第2話 私のこと
「と、こんな話が聞こえてきたの」私は妖精に云った。
カバンにつけるマスコットキーホルダー位の身長で、羽が生えている。
ラベンダー色の空気をまとって、私の顔の辺りを飛んでいる。
私には妖精が見える。
小さい頃に大病を患い死にかけて、手術の時に現れた。
大丈夫、助かるわよ。そんなことを云っていた。
それから三十四歳になる今まで、ずっと私の側にいる。
「人の縁を切るなんて悪質な奴、聞いたことある?」私は妖精に尋ねた。
「そんな噂は聞いたことが無いけれど、異世界にはいるのかもね」妖精は答えた。
そうか、妖精の国は基本、良い人(?)しかいないんだろうな。私は、そう自分を納得させた。
私の名前は中野
現在会社員で、そこそこの給料を貰っている。
両親と三人で実家暮らし。姉が一人いて、関東へ嫁いでいった。
実家暮らしの内に給料を好きなように使って愉しもう、そう思い続けて十年以上。
未だに独身だ。
今日は予定の無い休日で、メイクの練習をしている。
最近周りが結婚ラッシュで焦っている。少しでも自分をよく見せる為にこっそり努力している。
同年代の子は、妊活なんて云い出している。
私は子どもが欲しいと思ったことが無い。今までは「何で皆焦っているんだろう」とさえ思っていた。
しかし最近、芸能人も結婚出産ラッシュで、私も子どもが欲しくなってきている。変に流されやすい。
自分が子どもを育てることは想像出来ないけれど……産まれたら多分、それなりにやるのだろう。
「子どもが欲しいの? 今までそんなこと云ってなかったよね」妖精が云う。
「うーん、このまま一人は嫌だし老後が寂しいのも嫌だし」私はそう答えた。
「嫌なことを避ける為に子どもが必要なの?」妖精が云う、私は返せなかった。
世間は結婚しているのがある程度当然で、独身だとちょっと珍しいみたいな目で見られる。それは少し前の話だとは云われるけれど実際に周りを見ると、結婚しだす人が多い。
子どもがいないと変に気を遣われたり、地域のイベントに参加しづらかったりするし。
デパートで愉しそうなイベントがあっても、周りが家族やカップルで来ているから一人だと肩身が狭くなる。
おひとり様って単語、まだ生きてる? それとももう浸透しすぎているのかな。
どれが正解なんだろう、私はぽつりと呟いた。
「人生に正解なんてないよね、不正解はあるかもだけど」妖精が云う。
私の正解は何だろう。パートナーが欲しい。
姉は結婚して遠くへ嫁に行った。両親が死んだら私は一人だ。それもありパートナーが欲しい。
けどパートナーと死別したり、ⅮⅤを受けたりしたら?
いや、家族団らんの文字がぴったりの家族を作れるかもしれない。
「また京華の意味の解らない自問が始まった」妖精が呆れて云った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます