朗らかに読む

阿部2

-ieu

太陽だっていつかは冷える。浅い傷口がゆっくり消える。その三倍の速度でめぐる季節。吸いかけのままタバコが湿気る。処方箋だけはもらいに行ける。やっとの思いで外に出る。通り雨、銀杏いちょうに弾ける。それを見た猫が首をかしげる。目があった途端走って逃げる。なにもいなくなった植え込みずっと見てる。看護師さんだれかに似てる。風呂に入れず、ベッドで気絶するように眠る。そんな日です。このままでオッケー、このまま死ねる。嘘、本当は生きていける。ただこれだけははっきり言える。


太陽だっていつかは冷える。深い傷口もゆっくり消える。病は病のままこじれる。一寸先の白紙に教える久しぶりに鉛筆で書く文字列。詩に変わるはずの芯に亀裂。夜が来る前に窓を閉める。自分の肩にジャージを着せる。僕は僕と一戦交える。でまかせの言葉で一句ひねる。書くことはたぶん自傷に似てる。もう一度ペンを握りしめる。脇の下、冷や汗で湿る。ただこれだけははっきり言える。太陽だっていつかは冷える。深い傷口もゆっくり消える。

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