第5話負けから学ぶ

耳に鈍い銃声が聞こえ、自分の体力ゲージを確認するとゲージがかなり減っている。


 「まさか…」


 梨花はSVLK-14Sを構えて和樹を狙い、

引き金を握り、敵側から無線が入る。


 「次は当てますから」


 低く落ち着いた声でそう呟いた。


 「和樹!!」


 怜奈が慌てて俺に無線で繋いで来た。


 「俺は大丈夫だ!」


 ガチャッ


 「何言ってんだ? 大丈夫じゃないぜ」


 男は銃を俺に突き付けて笑みを浮かべ、俺の頭に銃口を向けてトリガーを引く。


 ガズンッ


 鉛弾が俺の頭を貫いてゆき、HPがみるみる減っていく。そして俺はポリゴンと化して戦場から消え、待機場に戻される。


 「負けた……圧倒的に負けた」


 俺が負けてから数分後に怜奈も待機場に戻って来た。


 「す、すまない……」


 「アンタのせいじゃないわ、私もアンタの策を受け入れたんだから」


 怜奈はメニューウインドウを出してゲームをログアウトする。


 「はい!! お疲れ様でしたー。勝ったのはチームZAP!!!」


 「勝者には100ポイントあげちゃいます!」


 ーー練習試合の授業が終わり、学校のチャイムが鳴ると同時に、先程戦った相手の二人がこちらにやって来る。


 「よぉ、弱弱くん!! また楽しい練習試合しようぜ」


 男は俺を馬鹿にしたような言い方でそのまま、教室を出て行き、スナイパーの少女は俺に頭を下げ、男の後について行った。

 

 「さっきのプレイング悪かった」


 怜奈の方に顔を向けると、俯いたまま席から立ち上がって、ヘッドギアの電源を切り、そのまま教室から出て行った。


 流石に怒ってるよな…。


 その後は怜奈も授業も何事も無かったかのように過ごし、放課後になり寮に帰る時間になったが、机に座りずっとPC画面を見つめている怜奈に声をかける。


 「なぁ……さっきの練習試合での事、怒ってるのか?」


 「怒ってないわよ。さっきも言ったけど、アンタのせいじゃないわ」


 「それに、あの大野とかいうプレイヤー自体はそこまで上手くないわ」


 「どういう事だ?」


 怜奈はPC画面で何かのファイルを開き、俺のPCに送って来た。


 「さっきの戦闘のリプレイ画面よ」


 俺は送られてきた動画を再生した。


 「あの男、無鉄砲に突っ込んできてるだけよ。普通なら、おとり作戦でもアンタのあの状況を見たとしても、もう少し警戒して行動するべきだわ」


 「そう言われたら確かに……」


 「ただ、もう1人のあのスナイパーは気をつけたのが良いわね」


 「かなりの腕よ」


 怜奈は真剣な顔で俺を見つめてきた。


 「明日の練習試合では必ず勝つわよ!!」


 「ああ。」


 明日も今日負けたチームとの練習試合がある。


 俺達は寮に戻り、日付が変わるまで明日の作戦を練る事にした。


 ***


 朝になり、鳥が鳴き始めると同時に怪獣も

暴れ始める。


 「起きなさいよ! 和樹!! 登校時間よ!!」


 聞いた事ある甲高い声が朝から頭に響く。


 「あと5分…」


 「早く起きる!!」


 「ぐおぉ!!」


 怪獣は寝ている俺の腹に思いっきり俺の腹に蹴りを入れてきた。


 しかも3回も。


 「いきなり何すんだ……よ」


 布団から起き上がり、怪獣の方を向くと仁王立ちした制服姿の怜奈さんが睨みながら立っている。


 「アンタが起きるのが遅いのが悪いんでしょ!!」


 俺は学ランの袖に腕を通しながら歯を磨き、トースターに食パンをセットする。


 「よし、今日こそは一勝するぜ!!」


 「なら、今日こそは私の足を引っ張らない様にしてよね!」


 「ああ、作戦通りに行くぜ」


 そして俺達は教室に向かう。


 勝つ為に。


 


To be continued……。

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