4話 引きこもり少女と苺大福

なにこれ?こんな、小物で機嫌なんて直したりしないんだから!」


マシロ憤慨して言い放つ。


「そう言わないでくれ。」


「これは、苺大福と言って食べると幸せな気持ちになれる食べ物だ。」


「なにそれ、イチゴダイフク?おいしいの?」


マシロは少し、興味を持って尋ねる。



「そりゃな。美味しいのなんのって」


「この苺大福を食べたら嫌なことなんて忘れてしまうさ。」

多少オーバーに言ってマシロの機嫌を取りに行く。

「よし。今、コーヒーを淹れるよ。」


「ちょっと、待っててな。」


そう言い、オレは簡易テーブルを囲み座ってたとこから立ち上がりキッチンの奥へとマシロのコーヒーを作りに移動する。


キッチンでコーヒーメーカーでマシロのコーヒーと自分のブラックコーヒーを淹れてマシロが待っているリビングへと戻る。

マシロは、白銀に輝くロングヘアーの毛先をクルクルと回して暇そうにして待っていた。

「よし、できたぞ!」

「はい。ブラックコーヒー。」



ことりと、ブラックコーヒーをが入ったマグカップを食卓のマシロのところにコトリと置く。


「えー。ミルクも砂糖も入ってないなんてー」

「苦くて飲めないよー。」

そう、ボヤくマシロオレはまぁまぁと諭す。

「騙されたと思って苺大福と一緒にに飲んでみな。」


「じゃあ、食べるね。本当に美味しいのかな?」




そう言い、マシロは薄ピンク色の苺大福を小さくかぶりつく。


「ん~。柔らかい!それに甘い。」


するとマシロは嬉しそうに目を細めて苺大福を味わう。


「おいしいー。」


「あれ?中からなんだか赤いのが出てきたよ」

薄ピンク色の餅の中には、こし餡が詰まってる中から出てきた1口大の果実を見て、訊いてくる。

「それは、苺だよ。」


「イチゴ?」


マシロは、なにそれ?といった感じに頭を傾げる。


「ベリー系の凄く甘い果物なんだ。大福と一緒に食べてごらん。」




そうマシロを促し、マシロは苺大福丸ごとを一緒に頬張る。



「んっんん~甘い、美味しい。」


「甘いのに程よい酸味があって、これがまた、おいしい!」



「だろ?!」


「ブラックコーヒーも一緒にのんでごらん。」



「ええー合うのほんとにー、不味そう。」

と渋るマシロに、騙されたと思って飲んでみーとオレは言う。


マシロは、渋々、コーヒーを1口飲む。



「あっ、なんだか、ちょうどいい。」


「そうだろ、大福の餡子の甘さがコーヒーの砂糖の代わりになってくれて良く合うんだ。」



進藤は、マシロが苺大福とコーヒーを味わっている横でそう、解説してくる。


「はー...おいしかったー。」


マシロはしっかり満足して言葉を漏らす。



「ねえ、もうイチゴダイフクは無いの?」



「ごめん。1個しか買ってないんだ。」



「そっかー。それは残念。甘くて凄くおいしかったのになー」



マシロはしょんぼりして残念がって言う。



「それじゃあ、また買ってきてよ!」



「それは、別に構わないけど。」


「でもなー...」

俺が買ってくるのは、簡単だ。

だけど、このままではマシロの引きこもり生活に拍車が掛かってしまって彼女の為にならない。


「えっ?いいでしょ!買ってよー!」

マシロはそう駄々をこねて拗ねてくる。


「いいか。部屋に引き籠もってばかりいたらダメだろ。」



「この世界の美味しいものは自分の目で見てで知っていくべきだ。」


オレは、そう言いマシロを優しく諭す。



「ひとまず喫茶へ来てみないか?」



「喫茶は、学校や社会へ出ていけない人の社会の学校みたいなものなんだ。」

「ふーん。」

マシロはイマイチ分かってないような気の抜けた返事をする。



「いいか、マシロ。喫茶は社交の場であって、なにか情報も手に入るかもしれないぞ。」

「元のさ世界に戻る手掛かりのことだね。」

「そうだ。」

と頷く。

「わかったよ。このまま、アパートの中だけにいても先は見えないし」



「元の世界に戻れないままだからね。」

「わかったよ!」



「なんだ?妙に聞きわけがいいな-それじゃあ行くか!先に進む為に。」


そしてオレ達は、気持ちを新たに一歩、踏み出すのだった。


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