2話引きこもり少女とハンバーグ弁当
扉の向こうに締め出されてしまってから、なんとかマシロから誤解を解いて中へと入れて貰えた。変なことをしたら追い出すという条件付きで。オレのうちなのに......
そうして、リビングの食卓をマシロと囲むのだった。
「さて、シンドーも反省したみたいだし食べよ。」
「いやいや、マシロさん。味噌汁しかないんだけど
オレの気のせいかな?」
目の前の簡易テーブルに二つのお椀に入った味噌汁しかない寂しい食卓を見て言う。
「ごめん、お味噌汁しか作ってないんだ。」
そう、申し訳なさそうに言う。
そんなマシロに、オレはすかさず、仕事帰りに買ってきたコンビニ袋を
ドスンと食卓に上げる。
「大丈夫。コンビニ弁当を買っておいたから。」
買ってきた唐揚げ弁当とハンバーグ弁当を食卓に出して言う。
「なんだか、失礼。どうせ、わたしがご飯を作れないと思ってるんでしょ!」
「そんなこと言うとオレが先に選ぶぞ。」
そう言い弁当に手を伸ばす。
「あっ、ズルい!」
慌ててマシロも弁当に手を伸ばす。
「わたし、こねられた肉が焼かれてソースがかかってるのっ!」
「ハンバーグ弁当な。はい。」
「じゃあ、オレは唐揚げ弁当をと。」
マシロは興味津々にハンバーグ弁当を開けようとする。
「おい、食べる前にさっと温めてくるから貸してくれ。」そう言い、マシロから、ハンバーグ弁当を受け取るとキッチンへ移動する。
600Wで40秒、レンチンして、リビングの簡易テーブルまで戻る。
「ほら、熱々のうちに食べな。」
電子レンジから取り出してきばかりの熱々のハンバーグ弁当をマシロの前に出す。
ハンバーグの上のチーズがトロトロに溶けてハンバーグと一体化したのを割り箸で1口大に割き口へと頬張る。はふはふ言いながら口中の熱を出しよく噛み締めて飲み込む。
「んん~!美味しい。こんなの食べたことないよ!」そう感激してブンブンと手上下させて全身で美味しさを表現してパクパクとハンバーグを食べ進める。
「まったく、世話の焼ける奴だ。」
こうやって年下の女の子の世話のを焼いてやる。自然と顔が綻ぶ。
(悪くないか...)
と自分が思っている以上に今の現状に満足しているのか自分のことながら驚く。
ハンバーグ弁当の白米を、1口食べてはハンバーグを1口白米を1口という風に交互に美味しそうに食べていく。
「良かった、気に入ったみたいだな。」
「うん。この1口サイズにカットされてて少ししょっぱくて油味感あるこのお芋も美味しい!」
「はいはい、フライドポテトな。」
そう、マシロの機嫌が直って一安心したオレは、マシロが作ってくれた味噌汁を1口飲む。
「おぉ、美味しい。」
つい、口に出てしまった。
「美味しいでしょ!ちゃんと出汁も、とったんだから!」
「うん、だいぶ違うな!これは美味い。」
「えらいぞ。」
そう、言いマシロの頭をぽんぽんする。
白髪のサラサラヘアーを手のひらで
堪能して撫で回す。
「ちょっと!撫ですぎ!」
まったくもー!と頬を膨らます。
「もー、変態なんだから。あと、味噌汁くらいで大袈裟!」
「いや、前回と比べたら大した進歩だ。」
オレは改めてて味噌汁をもう1口飲む。
「まあ、あとのことは、これから上達していけばばいいさ。」
(それにしても、美味いな。)
「う、うん、そうだね。」
マシロはシュンとしたした気持ちを引き締めて言う。
「おう!頑張れよ。」
「料理を頑張るのもいいけどさ、今度、社交の場に行かないか?」
オレは、兼ねてより考えていたマシロに伝えるべきことを切り出す。
「しゃこうのば?」
「えー。外に出るの嫌!アパートの中がいい!」
と断固、拒否するマシロに、これは
典型的な引きこもりだな。と頭を悩ますのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます