第3話 始まりの戦争

朝日が昇り、鳥の鳴き声が聴こえてくる。


 「ん…… 朝?」


 ベッドの隣に置いてある時計を見ると、八時〇〇分ーー。


 俺は昨日、あいつに殴られて気絶したまま

朝を迎えてしまったらしい。


 「ここは…」


 どうやら、俺が倒れてからどこかの部屋に移動させられたみたいだな。


 そこは周りが白いカーテンで覆われていて、俺は保健室に運ばれて来られたのだと直ぐに理解した。



 「和樹君、起きたの?おはよぉ〜」


 「入学早々に気の毒ねぇ〜」


 大人びたお姉さんの様な声がカーテン越しから聞こえてきたのと同時にカーテンが揺らぎ、中に介護服を着た蜂蜜の匂いがする女性が入ってきた。


 「初めまして和樹君、私は保健教師の静野 榑(しずの くれか)よ」


 「紫竹さんが保健室まで和樹君を連れて来たのよ?」


 「そうだったんですか……」


 「ほら、元気で動けるなら教室に戻るか、今日は欠席にしなさい」


 先生はぴょんぴょん跳ねながら大きな二つのプリンを揺らしながら言ってくる。


 「…… わかりました」

 

 先生……眼のやり場に困るのでやめてください。


 「あ、和樹君一つ言い忘れてたんだけどぉ〜」

 

 ぴょんぴょん跳びをやめて真面目な顔になる。


 それに気付き、俺も唾を飲み込み聞く。


 「何ですか…… ?」


 「実はね? チームを組んだ場合はどちらかが欠席するとチーム全員も同じ扱いになるの」


 それを聞いて俺は驚く。


 要するに、俺が保健室で気絶している間は怜奈も教室に行けず、寮で待機している事になる。


 「入学早々、2日目で休みはまずい!!」


 時間的には、まだ朝八時で授業も九時半からで余裕があるし、急いで寮に戻り教室に迎えば遅刻にならない。


 俺は身体を起こして立ち上がり、保健室から出る。


 「ありがとうございました」


 「気を付けて戻ってねぇ〜」


 ***


 「案外、保健室から自分達の寮まで距離あるんだな……」


 保健室から出て五分くらい歩いてるが未だに寮に辿りつかない。


 「てか、此処どこなんだよ」


 初めての道で自分が今どこに居るのかもわかってなく、ただ廊下をずっと歩いていた。


 「これはアレか!! 迷子だな……」


 まずいな、このまま迷子で時間が過ぎたら遅刻確定だぞ。


 「復活した様ね、変態」


 聞いた事ある声に俺は顔を上げた。


 「怜奈…… 迎えに来てくれたのか?? 」


 「ち、違うわよ!! たまたま保健室に用があったから、向かっていたらアンタが歩いて来てたのよ!!」


 「なんの用があるんだ??」


 怜奈は身体をくねくねさせながら恥ずかしそうに此方を見てきた。


 「そ、それは昨日、私のせいで気絶させちゃったから、様子を見に行こうと思っただけよ!!」


 「お前、案外優しい奴なんだな」


 生まれて今まで異性にこんな心配された事もなかったから凄い新鮮で嬉しいな。


 「これが…… 青春か」


 「何言ってんのよ!! ほら、元気になったなら教室に行くわよ!!」


 「あ、ああそうだな」


 ***


 「さて、今日の授業は先生がおみくじで決めましたチーム同士で、

戦ってもらおうと思います!!」


 おい、待て先生…… 俺達にくじ引きはさせないのかよ。


 「あ、安心してね?授業での対戦に関しては、負けた方はポイントは減らないからね!」


 「ただ、勝利したチームにはなんと!! 100ポイント入れちゃいます!!」


 おお。なんて事だ…… これは勝ちたい。


 そんな事を思いながら、回って来たくじに書かれている対戦チームの名前を怜奈と確認する。


 「チーム名…… ZAP…?」


 首を傾げるながら俺はふと、対面側の怜奈を見ると何か気になるのか、眉を細めて何か考えている。


 「どうした?? 何か気になるのか??」


 「違うわ。ネーミングが可愛くないって思っただけよ」


 そこかよ。


 「別に名前はいいだろ。俺達なんてチーム名すら決めてねぇんだから」


 「そんなの後からいつでも付けれるでしょ!!」

 

 俺と頑固お嬢さんと揉めているとーー。


 「おい、お前らが俺達の対戦相手か??」


 ドス低い声が聞こえる方に身体を向けると、めちゃくちゃ筋肉付いててマッチョの男と小柄なピンク色で短髪の丸メガネを付けた少女が立っていて男はくじ引きの紙を俺達に突きつけて来た。


 そこには近藤 和樹、紫竹 怜奈と名前が書かれている。


 「すみません!! すみません!! 大野君が失礼ですみません!!」


 なんかめちゃくちゃ謝って来てるぞこいつ。


 「梨花(りか)!! いちいち謝るんじゃねぇ」


 「ダメだよ?? 大野君!! 練習相手してくれる相手なんだから!!」


 「はっ!!」


 ドデカマッチョは鼻で笑いながら自分の席に戻って行った。


 「ごめんなさい!! 大野君ちょっと不器用なんです!!」


 いや、かなり不器用だぞ。大野って奴。


 「ああ、大丈夫だ。こちらこそ練習宜しく頼む」


 「はい!!」


 お互いに握手し自分達の席に着き、モニターの電源を付けてヘッドギアを被り仮想世界へログインし、チームの待機場に行くと

怜奈は凄い速さで、装備を固めて行く。


 「あんたさっき、鼻の下伸びてたわよ。 変態」


 「うるせぇ、さっさと始めるぞ…」


 「あんた、簡単にダウンするんじゃないわよ??」


 「お前こそ、ダウンすんなよ」


 「当たり前でしょ」


 お互いに準備が終わり、メニューアイコンを呼び出し、対戦待機項目を選択する。遂に初めての授業で初めてのチーム戦が始まる。


 「燃えて来たぜ……」


 視界の中央に60分の制限時間が表示され、カウントダウンが始まる。


 「3…2…1」


 カウントダウン終了と共に転送が始まり、俺達の最初の戦争が始まった。


 


 To be continued……。

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