2話_謎が謎を呼ぶ

転校生が来て、1ヶ月ほどがたった。

1ヶ月経ったというのにあいつはというと未だに死んだ顔をして

一番左端の席でちょこんと座ってるだけだ。



初めはみんなおかしいと感じたのだろうが話しかけても「うん」や「いいえ」しか返ってこないのでみんな話しかけるのをやめた。



「まだあいつ馴染めてないよな」

須藤が話しかけてくる。

「もしかして元からそういう奴なんじゃないのか?」

「そりゃないだろ」

それもそうだ。誰しも生まれた時から死んだ顔をしているわけじゃない。

「まぁたしかに」

「んにしても、変わった奴だよなぁ」

「1ヶ月経って馴染めてないなんてありえないよな」

「ほんとにな」


キーンコーンカーンコーン、と


そこに授業のチャイムが鳴った。




退屈な授業を右から左に聞き流しながら

俺は転入生、つばきについて考えていた。


授業はノートを写すだけ、休み時間は窓を見つめるだけ。

部活には入らず、学校が終わるとすぐに帰る。そして誰も家を知らないときた。

不思議すぎる。さすがにおかしい。




ーー後を、つけるか...??



その結論に行き着いた。

あいつが何をしていてどこに住んでいるのかが全て分かるのがこれしかない。



つばきが帰る前に帰る用意を終わらせて後をつけて家までついていく。

別に今日に全ての答えが見つかるわけじゃないだろうが、少なくともどこに住んでいるくらいはわかるはずだ。




そんなこんな考え事をしているうちに4時間目の授業が終わった。

俺と須藤は購買のパンを買い

机で食べる。


「なぁ須藤」

「なんだ?」

「俺今日あの愛葉椿のあとをつけてみようと思う」

「良かったら警察まで送っていくぞ」

「余計なお世話だ。おまえこそこの前好きな子のことストーカーしてたろ」

「は?!なんでそれを?!」

不意を突かれ驚いたのか、須藤は大声をあげ席を立った。さすがに声が多すぎたのか、みんなの目線が集まる。

「あ、みんなごめん」

須藤が誤って席に座ると、一気に雰囲気は元に戻る。

「で、なんでそれ知ってんの?」

「この前たまたま見かけただけだ。警察に送ってやろうか?」

「い、いや俺は大丈夫だ」

「なら俺がストーカーしても問題ないな」

「ま、まぁ大丈夫なんじゃないのか?」

真面目という須藤のイメージは完全に消え去った。こいつもそこそこの不良なのかもしれない。

「見つからないように頑張れよ」

須藤が真剣な顔で忠告してくる。

「ありがとうよ。常習犯」

「だから!違うって!」

また須藤は叫びみんなからの視線を浴びる。

「あ、マジごめん」

「須藤うっせーぞー」

「ごめーん!」



そんな会話をしている間に狩野(ハゲ)先生がクラスに入ってきて授業の準備が始まった。



そしてそれと同時に俺のストーカー計画の準備も始まろうとしていた。

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