第10話

「あなた、やっぱり変わってるわね。さすが我が同胞だわ。月山君。」


「……、どうして名前を知っているんですか。」


「じゃああなた、やっぱり月山御影君なのね。理由はニュースを見たからよ。」




ニュースといわれて思い当たることは1つだけだ。


「ですがなんでその人物が私だと分かったんですか。」


「私、生徒会長だから。」




 生徒会長というものは生徒一人一人の顔と名前を憶えているものなのだろうか。




「あなたの担任の先生から教えられたのよ。それに朝学校に立っているの、気づかなかったかしら?朝挨拶しているだけでも意外と顔を覚えるものだわ。それがあなたを知っている理由。残念でしたー、ヤンデレ系幼馴染じゃなくてー。」




ヤンデレ系幼馴染はめんどくさいだけだろうと。あの先生は先生なりに私に配慮してくれていたようだ。




「で、本題はここから。あなた、この愛好会に加入しないかしら。」


「お断りします。」


「あなた絶対におかしいわ。だってこんな美少女と一緒の愛好会に入れるのよ。愛好会よ、愛好会。言葉の意味を考えなさいな。なんか甘美な響きじゃないかしら、愛・好・カイ。」


「先輩が何を言っているのかわかりませんが、少なくとも下ネタ大好き女子ということだけはわかりました。」


「そう、そこ何よりも重要だから覚えておいて、それ今後に関わることだから、この愛・好・カイの外では下ネタ禁止だから。」




この人に羞恥心はないのだろうか。




「ていうかここ、察するにオカルト研究部的な奴ですよね。」




「いいえ、そんな巷ではやっているヤリサーみたいな名前の愛公開ではなくって。んん、超常現象による、超常現象を愛し好む者のための、そうだ京都いこう会…略して超愛好会へようこそ!」




「帰ります。ありがとうございました。」




「もういい加減にしなさい。あなたはこの愛好会に導かれたの!もうこの愛好会以外居場所がないの!会員がいないの!詰みなのOK?このくだり長いの分かってるOK?またパンツ盗むつもりでしょ、エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」




「で結局オカルト研究部的なのなんですね、私全く興味ないんですけど。それとエロ同人みたいにされたいんですね分かりました。」




「ふふふっ。あなたはもう2度とパンツを盗むことはできない。なぜなら私はもうあなたの前ではパンツをはかないと決めたから。はかないパンツ人生だったわ。私、これから何にも縛られずに生きていくの。」




「じゃあパンツはかせて帰ります。」




「やめて、私もう何物にも縛られたくないの。生まれたときから私たちはパンツをはくことを強いられてきたの。私から自由を奪わないで。やめて、手をにぎにぎしながらにじり寄ってくるのやめて。」




パンツをはいて冷静になった先輩は、ようやく真面目に愛好会について語った。




「要するにここは超常現象研究会、あなたの言ういやらしいオカルト研究会によく似ているわ。よかったわね、高校生の時はオカルト研究会でしたというだけで、ドン引きか大人だと思われるようになったわ。もう卒業したようなものね。」




「で、どうしてその研究会に私を誘ったんですか。」


「あなたは私の同胞だからよ。」


「その同胞ってのは何なんですか。ただの中二病だと思っていました。」




「あなたはあなたじゃない。私も同じ。深くは知らない、だから知らないでいい。ただ何にせよこの学校は1年生強制入部よ。何かしらの部活に入部する必要があると思うわ。あなた、中学校では何をしていたの。」




この人の言っていることが私にはわからなかった。ただ質問に答える。




「中学の時の部活動は帰宅部です。毎日いかに早く帰宅するかを部員と競い合っていました。全国大会にも出たことがあります。」




「そう、全国大会経験者なのね。ちなみに何部門かしら、FPS?格ゲー?けど残念。うちの学校はあなたほどの猛者、というかムサに見合うほどの帰宅部ではない。もっといい活動がここにある!」




この学校にERPG部門がないのが残念でならない。


「だからほら、まず体験入部だけでもしていきなさいな。きっとあなたのためになる。これは同胞としてだけではなく、生徒会長としての言葉よ。」




私の思う生徒会長は、ただ名前だけ書いてあるものだと、きっと学校内を暗躍して、暗躍しすぎてどうにも活動していないように見えてしまう可哀そうな、実際可愛いだけの人だった。この学校の生徒会は暗部ってわけではないのか。まあ暗部ではあるだろうけど。




「じゃあまた明日、あなたは必ずやってくる。」




 全くこの学校の帰宅部が低レベルで残念だ。最後にこんなようなことを言われて余計またあの部屋に行く気が失せる。気は失せるけれど、しかし気になることは多い。




 あの人はどこまで知っているのか、そして私と同じとはどういうことなのか。もしも再びあそこに来させるためにあの人が伏線を張ったのならたちが悪い。しかしあの人の言うように強制入部なのだから何かしらの部活に入らなくてはならない。




 あの愛好会はその点会員もいなそうだし、幽霊になっても許される部活動だろう。いや幽霊になったら研究対象になるのか。ほかの部活動も見てみたいが、なんせ私はもう食糧庫扱いされるに違いない。となると女子のいる部活動に行ける気もしない。運動もしていた形跡もない。男子の友達もいない。


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