第11話

「ふふっ。やはり再び現れたわね我が同胞よ。さあ、今こそ契約を交わすとき!!」


「ぐっ。帰宅部全国代表の血が騒ぐ!これはもうあらがえない。ハッ、そうか私はすでにこの血に契約を交わしていたというのか。」


「さあここにサインを!さあ、さあ、さあ!!」




 顔面に食い込むほど食い気味に入部届を先輩が押し付けてくる。やはりここに来ざるを得なかった。別にぃ、先輩がボッチで可哀そうだとか、逆にボッチで自分が可哀そうだとかぁ、同じ闇属性にひかれたとかぁー?、初めてまともに?美少女と話せたとか?思ってたわけではない。最後の方の疑問形も照れ隠しではない。




「とりあえずこれは破り捨てておいて、ってこれ記名してあるじゃねえか、しかもサインペン!これしかも先生からもらったやつ!」




「ふふっ。そう!これはあなたの持っていた入部届よ。そして闇属性のあなたは光属性の先生とは相性が悪い。最悪といってもいい。そんな人からもう一度入部届をもらいに行くことなんてできるのかしら。」




「あいいです、ついでに昨日あったこと全部話しますから。」




「ふふっ。あなた、まだわかっていないのね。そんなことをしたらあなた、退学どころじゃすまないわ。刑務所ね。だから私が昨日先生に、「さっきの悲鳴は違うんです、別に部室の前をうろついている不審者が出たとか、その不審者に下着を盗られたとかそんなんじゃないんです、ただゴキブリが出ただけなんです。と、弁明してあげたのよ。」




「それは弁明じゃない、私に対する脅迫だ。」




「いや広辞苑だと弁明よ。自分の立場や事情をはっきり述べること。」




「新明解だと違うだろ。自分の正当さを証明しようとして、その理由・事情を説明すること。自滅ですらない、爆撃してんじゃねえか。さては今日クラスなり学校なりで、いつもは珍しい動物を見るような眼差しが、汚物を見るような眼差しに変わったのもあなたのせいかッ。」




「そうあなたのせいよ。それと大丈夫、珍しい動物からでも汚物は出るもの、大して変わらないわ。そんな状態で職員室にでも行ってみなさい。捕獲されるわよ。動物園には帰れないわ。わかった?あなたはすでに墜ちている。深淵への誘いから逃れることはできないの。さあ、私と共に新世界へ旅立ちましょう。」




「先輩それ以上トリップしたら私と一緒に刑務所行きですね。あ新世界ってそういう。」




まさかここまで仕組まれているとは。さすがおねいさん、可愛い子ほど性格は可愛く見えずらくなってしまうのは悲しいものだ。




「はあ、もういいです。先輩私の青春奪ったからには、先輩の青春で贖ってください。」




「何を言っているのかしら。あなたはもう十分に青春したはずよ。いい、パンツをはいていない女の子と共に時間を過ごした。これはもう既成事実みたいなものでしょう。そんなに下ネタばかり挟まないで、私そんなに胸は大きくないの。」




「いいのか?言葉じゃなくてかけはじめっぞ。遺伝子かけはじめっぞ。」




「そんなネバネバどろどろしたものなんて、ラーメンと一緒に食らってやるわ。とろろみたいなものでしょう。それともスライムレベルかしら。だからそんなに淡泊な性格なのよ。いやね、人間関係って。」




「いや誰も人間姦係の話なんてしてないです。それよりもう真面目な話をしましょう。」




強引に話を終わらせて、愛好会について質問する。




「基本的な活動内容は、会員がそれぞれ超常現象について調べ上げ、この世の不思議を追究する。そう、超常現象研究会とは神や精霊や、その他聖獣、悪魔や霊体といったこの世の不思議、すなわち心理を探求する愛好会。未知を知りたいと思うこと、それすなわち未知を愛すること、すなわち哲学、フィロソフィーなのよ。」




「要するになにか超常現象について調べることが活動内容なんですね。具体的に何か活動実績はありますか。」




「なんて元も子もないことを。これだから候は早漏でそうろうですか。まあいいわ、活動実績ね、んー文化祭で発表とかそのくらいしか考えてないわ。あと合宿とか行きたいわ。」




「考えてないって、今まで活動してなかったんですか。」


「実績どころかようやく活動できるようになったのよ。それなのに誰も会員があつまらないなんて悲しいじゃない。おかしいわ。どうしてお祭り男ばかり集まってきたの?私は闇の住人だというのに。」




 先輩はいろいろ自覚した方がいいと、いや自覚しておいてこんなことを言っている可能性も大ありだ。また騙されるところだった。そうか、ここは会員が集まらないというかお祭り男ばかりで結果的にほとんどなくなってしまったのか。んで新入生だというのに2週間近く学校を休んでいた人間がいると情報を得た。きっと闇属性だと、闇属性にならざるを得ないと踏んで。




「なるほど先輩はなかなかいい人間してますね。そんな人と同じ愛好会に入会するなんて恐れ多い。遠慮しておきます。」




「あなたの顔を見るだけでほかに根拠はないのだけれど、あなたは何か勘違いをしている。あなたをここに呼んだのは私じゃないのよ。」




タイミングを見計らって、誰かが扉を開けて入ってきた。その誰かは私の目の前に立ち、




「久しぶり、月山御影君。琥珀のこと、覚えていますか。」

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