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「兄様、大変です!」

 憂鬱な思いを抱えて家に帰ってくると、今度は妹の美鉾が慌てて駆け寄ってきた。

「どうしたんだ」

「なくなってできなくて大騒ぎなんです!」

「まったくわからん」

「中継の棋譜画像つぶやき機能がなくなったんです!」

「ほう」

 現在、スマホのアプリによって毎日数局、プロの対局が中継されている。そこにはSNS連携機能があり、棋譜画像と共につぶやくこともできていた、のだけれど。

「どうしましょう」

「どうもできんだろうなあ」

「兄様! 将棋界の人間なら何とか頼んでください!」

「そう言われてもなあ。プロですらないしなあ」

 妹には大変申し訳ないが、たとえプロであってもこういうことはいかんともしがたいというのが現実である。

「せっかくネット上で盛り上がってきたところでしたのに……このままだと、将棋ファン自体が減ってしまうかもしれません」

「そんなに?」

「対局を観ながら皆でわいわい言う……このリアルタイム感が大事なんです! 私も強い人の指し手についてはわかりませんけど、それでもみんなと楽しんでいると感じると、毎日中継が楽しみだったんです」

 そういうものかもしれない。僕は将棋を仕事にしようとしているので、そういう楽しみ方の重要性に鈍感なのだろうか。

「しかし美鉾。そうなってしまったものはしょうがない。昔はネットなんかなくて、それでも将棋ファンはいたんだ。あるもので楽しんでいく、それも大事じゃないかな」

「それはそうですけど……。そうですね、とりあえずは今できることをするしかないですね」

「そうそう」

「こんな時だからこそ、出番でもあるかもしれません」

「そうそう……ん?」

「中継が盛り上がらないなら、ネタで盛り上がればいいんです。将棋界の苦境は、ネタ将が支えます!」

「お、おう?」

 美鉾の瞳の中で、炎が燃えている。

 今日は、ネタ将的にいろいろある日のようである……

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