第17話

「ふふふっ。やはり再び現れたわね我が同胞よ。さあ、今こそ契約を交わすとき!!」


「そのくだりは前やりました。で、土中さんはまだ?」




「彼女は今日アルバイトよ。それにこのくだりは以前とは違うのよ。ふっ、の数が1つ多いじゃない、3度目だから3回つけてあげたわ。ふっだけに。」


「あじゃあ校外学習ってのはなしなんですね。んじゃ帰ります。」




「何言ってるの、今から行くのよ遠征に。両手花ではなくなったけど、途中に拾っていくから大丈夫よ。はい、出て出て。」




 先輩に追い出されるようにして、私たちは部室を後にした。


にしても土中さん、昨日は一緒に行くみたいな雰囲気だったのにアルバイトだったのか。別に、デートだとか、両手に花だとか、そんな言葉を意識していたわけではない。私は今脅されてここにいるのである。




「んで先輩、遠征って言いますけど、具体的にどこに何をしに行くんですか?」


「ん?ドコでナニするかですって?もうホンといやらしい。しかも具体的にって、いやらしいの二乗って感じね。」




「まあ確かに先輩の頭の中と私の発言を曲解したら、先輩×私の頭の中でいやらしいの二乗ですね。そんなに掛け合わせたかったですか。」




「ずいぶん素直になってきたじゃない。素直にたってきたの方が正しいかしら。きっと琥珀ちゃんのおかげね。これから遠征中、立って前を歩ける度いいけど。ふふふっ。」




先輩はいつにも増して悪魔的な笑いを三つ重ねる。そしてもう一度質問する。




「んでともかくどこに行くんですか。今度は下ネタなしで。」


「神社よ神社、そこであなたに合わせたい人がいるの。」




 口調からしてどうやら下ネタなしの真面目な回答だ。神社で合わせたい人がいる。


あいにく私になってから神社に行った記憶はない。ということはそこには私に大きく関係があるか、それとも全く無関係かどちらかだ。学校を出て、大通りを進んで、さらに駅の方まで進んで…。




「先輩電車使うんですか。そんな遠くまで行くのか。」




「ふふっ。残念ながら正規部員でないあなたには交通費が部費から支給されません。でも大丈夫!今ならこの契約書にサインするだけで、美少女と定期的にデートに行けるし、交通費も出ます。これはもう契約するしかないでしょう!!」




「いや金はあるから大丈夫ですけど、てかそれ入部届じゃないですか、下さい。」


「いいわ、あげましょうあげましょう。でもその前にここに記入してもらうけど。」




「だからそれじゃ意味ないでしょうって。もういいです、とりえずどこまで行くんですか?」


「ここから3駅くらいね。そこからバスで神代神社前まで行くわ。」




なるほど目的地はその神代神社らしい。その神社の名前に聞き覚えはなかった。というよりか無自覚だった。まあそんな名前の神社なんていくらでもあるだろうと思っていた。




「さ、降りましょう。ここからバスに乗るわ。」




 学校近くの、自宅近くの駅はそれなりに栄えている印象だったが、下りの方に3駅と進んだだけでかなりその町並みは田舎のように見えた。というよりか寂れて見えた。さらにバスは寂れた街を過ぎていく。目的地の神代神社前につく頃には、あたりは森の中だった。




「先輩、目的地はこの神代神社でよかったんですよね。私ここに来た覚えありませんけど。」




 そういうと先輩は少し不思議そうな顔をした。きっと私がこの場所を知っていると思ったのだろう。なんせ合わせたい人がいるということなら、私がここを知っていて当然だからだ。




 しかし先輩は私が私でないことを忘れていたのだろうか。この先輩のことだし、私のことを忘れていても無理ないかと。バス停を降りてすぐ目の前に、神代神社はこちらといった看板を発見する。先輩と看板だよりに歩いていくと、山道の中に鳥居を発見した。ここ夜になったらとんでもなく怖いだろうなと。




「遅いわね、そろそろ迎えに来る頃だろ思うのだけれど。」




 先輩がそう言ったのを聞いてかいまいか、鳥居の奥から地鳴りのようなものすごい音が聞こえてきた。どんどんこちらに向かって音が近づいてくる。

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