5話_願望を君へ①
「じゃあもうめんどいし帰りの挨拶なしなー。勝手に帰れー」
先生がめんどくさそうにみんなにいう。
ガタン。と勢いよく椅子を下げ、カバンを持って即走る。
「すまん須藤!俺用事できた!先帰るわ!」
「お、おう」
驚いた顔の須藤にそう捨て台詞を置き、扉を開き教室を出る。
「あいつの家に...!!!」
この際、あいつが学校からいなくなるなんてことはどうでもいい。それに俺があいつを助ける理由なんてない。だが、命を自分から捨てるような行動をしてるやつに勝手に死なれては困る。
そんなことを思いつつ、心配になる。
「俺にも同じ能力があれば...!!!」
階段を下り靴入れで上履きを持ち、靴を履き外に出る。二階なのですぐに門まで出れて便利だ。
こんな場面で能力を使う。それはつばきがそうしたのと同じなのかもしれない。少しつばきの行動理念が分かった気がした。
「ど、どっちだ...」
思い出した。と言っても確実じゃない。一度来た道を全て覚えられるだけの頭脳はあいにく持ち合わせてはいない。こんな時にあいつがまた現れてくれればいいのだが。
「流石にそこまでじゃないよな...」
流石にそこまでお人好しではないらしい。というかそもそも俺が思い出してつばきの家に行っていること自体気づかれていない可能性の方が大きい。
「ここ、だ」
道に迷いながら、半ば直感が多かったがなんとかつばきの家までたどり着けた。
少し大きな一軒家でドアの前に門がある豪華な家だ。ピンポーンとインターホンを鳴らす。少し前のインターホンの音が家に響くのが聞こえる。
ガチャリと鍵が空き、顔を見せる。
「はーい」
「よう」
「.....?!」
予想もしてなかったのだろう。心底驚いたようにこちらを見つめる。
「来てやったぜ」
「なんで...記憶は消したはず...」
「能力に勝ったんだよ。お前、心のどこかで人と関わりたいとか思ってただろ」
「そ、そんなこと」
「あるんだ。じゃあなんで死んだ顔のフリなんてしていたんだ」
「.....」
「誰かに話しかけてもらう前提でクラスの人たちを試すな」
「.....」
いろいろ状況を飲み込めないせいか戸惑っている。
「この際お前が学校に来ようがこまいが関係ない。だが俺との関わりは絶やすな」
「それが出来てれば...」
「は?」
ここで否定されれば少し格好つけて言ったセリフが大なしになる。それだけはやめていただきたい。
「それが出来てればこんなことしてない!貴方の記憶消したり死んだ目したりしてない!!無理なの!!人と関わっちゃいけない!!死んだ様にしてたのは実は実験じゃないの!!」
「は?どいういうことだ...??」
死んだ目をしていたのがフリではない。その理由を知った時、俺はこいつの正体がますます分からなくなった。
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