第27話

「つまらない、本当につまらない男だわ月山君。あなたには夢と希望とお宝を持ってジャンプするような魂は無いのね。見損なったわ。」


そんなとんでもない魂は持ち合わせていない。しかしまあお宝はなかったようでよかったが、何の進展もなかったのだろうか。


「あなたの部屋は教科書ばかりね。お宝がなかったことだけではなくそこよ。何かしら超常現象の本なりなんなりあると思っていたのだけれど。」


「そんなものが誰の部屋にでもあるものだと思わないでください。んで、それ以外には変わったところはなかったですか。」


先輩は少し残念そうな顔をしていた。そんなにも超常現象の本がなかったことが衝撃的だったのだろうか。


「いえ、特に変わったところはなかったけれど、まあ高校一年生なんて中学生、中学生なんて小学生と大して変わらないのだから、他に本を読んでいなくても不思議ではないわね。」


それ何一つ小学生から進歩してないだろう。先輩は昔から本を読んでいた人のようだし、そんなことを言っていてもおかしくはない?のかもしてない。


「とりあえず、この遠征での調査結果を報告するわ。まず第一に、この家には個性がない。」


「それは私も思いました。私の個性といえるものが何一つ無いって。」


「それもそうだと思うけれど、私の言っていることはもう一つ、家としての個性がないのよ。例えば、学校ね。学校のクラスはそれぞれ同じ形をしているけれど、中で暮らす生徒たちによって教室の雰囲気や、様子まで変わってくる。


 それと同じように写真が好きな人、思い出を大切にする人が多い家には自然と写真が多かったり、スポーツが好きな人の家にはスポーツ用品や関連グッズ、極端な話、日常的にDVの横行する家ならば壁に穴の1つや2つ開いていてもおかしくないでしょう。


 あなたの家にはそれがない。まるでモデルルームにそのまま引っ越しましたっていう雰囲気がするの。」


 それはつまり、どういうことなのか。家族一人一人がほぼほぼ無個性だったということなのか。それとも冷え切った家庭だったということか。こうして先輩に言われて前にも考えたようなことを再び考えた。


「そういえば1つだけ個性全開の部屋があったわね。ああ決してあなたのお宝部屋のことではないの。お母様の部屋よ。」


そういえばそんなことも先輩は言っていた。何歳児の部屋だとかなんだとか、そんなにもあの部屋は不自然だろうか。


「これは私の勝手な憶測というか偏見でしかないのだけど、ぬいぐるみをたくさん持っている人は何というか、寂しがり屋さんの気がするのよね。

 そうなると写真だってたくさん持っているというか飾っているものだと思うの。あくまでもただ私個人の考えなのだけど。」


 どうやら実体験ではないらしい。しかしまあ、確かに私もぬいぐるみをたくさん持っている人は寂しがり屋の雰囲気があると思う。


 先輩の考え方にも確かに同意できるところはあるが、写真を撮れないからこそ寂しがり屋が治らないということもあるのではと、私個人としても考えた。先輩と同じく実体験ではない。


「まあお宝がなかったのは残念だったけど、楽しかったわ月山君。それに、あなたも他の人の意見が聞けて少しは研究も進んだかしら。」


「サンプルが適切ではなかった可能性がありますが、確かに参考にはなりました。一様感謝しています。」


一様は余計といいながら先輩が家の外に出ていった。

「さ、帰りましょう月山君。ちゃんと鍵は閉めていくのよ。」


いや私はすでに自宅に帰宅しているのだが、何を言っているのだろうかこの先輩は。


「なにをキツネにつままれたような顔をして、あなたは兎じゃないのよ。いやある意味では正しいと思うけれど。さ、帰りましょう。」


「あはい、気を付けて帰ってください。どうもありがとうございました。」

「だ・か・ら、私を家まで送らせてあげると言っているの。さ、帰りましょう。さあさあさあ!」


 これ以上先輩に属性が付与されていくと本当に困る。中二病、ツンデレ、お姉さん略して変態な先輩なんて面倒なだけだ。そんな送ってほしいのならば素直に言ってくれればいいというのに。


これ以上先輩が多重属性持ち狂キャラ枠になられると困るので途中まではついて行くことにした。時刻はまだ17時ごろだが、この時期の17時は以外と暗いのだ。

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