なぜ『誤字脱字』はダメなのか
●『誤字』=『読者の負担』
誤字には様々なものがあります。
「言った」が「行っった」になっているなどは、まだ可愛らしいものです。
「推敲」が「遂行」になっていたら、勘のいい人は「変換ミスだな」と気付くと思いますが、少し悩む人もいると思います。
「思います」が「覆います」になっていたら、これは少し頭をひねるだろうと思います。
「寝不足で辛い」が「猫不足で辛い」になっていたら、「なるほど主人公は猫派か」と誤解されたまま読み進められてしまうでしょう。
「彼は労働を嫌がっている」が「彼はろうどを嫌がっている」になっていたら意味が通じるかどうか怪しいものです。
「ここで履物を脱ぐ」が「ここでは着物を脱ぐ」になっていたら、もはや大参事です。
これらのような誤字があるたびに、読者は頭の中で「これはこういう意味かな」と推測しなくてはならず、そちらに余計な時間と労力を
誤字があると気になって仕方ない、あるいは内容が頭に入ってこないという方もいると思います。
また、誤字に限らずとも「わかりにくい文章」というだけで読解に時間がかかってしまいます。
そのようなことがないよう、作者は読みやすい文章を提供すべきだと思います。
●『誤字』=『推敲不足』=『手抜き』
誤字の多さは、推敲不足の証拠だと思います。
推敲と校閲は別ものですが、推敲を重ねていけば自然と誤字にも気付くはずです。誤字が放置されているということは、それだけ推敲の回数が少ないということ。
私がよくやらかしてしまうのは、最終の推敲で「一部分の文章をごっそり入れ替えた箇所」に誤字を残してしまうこと。
その部分は一度しか読まないため、誤字に気付きにくくなります。
推敲とは、文章をより面白くしたり、読みやすくするための作業です。
あるいは『作品の質を上げる作業』とも言えます。
推敲を怠るということは、「作品をより面白くするための努力」を怠っているのと同義だと考えています。
しかし、中には「推敲は面倒だからしない」という作者もいるようです。
「面倒」という気持ち自体は理解できるのですが、作者が手抜きをすればするほど、その作品は読みにくいものとなるでしょう。あるいは、味気のないつまらないものになるかもしれません。
作者の手抜きのツケを読者が負うことになる。
この構図を忘れてはいけないと思います。
わずか数千字の短いエピソードの中に誤字がある人。
明らかに推敲をしていないですよね?
それを「読んでください」と言う前に、もう一度作品を読み返してみませんか。
もしかしたらその作品、もっと輝けるのかもしれません。
●誤字が多い作者の文章は、読みづらい場合が多い
誤字が多い作者ほど「推敲が嫌い」「推敲が面倒」「書いてすぐ見直しせずに投稿している(投稿したい、そうする癖がある)」と言います。
そして、誤字を量産する作者の文章は、そうではないものと比べるとやはり読みづらさを感じることが多いです。
逆に、誤字が少ない作品は、章の分け方やタイトルの付け方にいたるまで見やすく工夫されていることが多く、読者への気遣いを感じます。そういった作品の文章は、やはりわかりやすい場合が多いです。
「神は細部に宿る」とはまさにこのことだな、と思います。
「面白い作品を書いたから見てくれ!」と叫ぶのは構いませんが、同じような内容でも、見やすくする工夫がされているものとそうでないもの、どちらが優れているかは明らかです。
また、「面白さ」と「誤字」は別ものです。
「面白ければ誤字も許される」ということはありません(作品が面白ければ誤字が消える、というのであれば話は別ですが)。
むしろその逆で、誤字は作品の総合評価を下げる要素です。チャームポイントではありません。
●誤字は読者を減らす要因となり得る
ここまで読んだ方は、私のことを「目ざとく誤字を見つける奴」だと思っているかもしれません。
でも、違います。
むしろ私自身は「誤字を見つけるのが苦手」だと思っています。
というのも、もっと誤字を見つけるのが得意な人が身近にいるのです。
その人はパッと見るだけで、一瞬のうちに誤字を見つけてしまいます。
Web小説に限りません。
印刷された文章でも、どこかのサイトでも、あっというまに誤字を見つけます。
でも、その人は報告なんてしません。
ただ不愉快そうに「誤字がある」と呟くだけです。
たぶんその人、小説に誤字が多いと感じたら、そのまま読むのをやめるんじゃないかな。いわゆる「サイレントクレーマー」ってやつですね。
「誤字が多すぎる」という理由で読むのをやめる読者がいるということは、覚えておいた方がいいと思います。
●誤字は、教えてもらえるだけありがたい
多くの人に読まれている作品を読んだとき、誤字を発見すると首を傾げます。
「なぜ今まで誰も教えなかったのだろう?」
作者さんが「誤字報告は要らない」と公言している場合は別ですが、多くの作者さんは誤字報告を歓迎しているという印象を受けます。
それにも関わらず誤字が放置されているのはなぜか。
やはり、「手間がかかる」というのが一番の理由だと思います。
そこを越えて誤字を教えてくれる人の存在って本当に貴重だなと感じます。
私に誤字を教えてくださる方、本当にありがとうございます!
心からお礼を申し上げます。
●残念ながら、すべての誤字を撲滅できるわけではない
誤字はたしかに恥ずかしいことです。
でも、人間なら誰しも間違いはあります。
私もすべての誤字を撲滅できるとは思っていません。
書店に並んでいる本でも、初版では誤字があるものです。
おそらく私の小説もどこかに誤字はあるでしょう。この記事にだって誤字があるかもしれません。
それに、「印刷して初めて気付く誤字」や「人目に触れて初めて発覚する誤字」もたしかに存在すると思います。
まずは、自分自身で誤字を減らす努力をする。
そのうえで、どうしても自分では見つけられなかったものを指摘されたら、そのときは深い感謝とともに早急な修正を行う。
それくらいがちょうどいいのではないかと、私は思います。
下記は、私が遭遇した『誤字エピソード』という名の愚痴です。
●ケース1 勢いで生きる。そして過去は振り返らない
「書き上げたら、そのままの勢いで投稿しちゃう」と言っていた人がいました。
気持ちはわからないでもない。
私はやりませんけど。
始めのうちは、その人の作品を読んでせっせと誤字報告を送っていました。
相手も「ありがとうございます!」「本当に助かります!」と言っていました。
……でも。
何かがおかしい。
読んでも読んでも誤字がある。
どのくらい誤字があったかというと、数千字のエピソードの中にたいてい1個所ずつは誤字がありました。多いときは2、3箇所。むしろ誤字のないエピソードの方が珍しいくらいでした。
わざわざ感想とは分けて誤字報告をしていたくらいです。
いつしか「これだけ私が誤字報告をしているのだから、作者本人が一度見直すべきでは?」と思うようになりました。
私が読むスピードは結構ゆっくりだったので、それをする時間は充分にあったはずです。
それをしなかったのは、たぶん本人が面倒だったからだと思います。
あるいは「この人が誤字報告してくれるから便利~!」くらいに思われていたかもしれません。
馬鹿馬鹿しくなって途中でやめました。
●ケース2 漢字至上主義
その作品はやたらと漢字が多い印象でした。
たとえば「矢張り」「或いは」「態々」「偶々」など。
ルビなんて気の利いたものはございません。
わからないものは毎回調べながら読んでいました。
歴史小説や時代小説ならまだわかるのですが、ジャンルはハイ・ファンタジー。
やるなとは言いませんが、やる意図はわかりませんでした。
これも作者としてのこだわりなんだろうなあ、と思ったので「読みづらい」と伝えることはなく、ただ「自分とは相性が悪いんだろうなあ」と思うことにしました。
問題は、そのゴテゴテした文体の中に誤字がわんさか隠れていたことです。
おそらく漢字が多いせいで作者自身が誤字に気付きにくいのでしょう。
あるいは、漢字が多くて読みにくい文体は作者自身にも読みづらく、それが理由であまり推敲したくなかった、という可能性も考えられます。
……なんだかなあ。
途中まで読んでサヨナラしました。
●ケース3 落ち着いてもう一度推敲を
「初作品です! ぜひ読んでください!」
たしかツイートにはそんなことが書かれていました。
短い文章でしたが、読めば読むほど誤字がぼろぼろと出てきました。明らかにまだ人前に出せる状態ではありません。
多くの人の目に触れる前に指摘したほうがいいと判断しました。
「あまりにも誤字が多いので、落ち着いてもう一度推敲してみては?」とやんわりお伝えしたところ、「具体的にどこですか」というような返事がありました。
……え、ええ? なんかちょっと怒ってらっしゃる?
まるで自分がミスするとは思っていないかのような。
しかも、こちらはそれを教えるだけで手間暇がかかるということをわかっていらっしゃらない?
うんざりしつつ、無視するのも感じが悪いかなと思ったので「ざっと流し読みしただけでも気付いた部分」を5、6箇所お伝えしました。
結局その作品は最後まで読み(読め)ませんでした。
なんか自分ばっかり損しているなと思った出来事でした。
●ケース4 同人誌の誤字は許されるのか
少し前に、ツイッターで同人誌の誤字について話題になりました。
いくつか気になった意見を書き出してみます。
・趣味なんだから好きにさせろ
・金を取る以上きちんとしたものを出せ
・料金は印刷代と送料分しか取っていない。同人誌にクォリティを求めるな
・校正はプロがやるもの。同人誌にそれを求めたらもっと高くなる
経緯としては、以前印刷したことがあるものを、作者さんが自分の保存用に再度印刷し、「そのうえで欲しい人がいれば」という条件で再販したようでした。
趣味なんだから好きにさせろ、という意見は私もおおいに同意します。
自分のみが見るのであれば、いくら誤字があろうとかまわないと思います。
また、料金についても「実費のみ」ということでしたら「金を取る以上きちんと~」という意見は的外れな気がします。
ただ、誤字脱字や日本語の誤りがあったのではなく多かったという点が気になりました。
人目に触れる前提で印刷しているのであれば、誤字脱字に気を配るのもマナーのうちだと思います。
創作をする方は、少しでも見やすいように工夫されている方が多いと思います。
フォントの大きさを工夫して読みやすくしたり、見やすいように構図を工夫したり。誤字脱字もそれと同じです。少しでも読みやすくするための配慮のひとつです。
好きな服を着るのは個人の自由です。
でも、最低限の身だしなみくらいは整えたほうがいいと思うのです。
●ケース5 ひらがなで書けば可愛いとでも?
「きょうはとてもさむくてうごくきがおきない」
「あさからなにもやるきがおきなくてぼーっとしている」
そんな感じのツイートを繰り返すフォロワーさんがいました。
ええ、もちろん読みにくいです。
しかも、中身も薄いというパターンばかり。
(小学生などではなく四十~五十代くらいの方です。病気があるとかでもなく、ごく普通の方です。本人曰く「変換が面倒」とのことでした。)
そこで私は、「ツイートの冒頭にひらがなが10文字以上続く場合は、それがどんな内容であっても読まなくていい」というマイルールを作りました。
しかし、他にも問題がありました。
その人はとにかく言葉の使い方が
漢字変換をしてあるときでも、わざとかと思うほど変換ミスが多くて、しかも頭を捻るようなミスばかり。訂正リプもあったりなかったりでした。
さらに悪いことには、日本人のはずなのにときどき日本語が通じませんでした。
うんざりしてサヨナラしました。
実はこのマイルール、今でも使っています。
ひらがなばかりずらずらと並んでいる場合は、読まなくていい。もし読んでほしいなら、読みやすいように書いてあるべきだと思うからです。
また、SNSで読みにくい文章を書く人は、そもそもコミュニケーションが目的ではないんだろうなとも考えています。
もちろん、演出でひらがなを使う場合は別ですよ。
詩とか歌詞とか、子どもっぽい表現にしたいとか、タテ読み・ヨコ読み・斜め読みだとか。
小説だと『アルジャーノンに花束を』とかね。あれは名作です。
また、事情により「ひらがなしか書けない/読めない」「難しい漢字は読めない」という方についてはこの限りではありません。
できるのに手を抜いているとわかった場合は読みません、という話です。
こちらもそういった文を読むのは面倒ですから。
●ケース6 私にはまったく利益がございません。
とある作者さんにお聞きしました。
「〇〇さんの小説を読んで気になった点を聞きたいですか?」
事前にこう尋ねるのは、いくつか理由があります。
・指摘など求めていない、という人もいる
・問題点を指摘されると凹んでしまう人もいる
・指摘箇所をまとめるのにも時間と労力を費やすので、あとから要らないと言われると(私の)時間が無駄になってしまうため
もちろん、聞きたくないのであれば「聞きたくない」と答えて構いません。こちらもそのためにお聞きしているのですから。
そして、私がお尋ねした方は「聞きたい」と答えたはずでした。
しかし、いざ指摘箇所をまとめ声をかけてみると、反応が鈍い。返事もあったりなかったり。最終的には二日ほどたってからようやく「こちらは気になる点を伝えていただいても構いません。」という旨の反応がきました。
……えーと?
なんで「聞いてあげてもいいですよ」っていうスタンスなんですかね?
こちらはあなたに誤字を教えることで得られる利益なんてひとつもありませんが。
さすがに「もういいや」ってなりました。
まとめに費やした時間や返事を待っている時間で他の方の作品をもっと読めたのになあと、返す返すも残念に思う案件です。
(結局この件で他にもいろんな弊害が出て、それは私以外の方にも広く及んでしまいました。)
ちなみに、私が「気になる点」をお伝えする理由は、私自身が自作の問題点を教えて欲しいからです。
●まとめ
結局のところ、推敲をするもしないも、作者の自由だと思います。
低クォリティのまま投稿するのも自由です。
作者の好きなようにすればいいと思います。
そして、読者には作品を選ぶ自由があります。
世の中には星の数ほど作品が存在します。
わざわざ推敲の甘い作品や誤字の多い作品を読む義務はありません。
合わないな、と思えば読者はいつでも読むのをやめていいのです。
それを、お忘れなく。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
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