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 あれから三日。タイムラインはまだ重たい空気のままだった。

 一つはもちろん、局面画像がないからだ。僕たちは、盤面を見ることで活力を得る生物だったのだ。

 そしてもう一つ。福田さんが全くつぶやかなくなったのだ。面白いことをつぶやくだけでなく、普段の出来事を積極的に発信し、時にはファンと交流もする。福田さんのアカウントは、癒し効果も大きかったはずだ。

 だが、妹はあきらめなかった。

「ネタ将のすばらしさを、中五条さんに認めてもらうためにも!」

 と意気込んでいるのだが、えてしてそういう時には面白いことは思いつかないものである。

「苦戦してるなあ」

「生みの苦しみです……」

 研究も、焦っているときはいい手など思いつかないものだ。そして美鉾は、ネタ将的に序盤タイプではない。流行りだしたタグの流れを作るのがうまい、中盤タイプだ。ネタ将全体に勢いがないときは、活躍しにくいのである。

 そして、こういう状況を打破するのは、いつだって天才なのだ。

 きっかけは、観戦記者の何気ない一文だった。


「小川原五段は極端に盤から離れて座るタイプの棋士である。今は盤面をのぞき込むために、大きく前傾姿勢になっている。まるでスキーのジャンプをしているときのように見える」

 すると数分後、小川原五段の下半身をスキー選手にしたコラ画像が投稿されたのである。

 これ自体は、それほど大きな反響がなかった。しかしそこに乗っかったのがプロ棋士である武藤さんだった。


「いいなあ。僕もスキージャンプしたい」


 そう言って、自ら対局中の写真を載せたのだ。公式からの素材提供!

 そして数分後、「#間違えてスキージャンプ代表になってしまった棋士」 というタグとともに、武藤さんのスーツでスキージャンプ姿が投稿されたのである。

 さすがは武藤四段。将棋だけでなく、ネタ将としての序盤もうまい。

 こうなると様々な棋士が餌食になっていった。逆に、スキー選手が対局している画像まで登場した。

「ああっ、また私の知らないジャンルとの融合です……」

 美鉾は、慌ててスキージャンプのことを調べている。競技自体見たことがないそうだ。最近はネタ将として活動するため、いろいろなことを調べて準備はしていたのだけれど、これに関しては、指運がなかったということだろうか。


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