『ドラゴンアンソロジー「龍舞記ーたつまきー」』
豪華な執筆陣によるアンソロジー。書籍化作家さんもいます。
恐ろしいドラゴン、不思議なドラゴン、可愛らしいドラゴン、どのドラゴンも個性が突き抜けて楽しい!
笑いあり涙ありエモあり。読後の満足感がすごい。
全力で推したい一冊!
https://unebi72.booth.pm/items/5398027
以下、本の感想です。
ネタバレがある部分には【ネタバレあり!】などの表記をしています。
『井の中の竜』
気になるタイトルでした。
この作品は二回読むのが正解かも。
一回目は、童話のような印象を受けつつ読み進めていくと「雲に乗ってうたた寝」「世界の隅で落ちることがある星」など不思議な表現が。
ラストまで読み終え、「なるほどそうきたか」と納得。
オチを知った上で読み返すと、同じ作品を読んでいるはずなのにまるで別の世界を舞台にしているように見えました。一度目と二度目では、「外」へ出たときの印象も大きく変わりますね。
そして、童話のように見えていた物語が、二度目は教訓を込めた説話のようでもあり。
住み慣れた場所を離れて外の世界へ行こうと決心した「竜」の勇気を讃えたいです。
読んだあとも折に触れて思い出される、印象的な作品でした。
『あてなるは霓』
タイトル読めない問題。
チラッと検索したら他にも読めない人がいたっぽい。良かった私だけじゃない(安堵)。
ちなみに「にじ」と読むそうですよ、奥さん。
よく考えたら「あてなる」もわからん。「当てになる」だと思っていたら違った。「高貴だ」という意味だそうですよ、奥さん!
さて感想。
独特でオリジナリティが強く、少し不思議で、とても美しい世界観。龍が宝物を飲み込んで集めるという設定に興味を惹かれました。
だがしかし!
花筏が袖を引き裂いたあたりから、泣きそうになり思わず本を閉じました。
だってね、
【以下、激しくネタバレあり】
主人公にとって、大切で、暖かくて、優しくて、美しく、かけがえのない場所が、今まさに蹂躙されようとしている。
そのシチュエーションだけですでに泣きそうです。
きっと作者様は村を燃やすタイプの書き手。
……よし。この作品は最後に読もう。と心に決め、次の話を読み始めたのでありました。
『いつか龍になる日まで』
面白かったです。
日常に、世間に、人間社会に、何食わぬ顔で溶け込んでいる龍。いや、微妙に溶け込めていないのがまた切なくて、いい味が出ています。ドラゴンアンソロの中にこんな龍がいたっていい。
ものすごく生活感がにじみ出ている作品でした。
【ここからネタバレあり、要注意!】
様々なドラマが詰め込まれていて一本の映画のよう。
そしてこれでもかと大量のネタを見せてくれる作者様のサービス精神。自分は「キリンビール」「息子はおらん」「ハゲチラス」あたりでふふっとなりました。わからないネタも多かったのが少々残念。(ちなみにバクマン。とかもう12年くらい前の作品らしいですよ、奥さん!)
蝶ネクタイの話など、本当かなと思いつつ妙なリアリティがあって、その「嘘かホントかわからないインチキ臭さ」と「なぜか妙なリアリティがある」絶妙なバランスがいい味を出していました。
とても楽しく読ませていただきました✨
『竜頭の竜狩り』
この作品が読みたくて『龍舞記』を購入しました。
もうね、まさに天崎作品。
期待を裏切りませんでした。
丁寧に作り込まれた世界観。
サイバーパンク味を感じる世界。あるいはアメコミ? 人を喰う竜がいて、それを退治する竜狩りがいて。
世界観はまさに中二病全開。ガチのバトルもので、描写に迫力があります。さすが天崎さん。
ですが、そこで繰り広げられるドラマにはビターな味わいがあります。いわゆる大人向けの作品ですね。
ロンが竜を狩り続ける理由に「まさか、そんな事情を抱えてたとは……!」と心が震えました。
そしてクライマックスに業の深さを感じます。
また、そこへ導くための背景がかなり丁寧に描かれているのが印象的でした。もうね、文章の説得力がすごいのよ。さすが天崎さん。こないだ思わず「何を食べたらそんなふうに書けるんですか?」って聞いちゃいましたよ。ふんす。
余談ですが、ひとつ前の作品(『いつか龍になる日まで』)は「生活感によるリアリティ」で、天崎さんの作品は「五感に訴えかけるリアリティ」なんだよなあ。リアリティにも種類がある。勉強になります。
_φ(・_・
そしてイラストが……えっ!? 待って、この挿絵は天崎さんが!?
いやめちゃくちゃ豪華じゃないですか!
小説も書けて自作に挿絵も描けちゃうだなんて、本当にすごい人ですよ、天崎さんは!
『西に消えた竜と子どもの物語』
イラストがとても素敵!
塩田さんという方が描かれているのですね。
可愛らしくて色使いも綺麗だし、素朴な線もほっとしました。世界観にぴったりのイラストですね!
特にちび竜の絵は可愛らしさがギュッと詰まっていて、瞳とかおでこのあたりとか、曲線のひとつひとつがキュートで、たまりません!😊
【注意! ここから激しくネタバレあり】
本文の方は、美しくも悲しい物語でした。
子どもと竜のと出会い、成長を丁寧に描き、そこからの西の国パート。
どうして西の国へ行ってしまったのか……と悔やんでも悔やみきれないでしょうけれど、最後はふたりに解放という名の救いがあって良かった……と思いました。
悲しいけれど、綺麗な終わり方でとても好みでした。
満足して本を置き、一休みして再び本のページをめくったとき……
本「ところが、どっこい」
私「ところが、どっこい!!??」
まだ話が続いていたことにびっくり。
え、わ、私の感動は……?( ゚д゚)
なんか子どもと竜に名前もついているし、童話とラノベくらい雰囲気が変わってるし。
きっとどうしてもハッピーエンドがいい! と思ってこのようにしたのでしょうね。
読者を驚かせるという目的でこのような作りにしたのなら、大成功だと思います。
『あのときの約束を』
思わせぶりなタイトルがいいですね。
本文は、何かの作品のスピンオフでしょうか?
あるいは物語の前後があり、一部を切り取ったという印象でした。
オフィスビルも車もあり、そこに竜や魔法も存在しているという世界観。人物の会話がメインでしたが、どんな世界なのかも気になりました。
『がらくたどらごん』
あ〜んもう、好きっ!!
このアンソロジーに載っている作品の中で一番好きです。どの作品よりもワクワクしながら読みました。
ドラゴン(あるいは竜、龍)ときたら、人によっては「かっこいい」とか「幻想的」とか「凶悪な存在」などのイメージを持っていると思いますが、私にとっては「ワクワク」だったり「圧倒的な力の象徴」だったり「希少種」なんてイメージだったりします。
そんなわけで、「ワクワク」が詰め込まれた『がらくたどらごん』はまさに私の好みにドンピシャな作品でした。
始まりは何気ない朝のシーンから。
主人公がお母さんに部屋を片付けなさいと叱られている冒頭のシーン。このあたりまでは、平凡で何気ない場面のようにも思えます。
だけどその次のシーン、主人公が部屋を掃除し始めるあたりから、興味を惹かれる描写がちらほら。
まず掃除が大雑把すぎる。「そんな掃除で大丈夫か?」とツッコミたくなる。そして主人公のコレクション。なかなか興味深いものを集めているらしい。自分にも蒐集癖があるのでちょっと親近感。部屋を片付けられない仲間でもある。
雑に片付けたあとは「早く早く急げ急げ」と部屋から脱出。読み返してみると、こういった言葉の使い方がとても細やかで、読者の興味を引く仕掛けとなって配置されている。知らないうちに少しずつ物語に引き込まれていくのでした。
【ここから重大なネタバレあり!】
主人公が片付けに四苦八苦していると、ドラゴンが出現したとの情報が。『見たこと無いドラゴン』『ここもいつ危なくなるか』など不穏な空気を出しつつも、少年たちの好奇心は抑えることができない。読者の私もうずうずしている。
そして明らかになるドラゴンの正体。
ここまで読み進めると、今までの全ての描写が伏線につながっていたのだとわかり始めます。主人公の蒐集癖も、掃除嫌いも、謎の牙も。
破壊される街、友達とのいさかい。
でもすぐ戻ってきてくれる友情。胸熱。
「いいね!」を1000回あげたい。
三人が立てたあまりにもシンプルな作戦に笑いました。もうね、子どもゆえのシンプルさと、でもそれがベストなんだろうなという説得力、そして最初の課題に戻る構成の巧さ、何もかもが愛おしくてたまらない。
ドラゴン討伐は実際にやってみるときっとすごく大変なことなのだろうけれど、武器が武器だけにどこかユーモラスな雰囲気。シリアスなバトルというよりはわちゃわちゃ、ドタバタという感じ。
ハラハラ見守っていると、171ページ最終行に「やー!」というセリフが。
突然のちいかわみwww
そういえば討伐って言ってるしwww
なんかもう終盤は子どもたち三人組がちいかわの三人組の姿で脳内再生されるwww
そして終幕。
ちょっとの秘密を残して、綺麗に(いろんな意味で綺麗にw)物語が終わって。
主人公は部屋を片付けるようになりました、めでたしめでたし。
作品を読み終えてふと気づけば、成長した主人公と、未だ片付けができない私が残され。
まるで主人公の友達になったかのように楽しく読んでいたのに、ここにきて、彼だけ先に進んでしまって、私は慌てて「ちょっと待って、置いてかないでくれよ!」と自分も部屋の片付けをしようと心に誓ったのでした。誓っただけです。まだ何もしてはいません。ドラゴンになる前に部屋を片付けねばなりませんね。
よし、掃除をしよう! と一念発起できるような作品でした。
あとタイトルがまた素晴らしいんですよね。ひらがなになっているのは子どもたちが主役の物語だから。「がらくた」と「どらごん」の語呂も絶妙ですし、なにより「がらくたどらごんってなんだろう?」と興味を惹かれます。
いや、本当にタイトルのつけ方上手いな……嫉妬。
個人的には作者紹介のお言葉も好きでした。
サラッとこういうこと書いてしまう人の作品がとびきり面白かったりします。
素晴らしい作品を書いてくださってありがとう。
この本に出会えて良かったです。この作品に出会えて良かったです。
『色食む龍』
書き出し祭りでたくさんのFAを描かれているexaさんの作品ですね。
【以下ネタバレあり】
さすがイラストを描かれる方だけあって、色を見事に扱った作品でした。また、一番情景がはっきりと浮かぶ作品でした。
鱗の一枚一枚に龍が食べた色がつくだなんて、あまりに素晴らしい発想で感心するばかりでした。
少し怖いけれど、さまざまな色まとった龍の姿を、私も実際に見てみたいと思いました。
挿絵はexaさんご本人によるものだそうですが、白黒なのがとても残念。これはぜひカラーで見たかった……。
ここまでにいろいろな龍が出てきましたが、この色を食べる龍は得体が知れず、不気味な存在に感じました。そこが他の作品と一線を画していて良かったです。
雪の色や看板の色は龍が直接色を食べていましたが、ヒロインについては色ではなく名前を食べているように感じました。
なので私の解釈としては、この龍は色そのものを食べるのではなく、色の「概念」を食べているのだろうなと。
夕焼け空の色を食べられてしまったのは痛手ですが、作中の描写から、龍は空色を食べていないのではないかという気がしました。一番目につく色でしょうに、不思議だなと思いました。何か龍なりの基準があるのかもしれませんね。
そういえば、私も綺麗な色を見かけるとよくスマホで撮るので、綺麗な色を集めたくなる龍の気持ちは少しわかる気がします。
それにしても主人公のセリフがずいぶん情熱的なんですよねぇ。……と思ったら、これあれじゃん! つまり『奪われた「色」を「言葉」で補う』ってコト!?
……やりおる! この作者、やりおる!!
絵描きとして色を操り、字書きとして言葉まで操るとは!
そして、『龍舞記』の表紙イラストもexaさんの作品とのこと。いろいろな姿形の龍たちが描かれ、とても華やかな表紙となっています。一口に龍と言っても、これほどまでに多種多様な姿形があるのかと驚きました。
そしてそれはこのアンソロジーの中に登場する龍たちがそれぞれ強い個性を持っている様子にも重なります。
文学フリマ会場でこの本を見つけた私の表情もまた喜びに満ちてぱっと華やいだことが昨日のことのように思い出されるのです。
『龍を探して』
なんとも不思議な読書体験をさせていただきました。
ここからは少し自分の話になりますが、私はこのアンソロジー『龍舞記』を文学フリマで購入させていただきました。そのときに主催者である采火さんのお名刺もいただいており、無くさないようにとご本の間に挟み、保管しておりました。
さて、何事にものんびり屋の私。
文学フリマからしばらく経ったある日、ようやく『龍舞記』を読み始めました。
ご本を開くときには、采火さんのお名刺を本のあいだからそっと取り出して傍らに置くのが常でした。
数日かけてゆっくり『龍舞記』を読み進め、その日は『龍を探して』をのんびり楽しんでいました。
しかし、主人公が眠りについたシーンで、ちょうど昼食後の眠くなる時間帯だったということもあり気がつけばいつの間にか私も眠っていたのです。
【ここから本編についてのネタバレあり】
しばらくして目を覚ました私は、「登場人物が眠るシーンで自分も眠くなっちゃうの、あるあるだなぁ」なんて思いながら読書を再開しました。
物語の中では、主人公が夢現とも分からぬまま龍らしき「巨大な生き物」の姿を見ていました。
そしてその生き物は、緑色の鱗を撒き散らしながら飛び去ったのでした。
その後、主人公はともに旅をした相手と別れ、物語は結末へ。
いい話だったなあ、と本を置いた私の視界に映ったのは、緑色の龍の鱗でした。まさに想像した通りの、淡い緑色でうっすら透けるような、そして大きさは名刺ほどの……。
私は思わず「それ」を手にとってまじまじと眺めました。そこには采火さんのお名前とメールアドレス、そしてサイトへのURLなどが書かれていたのです。
物書きの妄想も大概にせよ、と思うのですが、びっくりすることに本当のことなんですよな、これが。
そんなわけで私は、実はこのお名刺は龍が撒き散らした鱗のうちの一枚なんじゃないか、そういう手の込んだ演出なのではないかと疑っているのです。
さてすっかり前置きが長くなりましたが、ここから本文感想です。
何かを探す物語っていいですよね。それだけでドラマになるというのがよくわかります。
そしてそれが「幻の」とか「伝説の」とか言われるものほど浪漫がある。存在するかどうかわからないものを追い求める。実に素晴らしい。
この手の話、大好きです。
作品全体が回想という形で書かれているのも味わい深くて良かったです。きっと主人公が後から思い出して「あれは不思議な体験だった……」と感じているのでしょうね。こういう演出もまた好みでした。
またネーミングが凝っていて面白かったです。
特に気になったのが「ヨードム」という単語。いかにもありそうだなと思わせる音の響きにリアリティがありました。
素敵な(そして不思議な)読書体験ができた作品でした。
『竜をかる』
探されたりかられたり竜も大変だなあという思いでタイトルを眺めました。
しかし「かる」がひらがななのでダブルミーニングになってそうですね。
【ここから激しくネタバレあり!】
読んでいてゾッとしました。
狂気……。研究が進むに連れ怪我の度合いも酷くなっている。それでもやめないのは情熱でもなんでもなく単なる狂気でしかないと思いました。
こういうのは怪我を治す人がいるからいけないんですよ。甘やかし良くない。でも、ティコとアルウェンはいいコンビだと思います。
物語は最初から最後まで怒涛の展開。
テンポが良く最後までスラスラ読めました。
いやそんな生易しいものではなく、勢いに乗せられて最後まで一気に読まされたと言ったほうが正しいでしょう。
そしてアルウェンが翼を作り始めたシーンでは、思わず突っ込みました。
「お前が作るんかい!!!!!」
飛竜がこのアンソロジーの中で一番不憫なドラゴンではないかと思います。完全にとばっちりでしかないという。理不尽さ溢れる。少なくとも作中では何もしていないのに可哀想。
作者紹介に「頭からネジ外れたような話が好き」とありましたが、まさしくそんな作品だと思います。最初から最後までたいへん楽しく拝読しました。
『犬になった最強邪竜、まんざらでもない』
タイトルを見るたびに、なんて可愛らしいタイトルなんだろう、とほのぼのしていました。
そして読むのを楽しみにしていました……が。
結論からいうと、話はとても面白かったです。
というか、なんぞこれ。
は? なんでこんなに面白い!?(半ギレ)
どうやったらこんな面白い話が書けるんだ??
うまい。とにかく話を作るのがうまい。
この作者さんは「何をどうしたら面白くなるか」を知っている。マジで手慣れているしこなれている。
思わず「ず、ずるい……」と言いたくなるレベルでうまい。「面白い」よりも「嫉妬」が感想として出てきてしまう。
作者はmaforkさん。調べてみたら書籍化とコミカライズしている方なんですね。いやさすがプロだわ……。しかもTwitter(現X)を調べたら以前の書き出し祭りでも私この方の作品を絶賛していました。
今後この方、要チェックだわ。
作品もあとでじっくり研究させてもらおっと(小声)。
今のところ面白さの理由として思いつくのは下記の点。
①起承転結というか、話の盛り上がりがある。緩急をつけるのがうまい。
(引き合いに出して申し訳ないが)ひとつ前の作品は最初から最後まで狂気で突っ走っていたのに対し、この作品は話の起伏が大きく、「さあ、今から話が盛り上がっていきますよ!」というのがハッキリわかる。うまい。
どちらがいい、というわけでもないが、緩急があると盛り上がる。
②興味を引く要素
ヒルデと勇者の仲がどうなるかとか、
街の危機がどうなるかとか、
勇者と竜の対決がどうなるかとか、
気になる要素がたくさん詰め込まれている。
しかもぎゅうぎゅうに押し込められている感じはなく、程よいバランスなのも、またうまい。
③ほどよい人物配置
登場人物は「ものすごく癖があって印象的」というわけではないが、それぞれの人物像がわかる程度にはキャラ付けされている。
そして恐ろしいことに、この作品にはたった4人しか登場人物が出てこない。4人だぞ4人。しかも魔女はちょい役だし。たった4人でこんなに話が面白いってどういうこと(呆然)……。
【ここからちょっぴりネタバレあり】
そしてラスト。
えええ、目から水が……なんぞこれ、勝手にあふれてくるのだが……。
ちょっ……。みんな、末永くお幸せにね……ファーくんも良かったねぇええ!
というわけで、感想というよりはただ嫉妬を書き連ねただけの長文になってしまいましたが、作品は面白かったです。
『龍を食む』
さて、こちらの龍は食われるわけですよ。
かられたり食われたり、龍も大変ですねえ。
【以後、ネタバレしかないので注意!】
濃厚な愛憎にやられました。
いやあ、これはエモい。エモエモです。
最初、なんだかんだいいながら八尋さんは白雷のことが好きなのかと思って読んでいたら、まさかの「贄」という事実。そして想い人を殺された過去。自分が拒めば人々が死ぬという、主人公を縛る鎖。
重い、ひたすら重い、だがそれが読んでて心底楽しい……。いやあ最高です。
鱗を舐めるシーンが官能的でとても良かったです。
そこからの懐妊。もうね、ひとつひとつの要素が美しい織物のように編み上げられていて、たいそう美しい物語でした。
すべてを置き去りにして二人が去る結末もまた良かったです。最高ですね。
できればもう少し読んでいたくなるような、そんな作品でした。
『龍神の山』
普段あまり読まないタイプの作品でした。
龍がどうの、というよりは二人の男のやり取りを(書き手なりの)格好良さで書きたかったのかなと思いました。
世界観は、和風だけど魔法もあり竜もいて、その竜を軍事利用している感じでしょうか。
竜の巣とは何なのか、そして竜は軍事利用するけれど龍神は神聖なものだという線引きなど、私にはよく分からない点が多く、感想は他の方にお任せしようと思います。
『あてなるは霓』 〜ふたたび〜
はい。ようやくここへ戻ってきました。
これまでにいろんな物語を読んできたので、心の準備はできています。さっそく続きを読んでいきましょう。
いやあ、筆力が高い。
あまりの実力の高さに目を見張りました。
作者様の脳内にある「世界」が言葉によって見事に表現されていることが伝わってくる文章でした。
しかも、その「世界」の美しさたるや。
水遊苑が蹂躙される様子でさえ恐ろしいほどの美しさでした。
特に印象的だったのは花筏が矢に打たれるシーン。
「とん、と。まるで戸を叩くかのように優しい弓矢が飛来し……」という部分の絶望的な美しさに痺れました。
やはり作者様は村を焼き払うタイプの書き手。
そして水遊苑、期待を裏切らず見事に燃えましたね。水上にある建物が燃える様はさぞかし美しいことでしょう。ひとつひとつの場面が脳内に美しく映し出されました。
そして「やはりこの都が一番美しい」という宛虹の言葉。だから宝物を探すのに時間がかかっていたのでしょうか。
そして物語は怒涛の展開に。
龍という存在に見合ったスケールの大きさに、圧倒されました。
そして口絵も美しかったです。
物語の雰囲気が伝わってくるイラストでした。
いやあ、良い作品がたくさんでした!
買って良かった! ドラゴンアンソロ!!
楽しませていただきました。ありがとうございました。
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