第14話
「そうだ!とにかくさ、まずは体験入部してみようよ。話はそれからでもいいじゃない。」
「今日ははじめからそのつもりだったんだけど…。まいいや、じゃあ普段土中さんと先輩は何をしてるのか教えてくれ。」
ようやくまともに愛好会の話を聞けた。といっても概ね先輩の言っていることと変わらなかったけど。
「まあともかく会長が言うには、んん。「超愛好会会則第一条、会員はみな世界の真理を求め自由に探究し、精進しなければならない。以上だ。では君に問おう、あなたは世界に何を求める?」って、大体の人がこの質問に答えられず、帰ってきたんだよー。」
単にあの先輩がお祭り男が嫌いなだけじゃないのか?
「じゃあ土中さんは何を求めてるの?」
土中さんはやっぱり来たかといった顔をして、やがて諦めた声で答えた。
「琥珀の求めるものは…恋…だよ。」
なんとも乙女チックな回答だ。別に恥ずかしがることではないと思う。実際私にも恋という概念?現象に関しては全く記憶がないため一切合切共感できない。これはきっと私に関して大きく関わるものであったためだ。決して経験がないわけではないことをわかってもらいたい。
「それはあれだ、もったいないことしたね。だってそれなら運動部とかのマネージャーになればよかったじゃん。」
「いいのいいの。それに琥珀の好きな人は体育会系じゃないし。むしろ文科系だから。」
「んで具体的に活動としては何してるの?その人のことを調べてるとか、合コンみたいなことをしてるとか、実際に誰かと付き合ってみるとか?」
「そんな、さすがに好きな人がいるのに他の人と付き合うなんてことできないよ。だからまあ、活動としてに含まれるかわからないけど、その人のことを調べたりとか、友達の恋愛話を聞いたりはする。んでこういうのにまとめてる。」
土中さんはA4のファイルを見せてくれた。どうやらレポートを書いているらしい。なかなか本格的で、内容も濃いものばかりだ。え、嘘。今どきの高校生ってこんなもんなのか。
正直軽く引くようなものまであるぞ。ページをめくればめくるほど、心臓の鼓動、血流は加速して一点に集中する。なるほど官能小説というものはこんな感じのものなのだろうか。読者にいかに文字だけで刺激を与えるか。考えてみたらこれはとてつもなく難しい技術なのではないか。
音楽のように構成要素がたくさんあるわけでもなく、芸術のように見た一瞬だけで凄みを感じさせれるわけでもない、そうでもないのに小説は文字だけで読者の心を魅了して、他よりも長く魅了し続けなければ最後まで見てもらえない。それも音楽以上に、映画以上に長い時間を要する場合も多い。全く部が悪いとは思わないだろうか。
「土中さん将来小説家になりな。絶対売れるよこの官能小説。」
「官能小説じゃないよ!ただのレポート。これでレポートレベルとか、本当に書いたらどれだけエッチなんだろうとか。そんな想像バレバレだよ、琥珀テントまで建てた覚えないから。でもありがとう、とってもうれしい!」
土中さんはまるで長年の苦労が報われたような表情を浮かべた。その意味を理解することはできず、自分のことがバレバレだった恥ずかしさに身悶える。私は急いでページをめくって…と、超極秘と書かれたページに差しかかり、ページをめくる手を止めた。というか止められた。
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