書評・読書感想文
『5分で読書 驚愕のミライ』
『5分で読書 驚愕のミライ』
カドカワ読書タイム
●目次(敬称略)
『ロボットに育てられた少女』(深水映)
『僕は僕を君に届ける』(花田春菜)
『この小説を読んだ人から抽選で五十人に、最新型スマホをプレゼント!』(維嶋津)
『はこのなかにいる』(既読)
『私は猫を飼っている』(八島清聡)
『ひとつの花に託す。』(烏目浩輔)
『まだ見ぬあなたへ』(紫水街)
●『ロボットに育てられた少女』(深水映)
ごみ処理施設でロボットに十一年間も育てられてきた少女が発見された、という話。
動物が人間を育てたという話は聞いたことがあるが、そのロボット版。
この設定で面白くないわけがない。
物語は、とあるカウンセラーの目線で進んでいく。
この構図がとても巧いと思った。
謎めいた少女のことが少しずつ明らかになってゆく様子は、まるでミステリーを追いかけているかのような興奮を覚える。
ニュースやワイドショーを経て少女の様子が伝えられ、それに対する世間の反応や専門家の意見なども丁寧に描かれている。児童心理学・発達心理学といった分野も関わってきて、たいへん興味深い。
世界観もしっかり作られており、言葉の端々から「きっとこんな世界なんだろうな」と想像することができるところに好感が持てた。
テーマもしっかり定められており、強く伝わってくるのは「『人間らしく生きること』と『自分らしく生きること』は違う」ということ。
読後の余韻がとてもいい。
間違いなく印象に残る素晴らしい作品。
また、少女の名前「ミライ」と本の副題である「驚愕のミライ」がリンクしていて良かった。おかげですっと本の世界になじむことができた。
●『僕は僕を君に届ける』(花田春菜)
花田春菜さんの作品は今までにいくつか拝読しているが、全体的に「大人っぽい」雰囲気の作品が多く、読んでいてどぎまぎしてしまう。
決して「エロティック」という意味ではなく、もうね、なんというか、考え方が大人なの! 精神的に大人だなあって思うの!
私みたいに「遊びたい! 遊ぼう! わーい!」みたいな単純さじゃないの!
登場人物たちは皆、人生の酸いも甘いもきちんと味わい、世界は決して優しくなんかないと知ったうえで、ときには思慮深い行動を取ったり、ときには強い想いを捨てきれなかったり、ときには抗えない力に翻弄されたりする。
『僕は僕を君に届ける』も、そんな「大人っぽい作品」のうちの一作だ。
トムは、最愛の恋人を残して死んでしまう。
だが、彼はどうにかして恋人の元へ帰ろうとした。
その手段は、記憶や人格をすべて電子脳にコピーする、というものだった。
彼は「銀色の球体」に姿を変えて最愛の恋人のもとへ帰る。
あまりにも衝撃的な始まりだ。
なによりも驚くのは、作品のストーリーテラーが「銀色の球体」だという点である。
そして厄介なことに、この銀色の球体は思考を持っている。
そればかりか、感情があり、恋人への「愛」もある。
恋人がその事実をどう受け止めるのか、その様子にぜひ注目してほしい。
作品の大きな柱となるのが、「人間からそっくりそのままコピーされたデータは、はたして本人と言えるのか?」という問いかけである。
あまりにも難しい、哲学的な問いかけである。あるいは倫理的ともいうべきか。
人間の思考をコピーされた物体は、いったい何を想うのか。
彼にとっての「死」とは何か。
クライマックスは怒涛の展開である。
ぜひその目で衝撃のラストをたしかめてほしい。
見る人の数だけ感想がありそうな作品。
読後、あなたは何を感じるだろうか。
今日はここまで! 続きはまた時間が取れたときに。(気まぐれ更新)
更新したらTwitterか近況ノートあたりで連絡します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます