第13、14話 初めてのレベルアップ



 おめでとう感たっぷりのこの音楽。

 そして、体中から湧きあがる新たな力。

 レベルアップだ。

 初レベルアップだ〜


 さっそく、いそいそとステータスを見る。

 HPは28、MPあいかわらず0、その他はそれぞれ1ずつ増えていた。

 マジックはまだ使えないし、得意技は……ん?

 なんか文字の色が明るくなってるのがあるぞ。小銭拾いか。

 もしかして、得意技って一定レベルに達すると使えるのか。


 小銭拾い……まあ、いいだろう。

 逃げ足の速さのほうが戦闘から安全離脱できそうでよかったんだけど、小銭でもお金は大事だ。序盤には役立ちそう。


 僕は大急ぎで倒れてるスライム三匹の口のなかに手をつっこんで、三円を抜きとった。


 そして、いよいよ、お待ちかね。

 宝箱だ!

 僕のお宝ちゃ〜ん。今、あけるよ。


 僕は宝箱に張りついた。

 大きくて、真っ赤な宝箱。

 コレなんだよなぁ。

 RPGの醍醐味だいごみ

 もちろん、人によってゲームの楽しみかたは違うと思うけど、僕は宝箱が好きだ。宝箱LOVE!


 さて、何が入ってるのかなぁ?

 なにしろ初めての宝箱だ。どうせ最初は薬草とかなんだろな。まあ、皮の帽子くらいの防具が入っててくれると、すごく助かる。今の僕、たぶん、装備は武器の木刀と初期装備の布の服だけだ。早く、もっと丈夫な防具に変えないと、戦闘のたびに痛い思いしたくない。


 木箱のふたをあけると、なかに入ってたのは……。


 僕は自分の目を疑った。

 白猫が一匹、よこたわっている。



 *


 ミャーコ?

 まさか、うちの愛猫が僕のあとを追って、夢の世界までやってきたのか?


 いや、違った。

 ミャーコによく似たミックスの白猫だが、本物じゃない。

 それは、ぬいぐるみだ。

 しかも、手にとってみれば、紐がついている。


「ん? バッグ? ポシェットかな? 背中にジッパーついてるぞ」


 蘭さんがよこからのぞきこんできた。

 どうでもいいけど、距離感が近い。

 長いまつげにドキドキするじゃないか。

 男の娘なのか、そうじゃないのか。そこが問題だ。


「魔法のバッグですね。旅人は必ずみんな自分用のものを持っています」

「へえ。そうなんだ」

「最初の冒険で初めてあける宝箱に入っているんです。神様からの贈り物ですよ」

「へぇ」


 神様、いるんだな。

 まあ、そうか。

 モンスターがいるってことは、魔王とかいて、きっとどっかに勇者がいて、さらには神様もいるんだ。


 ま、まさか、僕、勇者かな?

 ふつう主役が勇者だよね?

 いや、あんまり期待しないでおこう。

 というか、勇者とか、じっさいに自分で戦うとなったら面倒だな。

 魔王と戦いたくない。

 僕はふつうに冒険満喫したら、目を覚まして現実世界に帰るからね。


「これが魔法のバッグかぁ。荷物を大量に入れられるんだよね? 薬草99個とか。装備品とかも全部」

「そうです。僕のは、これ」


 蘭さんが銀色の革のような金属のような鞄をさした。

 ゴージャス&エレガント。

 いいなぁ。

 なんで、僕のは猫なんだ?


「幼稚園児みたい……二十歳すぎた男に、このデザインはなくない?」

「似合いますよ」


 なにげにつき刺さる言葉。

 どうせ、どうせ、女顔ですよぉ。童顔だし。


 まあいい。四次元ポケットは必須だ。

 小銭だって、ポケットだけじゃ、いずれあふれる。


 僕は猫形ポシェットのジッパーをあけて、小銭を入れようとした。


「あ、財布だ」


 ありがたいことに財布もセットだった。白い招き猫のマスコットが縫いつけられたガマグチのやつ。


 これで小銭も心置きなくひろえるねぇ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る