第30話

「静粛に。これより、超愛好会会則第13条2項の原則に基づき、超愛好会極東支部異端審問会省略超裁判を開廷します。被告人原告人はこの裁判における発言はすべて真実であることを誓ってください。」


「異議あり!裁判長、裁判長と原告人が同一人物である可能性があります。この裁判における判決に裁判長の私情が持ち込まれないことを保証できません。」


「被告人、その心配はいりません。なぜならばこの超裁判における裁判長は琥珀、超愛好会会長火上萌なのですから。」


「異議あり!裁判長、一人称が抜けていません。」


「異議なし!異議なーし!とにかく月山君は有罪です。罪状は覗き、下着泥棒、乙女の純情を踏みにじった罪!これからは一人称を名前で呼ぶように。」


それは何だ、自分の一人称が恥ずかしいと思っているのか。恥ずかしいと思っていてそれを私に強要してくるのか。


「裁判長意味が分かりません。それにこの場合私の罪に対する判決は、1年間の下着洗濯、着用の手伝い及び、整備保管が常識的だと思われます。」


「そんな変態紳士界隈の常識を擁護はしません。洗わせません、着用させません、整備保管させません!」


「え、洗わないし着用しないし整備も保管もしないんですか?裁判長、この気持ちを何と表せばいいのか分かりません。」


「だから洗ないって言ってるでしょ!ってちがーう!!」


 土中さんに落ち着きを取り戻してもらい、ようやく話の本題に入る。全く記憶を失ってからというもの、意識まで失う機会も多くなってしまった。ただそう感じているだけなのかもしれないけれど。


「んで、結局月山君はどうして覗いたのかな?ただの興味本位?」


「もちろん興味もあったけれど、それは女の子の恋路にというわけじゃない。私は土中さんの恋路に興味があったんだ。」


「ふっ、ふふーん。琥珀のこここっこいっじ、に興味があったんだ。へぇー。そっ、それでえっと…どこまで見た?」


 ここで全て正直に伝えてしまうべきなのだろうか、しかしもうすでに、この子も知っている通り私は私ではない。そんな私にそれを伝える資格なんてあるだろうか。いや、きっとこれは言い訳だ。


「例の超極秘ページ、あれを途中まで。最後までは見れなかった。」


「う…うぅぅぅぅうあああああああん見られた!見られてしまった!もう生きていけないよ、どうしてくれるの月山君責任取って!!」


この責任取ってという言葉はとてつもない破壊力だった。


「それでその…、あそこに書かれてる彼って、誰のこと?」


「もう、もうもうもう!なんでそんなこと言うのさ月山君。どうしていつも構ってくれなかったなのに今、今になってそんなこと言うのさ!本当はそんな性格だったんなら、どうして琥珀とお話とかお遊びしてくれなかったの!?ねえ、なんでよ!なんで琥珀のこと忘れちゃったの…。」


 私の発言は卑怯だったかもしれない、というか卑劣だ。勝手に人を振り回し、勝手に人の秘密を暴き、立場を利用して供述させる。なるほどあの超極秘ページに書かれた嫌な奴は、時を経てもっと嫌な奴に変わっていたらしい。


 責任取ってという言葉もとてつもない破壊力だったが、女の子の涙には言葉も失った。そして強烈な痛みだけが胸に残った。でもだからこそ、私はこの責任を取らなければならないし可能ならば、許されるのならばとってあげたい。


私は一度死んでしまったが、死人に伝えたかった心を、痛みを汲んであげることが私の責任に思えた。だからこそ私は、

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