれていない人間だ。あと一勝の壁は、とてつもなく分厚く感じる。

 けれども、かつて三段で新人王を獲得した人もいる。いざ勝負となれば、これまでの実績は関係ない。

 僕は、将棋を頑張る。みんながそれぞれのやり方で、将棋を盛り上げていけばいい。

 ……

 とはいえ、息抜きも必要だ。タイムラインを覗いてみたり。きょうもまだ、棋士がスキーでジャンプしていた。中にはペアで飛んでいる画像まで。ジャンプにペアはないだろうに。

「あれ、これは……」

 一枚の写真に、惹きつけられた。まさか、これを選ぶなんて。

 ネット上には、いろいろな人がいる。

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