バス停
人間の体は休ませないといけないから本当に効率が悪い。
夜。私とリリア・ツヴァイは、バス停跡の小屋で休みを取っていた。昼間のコンビニからもう既に五十キロは歩いて来た。すべて私がリアカーを引いて、彼女をそこに乗せてだけど。
二人で夜空を見上げる。周囲に灯りがない上に、小屋の照明が故障して点かないから完全に闇の中だった。この手の簡易な施設ではさすがにアミダ・リアクターまでは設置されてなくて、ソーラーパネルとバッテリーの組み合わせだけど、バッテリーは生きてたから照明の方が壊れたんだろう。
ただその分、人間の目でも星がよく見える。渦巻銀河の渦状腕もはっきりと分かる。人間はこういう光景を『綺麗』とか『すごい』とか表現するんだろうな。
ロボットの私にはその辺りは理解できない。そういうものを人間が『綺麗』とか『すごい』とか評するというのは分かるけど、何がどう綺麗ですごいのかが、私には分からない。
私と一緒に星を見上げてるリリア・ツヴァイも、厳密には人間じゃないからたぶん分かってない筈だ。それなのに、胸が締め付けられるような感覚があるのは何故だろう? 身体的なダメージはほぼ回復していて、そのような症状がでる要因はない筈なのに。
それも、知識としてはある。人間には時としてそういう不可解で非合理的な身体的反応が出るということは。それが人間に<心>をもたらしているという研究資料もある。ロボットである私にはないものだ。
そうして星空を見上げていると、いつの間にかリリア・ツヴァイが眠ってしまっていた。これも生身であるが故の非合理な生理現象だ。こんなことをしている間に外敵に襲われたらどうするのか。もっとも、そういうことに対応する為にも人間は私達ロボットを作ったようだけどね。
気温が下がってきた。リリア・ツヴァイが寒そうに体を縮こませる。このままでは体調を崩しかねないので、私は機体温度を上げ、リリア・ツヴァイに寄り添うようにして横になった。
ロボットである私に睡眠は必要ない。けれど、彼女が眠っている間は私もすることがないから、危険を察知する為のセンサー類と機体温度だけを維持して、他の機能は
その姿は、二人の少女が、二度とバスが来ることのないバス停で寄り添い合って寝てるようにも見えただろう。人間は、そういうのを見るとどう思うのだろうか。
『可哀想』?
『萌える』?
その辺りも知識としては与えられているけれど、私には理解できないものなのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます