第8話 蝙蝠音響
俺は怜奈の戦い方や相手の戦略を学ぶ為に、観戦ルームに入る。
「始めて観戦ルームに入ったが、こうなってるのか」
そこはバーカウンターがある個室でカウンターがある上に観戦用のモニターが設置されていて、画面は右左に切られており、既に戦っている2人と名前が映し出されている。
「プレイヤーネーム…ランラン?」
この名前が奴のプレイヤーネームか。
ズガガッ
「蠍の女王!! フルボッコにするです!!」
朱莉は小型のサブマシンガンのAPC9 Pro K.とサプレッサーを装備して怜奈を探す。
「あいつ…APC9 Pro K.使いか」
APC9 Pro K.って言うのは、あの米軍も採用しているSMGで汎用性が高く、BRDで売られている銃のアクセサリーの殆どを装着出来ることもあり、プレイヤーからの人気が非常に高いSMGである。
「怜奈の奴…勝てるのか?」
***
「もう、なんで今回に限って熱帯ジャングルなのよ!!」
今回の場所が1番嫌いなフィールドとか最悪だわ…。
熱帯ジャングルはマングローブの森や沼地があり、とても動き辛く仮想世界であるのに太陽も出ており、暑さまでリアルに再現されている。
「なんなのよ!この暑さ!」
怜奈はマングローブの木に登り、狙撃銃であるSVD(ドラグノフ)を構えてテンテンこと、朱莉が来るのを待っていた。
「当時の癖がああるなら、あの子はかなりの身軽な装備で来る筈。」
あの子のプレイングの特徴は1年前のBRD地区大会の時に決勝戦で戦った事あるから戦い方は1年前の情報だけど把握はしてる。
「ただ、流石に昔に使った作戦は通じる相手じゃないわよね…」
怜奈は両眼を閉じ、溜息をしてから気持ちを落ち着かせてからSVDを肩に当て脇を閉じ、スコープを覗くと朱莉の姿を捉えたスコープ内の左下に相手との距離が表示される。
「約500m…。この距離なら普通にヘッドショットが狙えるわね」
朱莉のキャラは名前以外、外見は本人そっくりだ。
「あの子のまんまじゃないのよ」
怜奈の存在にまだ気付いていない朱莉は湿地エリアを歩いていた。
「蠍の女王…何処にいるですか。」
メニューウインドを開き、スキルコマンドを操作して行く。
「あの時は負けましたが今回は私が勝つです」
スキルコマンドから使うスキルを選ぶと、徐々に朱莉の姿が背景に溶け混んで姿が完全に見えなくなった。
「ちょっ!! 何よ! あれは!!」
スコープから覗いていた怜奈は驚き、眼が点になり、観戦ルームで観ていた和樹もまた、口を開いたまま驚いていた。
「嘘だろ……。 そんなのアリかよ。」
マングローブの森で1人隠れて待ち伏せしていた怜奈だったが、すぐさまマングローブから降りて他のエリアへと走って移動して行く。
「相変わらずこのエリアは移動し難いわね!」
この熱帯エリアは隠れるのには絶好の場所ではあるがその分、他のプレイヤーも同じ作戦をする者が多かったり、マングローブの森は地面が沼の様になっており、移動し難い為、最近は負けポイントとも言われている。
「あの子が使ったスキル…… 恐らくは光学迷彩だわ」
(あんなチートスキル得るのにどんだけスキルポイントを
ガン積みしたのよ!!)
怜奈はドラグノフをしまい、Vz 61を取り出すも、ドラグノフが重量な為に思い通りに走る事が出来ない怜奈は左手で画面をタップし、メニューコマンドを呼び出してそこからスキルコマンドを選ぶ。
「あんたがスキルを使うなら私も使わせてもらうわよ!!」
Vz 61を握り締め、急いでスキル欄をフリックして行き、高速移動のスキルを選択をする。
高速移動スキルは重い装備をしている時に使うと何も装備していない感覚で身軽に走る事ができるようになるスキルで、軽装備時に使うと更にスピーディーに移動が出来る様になる。
「ここから出るのが最優先ね」
スキルを使ったお陰で移動がスムーズになり、怜奈はなんとかマングローブの森を抜け出し、沼地のエリアにたどり着いた。
「ここ、凄い蒸し蒸ししてるわね。早く決着をつけないと仮想世界なのに熱中症になりそうね」
「見つけたです。蠍の女王」
少女の声が聞こえたと同時に自分の正面からマズルフラッシュが光り、怜奈のHPがガクッと減った。
「移動がバレた?!!」
光学迷彩を使っていた朱莉がフルオートのショットガンAA12を持って姿を見せた。
「私からは逃げられないですよ。女王」
「まさか…蝙蝠音波?」
「その通りなんです」
「蝙蝠音波のスキルは使うと動いてる相手が大体何処にいるかが分かるレアスキルです」
AA12の銃口を怜奈に向ける。
「この近距離なら半分以上は体力を削れるです」
「私は蠍でアンタはそれを捕食する蝙蝠ね」
「貴方はもう、ただの蝙蝠の餌です」
バァァンッ
大きな音が辺りに響き渡る。
To be continued……。
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