第15、16話 これは小銭か?
僕らはダンジョンを進んでいった。
その後もスライムとの戦闘を順調に重ね、レベルも3になった。
いいなぁ。回復役がいてくれるから、MPの心配なく、楽にレベル上げできる。
たぶん、蘭さんは今のところイベント要員っていうか、仲間になるタイプのNPCだ。今のうちにガッツリレベルをあげさせてもらおう。
じゃないと、そのうち一人で荒野に放置されてしまう。
そもそも、ゲームって最初は一人で街の外をウロついて、ちょっとずつ強くなっていくものなのに、なんか妙にハイペースで難なく進む。
夢だからかなぁ?
ゲームバランス、大丈夫なんだろうか?
心配になってくる。
なるべく同じ場所を行ったり来たりしながら、くまなくダンジョンを歩きまわっていたときだ。
僕は吸いよせられるように足元を見た。
これは……この感覚は現実でも覚えがあるぞ。僕こそは小銭の声が聞こえる男。一円や五円や十円たちが、「かーくん。ここにいるよ。ひろってよぉ」と声をかけてくるのだ。
いや、ほんと。たぶん、シックスセンスっぽい何かなのだと思う。
決して妄想症のヤバイやつではない。
誘われるままに視線を流すと、やっぱり! お金だぁ〜
この小銭を拾うときの快感が、はたして万人に理解してもらえるだろうか?
小銭が嬉しいんじゃない。
小銭を拾うという、ちょっとラッキーなハプニングじたいが嬉しいのだ。
小さな幸運を集めてるような感じ。
さて、今日の小銭ちゃんは十円かなぁ? それとも五円? 黄色っぽいから一円、五十円、百円、五百円ではない。穴もあいてないし、十円か。
なにげなく拾いあげた僕は、一瞬、目の前がグラグラするような感覚を味わった。
*
小銭を拾った瞬間、僕の意識は遠くなった。
なんだか、夢のなかで夢を見ているような。
グルグルまわる視界のなかで、これによく似たことが、つい最近あったような気がした。
このゲームのような夢の世界のことではない。現実世界でだ。
そのとき、僕はちょっと変わったコインのようなものを拾った……ような気がする。
なんか、すごくキラキラ光る、キレイな星みたいな……。
気がつくと、蘭さんが心配そうな顔で僕をのぞきこんでいた。
僕はちょっとのあいだ、気を失っていたらしい。
「大丈夫ですか?」
「う、うん。なんか、このコインを拾ったとき、急に、ふわぁっとなったんだけど」
蘭さんは僕の手のなかのコインをながめた。金色の小さなコインだ。なんか知らないけど、ものすごくキラキラ光る。まんなかに猫のマークが浮き彫りになっている。
「これは、小さなコインですね。ウワサでは、これをたくさん集めると、いいことがあるらしいですよ」
キターッ!
小さなメダルだ。いいぞ。メダル王バンザイ!
いい世界だなぁ。
忠実に僕の好きだったあのゲームをベースにしてる。
僕はホクホクしながら、小さなコインを招き猫のガマグチのなかに入れた。
チャリーンと嬉しい音がした。
これをいっぱい集めたら、何が起こるんだろう?
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