3話_あいつは言う

あいつの家自体どこなのかも知らない。

だが、俺はあいつの秘密を確かめたいのだ。


「じゃあな。須藤」

「おう。頑張れよ」

つばきを見逃さないように目で追いながら須藤と別れる。普段俺と須藤は同じ方向なのだが、つばきは逆方向へ向かうのでそちらへついていく。



つばきから数メートル距離を取りながら後をつける。



「あいつ...どこに住んでるんだ...」

同じ道に下校していた同じ学校の人たちがだんだん減っていく。

歩き出来ているのでそこそこ近いと思っていたのだが、気づけばかなり歩いている。





完全に同じ道を歩いている人が俺とつばきだけになった。

正直もう家に帰りたいが帰り道は覚えていない。

家を突き止めたらあいつにみんなとつるまない理由を聞いて道を教えてもらって帰るつもりだ。

「我ながらバカなことしてるな...」

もう感想はそれしか出てこない。

こんなのを須藤はしているのか。あまりにも退屈すぎる。もう直ぐに帰ってゲームでもしたい。







「あ...」

気づけばつばきの家についたらしい。普通の一軒家だ。ドアを開けて中に入っていく。

「どうやって帰り道と理由聞こうかな...」

「ここにいる私に聞けば?」

急に後ろから聞いたことのない声がした。


思わず振り向くと、

「は、はぁ?!つばき?!」

「こんにちは。こんなところで何してたのかな?」

「え、え?学校と全然ちげーじゃん」

「まぁあれは演技だしね」

「そ、それにさっき家に入ったはずじゃ...?!」

ここは異次元なのかとツッコミたくなるほどおかしな現象が目の前で起こっている。

「ストーカーでもしてたのかな?」

「いいから答えろよ?!」

今はストーカーなんてどうでも良い。疑問を解消したい。

「んー...じゃあ今から言うことを疑わずに聞いてね」

「あ、あぁ」

「私には過去の記憶がないの」

「そうなのか?」

「うん。あと気づけば能力が使えていたの」

この言い方から察するにいつ生まれたかもいつから能力があるかも知らないらしい。

「能力...??」

良く漫画で見る火を出したりするのだろうか。すこし憧れてしまう。

「誰からか知らないけど、私の能力に関する知識を聞いたことがあるの。私が持ってる能力は(願望)って能力。まぁ簡単に言えばなんでも願いを叶えられる能力だよ」

「.....」

もう正直ついていけない気がしてきた。無言しか返せない。ただでさえ死んだ目をしていたのは嘘で、能力を持っていてしかもなんでも願いを叶えられる。信じるつもりだが、まだ半信半疑だ。

「さっきお前が家に入ったのに俺の後ろに現れたのはその能力なのか?」

「そう」

「そりゃすげぇな...」

「でも、この能力にはリターン。つまり副作用があるの。それは自分が叶えた物事にそれ相応の寿命が削れるの」

「は、はぁ?!」

だとすればこいつはさっきので自分の寿命を削っていたと言うことか。危なすぎる能力だ。

「大体さっきの瞬間移動で削れる命は数分程度かな」

「そ、そうなのか...」

いまいちピンとこないが多用するとヤバそうだ。

「だからあんまり多用は出来ないね」

「だな。じゃあなんで学校であんなに死んだ目してるんだ?特にする理由なんてないだろ」

「あー、あれは実験」

「実験?」

「死んだ目をしてる人に話しかけてくる人がいるのかって」

「なんだその意味不明な実験」

馬鹿馬鹿しすぎる。

「よかったよ。君みたいな関わってくれる人がいて」

「そりゃどうも」

これから仲良くなれると言うなら大歓迎だ。

「でもね...」

「ん?」









「なんで、ついてきちゃったの?記憶消さなきゃいけないじゃん」

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