第22話

「森先生、遅くなりましたが入部届です。よろしくお願いします。」


翌日、担任の先生に入部届を提出する。まさか自分がこんな変な愛好会に入会するとは思ってもいなかったが。


「はい、確かに受け取りました。それで部活動は、やっぱりオカルト研究会ね。」

「あれ、超愛好会とかいう名前じゃなかったんですか。私そうやって書いちゃいましたけど。」


どうやら超愛好会という名前は先輩が勝手に言いふらしている名前らしい。全くなんて恥ずかしいことを、おかげで私も恥をかく羽目になった。


「大丈夫大丈夫、このままで問題ないですよ。それにしてもまあ会員が3人集まってよかった。せっかく顧問をやってあげたのに、誰も会員が集まらずに活動できなかったら可哀そうだものね。」


なるほど先生と先輩のつながりはこういうことだったのか。


「それで月山君。あなたはこの愛好会で何を研究するの?」

「え、それ先生にも言わなきゃダメですか。割と恥ずかしいんですけど。」


「大丈夫大丈夫、私これでも先生ですから。月山君みたいな健全な男子高校生の割と恥ずかしいお願いなんて聞きなれてるもの。早く卒業したいけど素人は嫌だから頑張って彼女作りますとかそんなところかな。それとも彼氏だったりする?」


先生がこんな下世話な勘繰りを入れてくるとは思ってもいなかった。でもだからこ

そ、あの愛好会の顧問を務められているんだろうなと。


「今のは聞かなかったことにしておきます。えっと、私は私について研究します。」

「ああ自分探し系ね、まあ確かに進路とかにも影響するし、いいんじゃないかな。」


絶妙な勘違いをされている気がする。自分探しとか恥ずかしい言い方をされてしまっているが、実際間違っていないので否定もできないところがもどかしい。


「まあとにかく、これからよろしくお願いしますね先生。」


 とにかくこれで私も愛好会の会員になったわけだ。会員になった以上部活には参加しなければならない。そういえばこの部活動が基本週何回あるのかだとか、活動時間は何時までだとか、そういったことは一切聞いてなかったことを思い出す。


 それもこれも本来最初に聞かされるであろうことだが、先輩が先輩では仕方がない。部室に入ろうと扉を開こうとするが、開かない。どうやら今日が休みの日だったのかもしれない。

 そういえば先輩や土中さんの連絡先を知らないから、確認の使用もないではないか。全くどうしたものかと。


「あら、また不審者を発見したわ。しかもこの前の不審者にとても良く似ているわね月山君。でも残念、この部室の中に乙女の標準装備は格納されてはいないのよ。」


毎度毎度、この先輩と会うたびに煽られることになるのだろうか。


「いや先輩今日部活動あるんですか。てっきり誰もいなかったからないものかと思いましたよ。」


「いいのよ月山君。誰もいない日を狙って秘宝を狙っていたことはお見通しなのだから。わかっているでしょう、我が超愛好会は年中無休週休二日制だって、説明したわよね。」


 ちょっと突っ込みどころがありすぎて、何を言っているのか理解できない。年中無休なのか週休二日制なのか、それとも交代して土日まで活動するつもりなのか。というか少なくとも愛好会のくせに週5もあるのかここは。


「先輩、今までお世話になりました。私部活辞めます。」


「何を言っているの月山君。私、豚のお世話は卒業するまできちんとしなさいって普段から言ってるでしょう。そんな私が卒業するまでお世話を放棄するわけないじゃない。」


それは何か、自分のことをブタだといっているのか、そして世話までおしつけてきているのかこの先輩は。


「まあ確かに先輩は策の中に入った方がいい部類だと思いますけどね。ていうかそうじゃなくて、この部活週5もあったんですか。聞いてないんですけど。」


「だって聞かれていないもの。聞かれていないことに素直に答えてあげる大人はいないのよ。それと週5ではないの、週5+遠征よ。」


 冷静に考えてこの愛好会、そこまで毎日活動するようなことをしているだろうか。絶対こんな毎日やる必要ないだろう。しかしまあお祭り男たちが逃げっていった理由もわかる気がした。


「よかったわね月山君。これから週5+αで美少女と同じ教室にいることができるのよ。全くあなたは幸せ者ね。人が人だったらお金だって払う人もいるのではないかしら。」


今すぐこの幸せを先輩に投げ返してやりたい気分だった。


「まあいいです、もういいです諦めましたから。んで先輩、具体的に先輩はその超能力者について、どうやって調べているんですか。」


「ふふふっ。もう、全く素直じゃないのね月山君。そんなに私の魔道研究が知りたかったのなら、早く言いなさいな。我が同胞たる月山君には特別に見せてあげるわ。他言無用よ。」


別に誰かに何か言うつもりなんてない。逆に言ったら言ったで恥ずかしいだろう。あと別に他言できないわけではないから。


「そうね、私の場合最初はご本を読んでいたわね。それからテレビなんかでも超常現象に関することは何でも見ていたわ。」


「んでも先輩、超常現象以外にも神話とか歴史とかもレポート作ってましたよね。あまり関係はなさそうに見えましたけど。」


「そんなことは無いわ。超常現象の中には魔法だとか錬金術だとか、そういったものも含まれている。ならばその歴史を勉強するのは当然のこと。それから歴史を学ぶならば神話や宗教も絡んでくる。ならばそれも学ぶべきだと思わないかしら。」


要するにこの人は勉強が好きなんだろう。そうでなければここまでするものか。それともそれだけ超常現象が好きなのか。それともどちらもか。


「でもあなたの場合、参考になるご本のようなものはない。なんせ自分探しですものね。自分のことを書き記したご本でも残してない限り、ご本で研究はできないわね。」


「なんでそう自分探しとか恥ずかしい言い方するんです先輩といい先生といい。」


「そんなものあなたを辱めるために決まっているでしょう。そういえば辱めるで思いだしたのだけれど、あなたアルバムとかないのかしら。もしくは写真とか。」


あの家に自分を証言してくれるようなモノはどこにも見当たらなかったが、いい機会だし調査がてら帰宅しよう。


「もしかしたらあるかもしれないので、先輩今日はお先に失礼します。」

「何を言っているの月山君。私も遠征に行くわ。」

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